愛してくれない人たちを愛するのはやめました

花々

1.愛されない少女

第1話

「ジルベルト様……! よろしければ今日神殿にいらっしゃいませんか? 神殿の中庭のラベンダーが見ごろですの。ぜひ一緒に……」


「ああ、ごめんね。エルシーリア。今日は予定があるんだ」


 私が勇気を出して誘ってみると、この国の第一王子であるジルベルト様は眉根を寄せて言った。


 私はそうでしたかと慌てて頭を下げる。


 お忙しい殿下がラベンダー鑑賞なんかにつきあってくれるはずないではないか。



「そうですよね。ジルベルト様はお忙しいですよね、ごめんなさい……」


「ごめんね、エルシー。ラベンダーはまた今度見に行かせてもらうよ」


 ジルベルト様は柔らかい笑みを浮かべて言う。落ち込んでいた私の心は途端に浮き立った。


 彼は私に微笑みかけると、くるりと背を向けて去って行く。



 柔らかそうな金の髪に神秘的な紫の目をした、とてもお美しいジルベルト様。姿を見られるだけで幸せな気持ちになる。


 ジルベルト様は今日は予定があると言っていたものの、今度は付き合ってくれると言った。


 幸せな気持ちで彼の言葉を反芻する。



 いつなら予定が合うだろうか。今週末はどうかしら。


 もしも来てくれるのなら、新しいお茶とお茶菓子を用意して、中庭の手入れもいつも以上にちゃんとして待っていないと。


 ジルベルト様と二人で中庭を歩く光景を思い浮かべたら、恍惚としてしまう。



 けれど、本当はそんな日は来ないと知っていた。


 ジルベルト様が私との約束を守ってくれたことなんて、一度もないのだから。

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