3章 外の国

 カルの話を聞いてもあまりぱっと来ない。

「絶対ウソだよ」

 メラが言った。

「メウソじゃねえ。メラは外に行ったことあるだろ?王家で贅沢してるくせに」

「だから私は外に行ったことないって。贅沢もしてないし」

 2人はほっといたらケンカになりそうだ。

「じゃあ今日の午後行こうよ。外に」

「ああ、良いぜ。ゲンさんの家に泊まってベネチアにも行こう」

「ちょっと待って。外に出たら捕まるんじゃ」

「そこは何とかなるだろ」


 お母さんにはカルの家に泊まると言った。用水路前に集合した。カルも来ている。

 メラは少し遅れて馬に乗ってやってきた。

「馬は用水路を通れないぞ」

「分かってるって」

「国王に俺たちが外に出ようとしてるって伝えたのか?」

「そんな事するわけないのじゃ」

 カルは少し不機嫌そうにしながら

「行こうか」

と言った。

 カルは注意深く壁、というか近くで見ると建物のような壁の上にいる兵士に見つからないように用水路に入ると僕らに合図したので、用水路に僕らも入った。

「足濡れちゃった」

 メラが言った。

「そんなんどうでもいいだろ。馬に乗って気取ったり水に濡れるだけで驚く贅沢王家が」

 カルは言い捨てるように言った。またケンカになりそうだ。


 外は景色が広がっていた。手前は緑、奥は白い。とにかく広い。広すぎる。

「広いだろ。俺も見た時は見入ったぜ。まあそれくらいにしてゲンさんの家に行こう」

 ゲンさんの家は形が不思議だ。今までは僕ら庶民用の家の形と国王のお城の形しか見たことがない。

 カルが家のドアをノックするとゲンさんが出てきた。普通の大人だ。外の世界も人は同じらしい。

「やあ、よく来たね。お友達も一緒かな?」

「はい。あの人たちもベネチアに連れて行ってあげてください」

「そうか、ベネチアか〜、じゃあ明日だな」


 その日の夜はカルから事前に聞いていたパスタと言う食べ物を食べた。美味しい。ふと疑問になったことがあった。

「この国は家で食事を摂るんですか?」

「それは、どういう意味だい?」

「えーっと」

 僕は少し考え込んで

「僕の国では国民が一つの場所に集まって食事が配られるんですけど?」

と言った。

「なるほど。うちの国、まあベネチア共和国はドゥカートと言うお金、ああお金ってわかる?」

「カルから事前に聞いているので」

「それを使えば自由に食べ物を食べれるんだ。だから国民は各々家で自由に食事してるんだ」

「へえー」

 メラとハモってしまった。外はそんな感じだったのか。


 翌日、朝早くにベネチアに出発した。道沿いに緑が広がっていた。

「これ、何ですか?」

「ああ、小麦だよ。昨日食べたパスタやパンに使われてるよ」

「へえー、同じ物から作られてるんだ」

 メラも驚いていた。


 ベネチアには、昼前に着いた。家がいろんな形をしてる。カルが言っていた海も見える。とにかく人が多い。

「人が多いのじゃな」

「ああ、ここはベネチア共和国の首都だからな。国全体で人口は200万人くらいだぞ」

「えー!」

 今度は3人でハモった。

「うちの国は1500人くらいなのに」

 カルが尊敬の声で言った。

「この国は今、最盛期だからな」


 ゲンさんは仕事があると言って昼過ぎにここに来るよう言った。

 僕らは街を見学した。船や海を見たり食べ物を食べたりと。市にいるとメラが驚きの声をあげた。

「父上!?」

「しー、バレるだろ」

 カルが言った。そっちを見ると確かに国王インベルがいた。荷車を引いていて後ろには大量のりんごがあった。

「あれどうするのかな?」

「そんなの売るに決まってる」

「父上がそんな事するわけないじゃない」

 しかしインベルはりんご商と思われる人物にりんごを渡してお金と思われる物を受け取っていた。

「ウソでしょ」

「だから言っただろ。お前の父親最低だって」

 メラはかなりショックを受けていた。


 お昼はピザと言うパンを食べた。めちゃめちゃうまい。外の食べ物は大抵うまいんだな。メラはまだうつむいていた。やっぱりショックだよな。

 ゲンさんがやってきた。

「じゃあそろそろ帰ろうか」

 この2日間で自分の世界は大きく広がった気がする。たった直径2kmしか知らなかった僕はなんて小さいのだろうと思った。

 ゲンさんは別れ際に

「またいつでもおいで」

と言った。

 帰り道でお土産代わりに砂とやらものをひろった。ちょっとくらい外に行った印として。

 帰り道にカルが

「俺が言ったこと本当だっただろ」

と言った。

「うん」

「じゃあ明日からは国王を倒す計画を練ろうか」

「どうすればいいかな?メラは参加するの?」

「うーんと、する」

 メラは暗い声で言った。

「じゃあとりあえず3人じゃ倒せないから明日学校でこの話をして信じる純粋なやつを8人くらい集めよう」

「オッケー」

 そういう感じで2人と別れた。

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