9章 もう一度
翌日、つまり12月6日。王国兵士が行った演説の内容が載った新聞が届いた。
国王陛下の演説
昨日、我々はカルという人物を捕らえた。この人物は壁を壊し、竜を侵入させて国民を全員殺し、りんごを独り占めにしようとした。この恐ろしい計画を実行しようとしたテロリストのカルには仲間がいるらしい。6人ほどだ。この7人はりんご自由同盟というばかげた組織を作ったらしい。まだ捕まっていない6人に告ぐ。カルの命を助けてほしければ、12月20日までにこの王城まで自首するように。1日でも遅れればカルは死刑となる。仲間が大切か、それともりんごの独り占めが大切かだな。
「えっ、なにこれ。私たちが悪者なの」
レッパが驚いて言った。国王は完全に悪者だな。僕はそう思った。
「とりあえずカルを助ける作戦を立てていこう」
「そうだね。でも、なんか決め手がないと王城には突っ込めないかな。兵士が多すぎる」
みんな考え込んだ。
「やっぱ壁を燃やすしか方法はないかな」
「いや、壁は今日見たけど兵士の守りが固くなってる。計画がバレたからかな」
「じゃあ、ほぼそれは不可能か」
どうすればいいだろうか?兵士を王城から引き離して、なおかつすぐ僕らが王城に入った事がバレないようにする方法。兵士を国の外に出す?出来るか?出来たら進展は大きいが。
ポルさんがこの部屋に入ってきた。
「昨日、たぶん国王さんが午前に王城の外に出とったけどね。それはうまく使えんかね?」
ポルさんは結構方言のなまりがつよい。
「それだ。今の時期国王はりんごを売りにたまに出かけてるから」
コープ先生が言った。どういうことだ?メラは続けて
「国王が国外に出る時は兵士の半分以上を連れて行くから」
「そこがチャンスってわけだ」
僕はやっと理解した。
「じゃあ、その時にどう動くか話そう」
「壁に火を放つ?」
レッパはその方法が好きだな。
「王城の火薬庫を爆破させて、王城をぶっ壊すのは?」
「えっ」
メラが衝撃的な案を出した。
「火薬庫には鍵が掛かってるんじゃ?」
「いや、かかってるんじゃがドアが木でできておってドアを燃やせば火薬庫、王城もろとも吹っ飛ぶぞ」
メラは淡々と語っていたので本気だろう。
「じゃあ整理しよう。まず国王が国外に出たら、僕らは壁の中に入る」
「そうだね」
「王城に忍び込んでカルを救出して、火薬庫前に火を放つ」
「急いで逃げなきゃね」
「国王が戻ってきたら捕まえる。それでいい?」
「いや、それだけだったら国王の周りに兵士はいなくならない。一手間加えよう」
レッパが言った。
「一手間って何?」
「壁に火を放つんだ」
数日経って計画はほぼ出来上がった。実行は次に、国王がりんごを売りに出かける日だ。その日の朝に国王は出かけると思う。そして、お昼過ぎに僕らは王国に忍び込む。同時にレッパとコープ先生は壁の外周りに火薬をまいていく。王城に着いたらカナとミレがわざと兵士に見つかって逃げる。そうして更に兵士を引き離した王城にメラと僕は忍び込む。まずカルを助けて、火薬庫に火を放つ。急いで逃げて王城が火事になる。そうすると兵士が更にいなくなる。王城が火事になったのを合図に僕らは門の前に集まる。門とは国王とその兵士のみが通れる用水路以外の唯一の外の出口だ。国王が門をくぐったのを確認したら壁に火をかけて壁を焼く。兵士が消火にあたっていて国王の周りに兵士がいない時をついてコープ先生が国王を捕まえてコープ先生の家に連れ込む。その後、国王を人質にして、相手の兵士を降伏させる。そして、国王に本当のことを国民に話して国民に自由を与える。そういう作戦だ。
この作戦を絶対に成功させねば。絶対に、絶対に。カルを助けて国民に自由を与える。前の作戦は不発だったのでもう一度、成功させよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます