贅沢の限りを尽くす皇帝と、甘い汁を吸う宦官・役人たち。国が乱れ、民が困窮している時代の後宮が舞台です。
主人公の計都は、両親が亡くなり、親戚に家業を乗っ取られ。失望の中で、後宮で働いています。
計都は、後宮で明るく逞しく生きていく!
というタイプではありません。
自分の望む人生ではない。けれど、生きていくためには不本意な仕事でもやるしかない。
やりがいを見出せず諦めている様は、現代の私達にも共感できるところがあります。
等身大の主人公です。
そんな計都ですが、怪異をきっかけにして、武人である悧驟と宦官である英茗と出会います。
国が乱れているのを憂い、苦しんでいる民を救いたいと願う人たちがいます。
しかし皇帝は、自分さえ良ければそれで良しの人物。他人の不幸に鈍感な様は、残酷すぎるほど。
国を盛り立てて民を救いたいと高い役職に就いても、腐敗した政治の中では厄介者扱い。高潔な理想がかえって、自分の身を滅ぼしかねません。
思い通りにならない生きづらさを抱えるぐらいなら、清廉な理想を捨てた方が楽かもしれない。
けれどそれでは、国は衰退する一方。
悧驟という高潔な思想を持つ人物がいて、彼に集まる人たちがいる。
そして、計都という怪異がもたらす先にある真実を見ようとする者がいる。
真実は残酷であり、けれど、一筋の光となってこの世を照らすものであるように感じました。
腐敗が蔓延る後宮という舞台で、怪異と謎のミステリアスな物語としても楽しめますが、葛藤しながらも理想に向かって生きようとする人間ドラマとしても秀逸です。
さらにはそこに恋愛と友情といったスパイスも加わって、読み応えのある作品になっています。