【実話】#社会人14日の崩壊

@ffan

プロローグ

入社して、まだ二週間しか経っていない。

それなのに、もう随分と長い時間ここにいるような気がする。


初めて袖を通したスーツ。緊張と期待が入り混じったあの朝の空気。

「社会人になったんだ」と胸を張ったのは、ほんの少し前の話だ。


社会人生活は、もっと華やかで、前向きで、

誰かと協力して何かを成し遂げる、そんな充実したものだと思っていた。


けれど現実は違った。

笑顔の裏側で飛び交う皮肉。

沈黙が責めの言葉に変わる職場の空気。

それでも、最初のうちは「自分のせいかもしれない」と思っていた。


だけど、気づかないうちに、誰かの「当たり前」に傷つけられていて、

気づいたときには、もう心のどこかが壊れ始めていた。


「なんでそんなこともできないの?」

「社会人なんだから、言われる前にやれよ」

「はあ……ほんと、君ってさ」


声のトーンは淡々としていて、暴力的な響きはない。

でもそのぶん、じわじわと効いてくる。

無視でも怒鳴り声でもない、日常の一部みたいな“言葉の棘”。


出社するたびに、体が重たくなる。

誰かの視線が痛い。

呼吸が浅くなる。

笑おうとしても、顔の筋肉が動かない。


それでも、「まだ二週間しか経っていないから」と自分に言い聞かせた。

これが普通。これが社会。自分が未熟なだけ。

そう思わないと、立っていられなかった。


けれど、今日もまた言われた。

たぶん明日も言われる。

これが“普通”なんだと飲み込もうとすればするほど、心がすり減っていく。


この物語は、私自身の記録だ。

実際に起きていることを、リアルタイムで綴っていく。


きっといつか、「そんなの笑って流せ」と言う人が現れるだろう。

でも、私はこの気持ちを忘れたくない。


毎朝、出社前に感じるあの息苦しさ。

ふとした言葉で胸がズクンと痛む瞬間。

心の奥で、音もなく崩れていく何か。


誰かに理解されたいわけじゃない。

誰かを責めたいわけでもない。

ただ、これは――

「今ここにいる私」を、ちゃんと残しておくための記録だ。


もし、いつか自分の心さえ信じられなくなったとき、

「あのとき、確かに私は傷ついていた」と思い出すために。

私は、今日も書き続ける。


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