4章 りんご自由同盟

 翌日、僕らは学校に集まって

「じゃあそれぞれの友達に話しかけてみよう。ノルマは六人だ」

とカルが言った。

 僕は積極的に話しかけたのだが誰もこの話を信じてくれない。いつもバカにされて終わる。今度こそ

「ねえ、ミレ。外の世界ってどう思ってる?」

「外の世界?うーんと、あんま考えたことないな」

「じゃあさ、竜なんていない平和な世界って僕が言ったら信じてくれる?」

「うん。リベラが言うんだったら信じるよ」

「じゃあさ、今から言う事をよく聞いてね。僕、昨日外の世界に行ったの。そこで国王がりんごを竜に渡さずに、自分のためのぶつぶつ交換券に変えてたんだ。つまり国王は国民が頑張って作ったりんごを自分の物にしていたんだ」

「えっ、国王めっちゃ悪いやん」

「そうなんだ。だからミレには協力してほしいんだ」

「なんの?」

「国王を倒すための」

「えーっ、どうしよう」

「お願い」

ミレは少し考えて

「まあ、リベラのためなら」

「いや、全国民のためね」

 ミレも僕も少し笑っていた。


 結局ミレ以外集まらなかった。自分の説明が悪いのか、そもそも誰も信じないよな。まあ地動説を信じるようなもんだから誰も来ないよな。

 放課後に集まると、レッパ、トラン、カナ、コープ先生がいた。先生?

「コープ先生はどうしたの?」

「俺が仲間に入れた」

「まあ、僕も外に出たことあるからね」

 コープ先生が外に出ていたのは意外だ。

「レッパは私が入れたの」

「親友のためならって信じちゃった。ついでにカナも入れたよ」

 レッパは学級委員長をしているしっかり者だ。カナはレッパといつもいるが前の時メラと口げんかしてたけど大丈夫かな。

「トランは俺が入れたぞ」

「興味深いと思ってね」

「ミレは僕が入れたよ」

「リベラのためなら何でもするよ」

 8人も集まったのは意外だ。

「じゃあ今日はリベラの家に集まって会議をしよう」

「えっ、なんで僕の家?」

「そりゃあ王城とか兵舎から遠いだろ」

「今日は親もいないから別に良いけど」

 うちの親はりんごの検品の人だから家に帰るのが遅い。

 自分の家に友達を呼ぶのは少し心配だ。まあみんな優しいから良いか。


 家に着くとカルが

「組織を作ろう」

と言い出した。組織か。

「名前とか決めようよ」

 ミレが言った。

「りんご自由同盟とかどう?」

「いいじゃん。自由のために戦うりんご自由同盟」

 確かにかっこいい。

「じゃあ決まりだな。リーダーどうする?」

「もうカルでいいじゃん」

「いやいやいや、そこはリーダーシップのあるレッパで」

「そんな事言わずに、いつも前でてるからこういうときは大人のコープ先生で」

「えっ、いやーリーダーなったことないからな」

とコープ先生は言って周りを見渡していると僕と目が合った。

「あっ、リベラはリーダーとかどうだ?」

「絶対いやです」

「リベラの名前は反乱って意味のリッべニョーネに似てるしな」

「えっ」

いや、ともう一度言おうとしたがみんな僕を見つめてる。こういう圧力は苦手だ。

「じゃあやります」

 とても弱々しい声が出てしまった。言い出しっぺのカルがやれよ。

「じゃあリーダー、俺らが何を目指すか再確認しましょう。今日はそれで解散で」

 カルが敬語を使うのは少し慣れない。

「うん、そうしよう。じゃあ思ったこと口々に言っていこう」

「国王を殺す」

 カナは見た目と違ってたまにさらっと恐ろしいことを言うな。

「殺したらだめだよ」

 メラが言った。

「そうだよ。今回の戦いは国王を殺す事が目標じゃない。国民に自由を与えることが目標だよ」

 コープ先生が言った。やっぱりコープ先生がリーダーのほうがいいな。

「じゃあ、国民に自由を与える事を自由同盟の最終目標でいい?」

「いいよ」

「じゃあ、明日ここに集まるまでに計画の概要を考えてきてね。じゃあ解散で」

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