第20話

第20話『【閲覧注意】“最終回直前”に届いた謎のUSBの中身を開けた結果』

記録:2024年1月11日/未公開映像、解析不可能な音声データ、ヨウ最終発言より



---


「届いた。差出人不明。封筒の中に、ただUSBだけが入ってた」


ヨウが最後に投稿した動画は、そんな言葉で始まる。


茶色い封筒には何も書かれていない。差出人も、住所もない。

開封すると、銀色の無地USBがひとつだけ。



---


動画内で、彼はUSBをPCに差し込む。


ファイルはひとつ。名前は「***.mp4」。


開いた瞬間──画面に映ったのは、

“寝ているヨウ”の姿を天井カメラから俯瞰した映像だった。



---


ヨウの部屋と完全に一致している。


時間は深夜2時──

ただし、その日ヨウ自身が撮影した記録は一切存在しなかったという。


映像内のヨウは、安らかに眠っている。


…ただ、布団の端に手が一本、添えられている。



---


布団の“中”からではない。

画面のフレームぎりぎり、天井から誰かが手を伸ばしているような形。


やがて、画面が一瞬だけ乱れる。



---


復元したフレームの一部に、“顔”らしきものが映っていた。

解析ツールはこう記録している。


> 『※注記:この画像は“ユーザーのカメラ”と一致。

…つまり、撮影者は視聴者側である可能性が高い』





---


ヨウは動画の最後にこう言い残した。


> 「これを観てるお前らさ、笑って見てるだろ?

…でも気をつけろよ。

この動画、“開いたやつ”の後ろにも、来るらしいから」





---


その日を境に、彼のチャンネルは更新が止まった。

Twitterも、Instagramも、まるで手を引かれたように消えていった。


そして数日後、視聴者の間にこんな報告が投稿され始めた。


> 『USBなんて受け取ってないのに、夜になるとモニターが勝手に光る』

『映像の中のヨウがこっちを見てくる』

『再生していないはずのファイルが、深夜に勝手に流れてる』





---


最後のコメント欄には、ただ一行──


> 【この記録は、あなたの端末に複製されました】





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る