第13.5話

第13.5話『【本人不在】ヨウの“更新されたチャンネル”に残された奇妙な字幕』


記録:2023年11月16日/アカウントログ、YouTube自動翻訳データより


ヨウの失踪が確認された翌日、彼のYouTubeチャンネルが“復活”した。


削除されていたはずのアカウントが、何の前触れもなく再びアクセス可能となり、しかも新しい動画が投稿されていた。


タイトルはただひとこと──『帰還』。


サムネイルは、真っ黒な背景に白い文字で「ただいま」とだけ表示されたもの。視聴者の間で急速に拡散されたが、肝心の映像内容には大きな違和感があった。


まず、動画内で喋っている声は明らかに“ヨウに似て非なるもの”だった。イントネーションが微妙に違い、言葉の選び方にも癖がなかった。AIボイスとも違う、しかし本人とは断定できない。


さらに、YouTubeの自動字幕機能が暴走。正しい音声とは異なる言葉が次々と表示された。たとえば、ヨウが「ただのドッキリだよ」と話す場面では、字幕にこう記されていた:


> 『この体は借り物だ』




また、「来週またライブ配信するから!」という一言には、


> 『開けた者は、順に視られる』




という字幕がついていた。


映像そのものは本人が自室で語っているような内容だが、よく見ると背景の部屋が微妙に違っている。ポスターの位置、カーテンの色、そして机の上に置かれたコップの形まで。


「これ、ヨウの部屋じゃない」と気づいた視聴者がスクリーンショットを比較・検証した結果、映っている部屋はまったく同じ構造の“別の空間”であることがわかった。


そして、動画はなぜか24時間で自動的に削除された。


それ以降、チャンネルは再び非公開状態に戻り、ログインもできない状態になったという。


まるで誰かが、“ヨウの顔を被って”一時的に戻ってきたような投稿だった。

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