第四話 初めての焼肉
ついに私はやってしまった。家庭ではあまり使われないけど、あると便利なもの。そう……、焼肉プレートを作ってしまったのだ。これさえあれば、美味しいお肉をたくさん食べられる。よし、今日は焼肉パーティーをしよう。そうと決まれば、早速準備だ。
「サラ、お願いがあるの」
「何ですか? シルヴィア様」
ここに来るとき、貯めていたお金も一緒に持ってきた。そのお金を使ってお肉を買えば、皆たらふく食べられるはず。
「この金貨でお肉を買ってきてほしいの。もちろん、新鮮なものよ」
「お肉ですか? 牛肉と豚肉でいいですか?」
「鶏肉もお願い。四人分だから少し多めに用意して」
「分かりました。では、スレナさんと買い物に行ってきます」
スレナがダイニングテーブルに目を向けた。そこには、私が頑張って作った焼肉プレートが置かれている。
「分かりました。サラさんと買い物に行ってきます」
「いってらっしゃい」
ふたりが買い物に出かけている間に野菜の準備をしておこう。
「マリア、野菜を少しもらうわね」
「シルヴィア様、ご機嫌ですね。何か良いことがありました?」
「実はね。待望の焼肉プレートを作ったの」
「焼肉プレートとはどんなものですか?」
「お肉を美味しく焼くものよ。今、サラとスレナが買い物に出かけているから待っていて」
マリアは相変わらず、農作業を頑張ってしている。そんな彼女にたらふくお肉を食べてもらいたい。
日々の疲れを焼肉で癒してくれると嬉しいな。
「さて、玉ねぎとキャベツを切ろう」
実はこの世界にはピーマンも存在している。今は収穫時期じゃないので用意できないけど、収穫できたら色んな料理に使いたい。
「マリア、今日のお仕事は終わり?」
「はい、終わりました。シャワーを浴びてもいいですか?」
「もちろん良いわよ」
因みに焼肉プレートは煙が出ないようになっている。それ即ち、匂いがあまり服に付かない。なんて凄いものを作ったんだろう。あ~、楽しみだ。
「野菜はこれくらいでいいか。あとはふたりが帰ってくるのを待つだけね」
さて、ふたりが帰ってくるまで何をしよう。マリアと何かお喋りでもしようかな。
「マリアは……、お風呂場か。お茶でも飲みながら寛いでおこう」
私はアイスティーを飲みながら、ふたりが戻ってくるのを静かに待った。
*
――二時間後。
お肉を買いに出かけたふたりが戻ってきた。
「シルヴィア様、お待たせ致しました」
「おかえりなさい。新鮮なお肉は手に入った?」
「手に入れましたよ。これです」
サラがお肉を見せてくれた。
ざっと見で二キログラムはある。牛肉多めで、豚肉と鶏肉は普通。四人で二キログラムは足りるかな?
「シルヴィア様、何をなさるおつもりですか?」
「何って焼肉よ。これで焼くの」
スレナが焼肉プレートの鉄板部分を軽く触った。今は電源を入れていない為、熱くない。
「これで焼くのですか? どうやって?」
「電源プラグをコンセントに差して、温度調節つまみを回すと鉄板が熱くなるの」
「凄いですね。早速、焼肉を始めましょう」
三人がダイニングチェアに腰掛けた。私は焼肉のお供のご飯を用意するために台所に入った。
「皆、ご飯はどれくらい食べる?」
「私は多めでお願いします」
マリアは多めか。農作業をしたあとだからお腹が空いているのかな?
「皆、お肉を鉄板にのせて」
トングを使ってお肉を鉄板にのせている。そのとき、お肉からジュージューと音が鳴った。
「この肉が焼ける音、食欲がそそりますね」
「そうでしょう。どんどん焼いて食べて」
ご飯と一緒に調味料を置いた。わさびと焼肉のたれとポン酢。これらも私が作ったものだ。
「シルヴィア様、これは?」
「お肉に付ける調味料よ。お好みで好きなものを使って」
「分かりました。では、この緑色の調味料を」
マリアがわざびを肉にのせて口に運んだ。どうだろう。
「このツーンとくる感覚……、美味しい!」
「美味しい? 次はこれで食べてみて」
お次はポン酢。これはさっぱりする。
「うん、さっぱりして美味しい!」
「良かった。さあ、どんどん焼いて」
皆、初めての焼肉を堪能している。私も食べなきゃ。
「うん、美味しいわ」
「シルヴィア様、ご飯のおかわりをお願いします」
「いいわよ。待っていて」
マリアの食欲が凄いことになっている。牛肉三枚でご飯一杯って凄いな。この調子でいけば、ご飯がすぐになくなる。大丈夫かな?
「マリア、多めで?」
「はい!」
スレナがマリアの食欲に驚いている。
「マリア、あまり食べると太りますよ」
「大丈夫だ。毎日、農作業をしているからな。それより、このポン酢というもの凄く美味しいぞ」
マリアはポン酢推しで、サラとスレナは焼肉のたれを推している。それより、お肉の消費量が半端ない。私の分は残っているかな?
「マリア。はい、ご飯」
「ありがとう御座います!」
サラが気を利かせて取り皿に焼けたお肉を置いてくれていた。私はそれを箸で掴み、ポン酢に付けて食す。
「ん~、美味しい!」
「シルヴィア様もどんどん食べてください」
「うん、頂くわ」
柄にもなくたくさん食べている。でも、途中でお腹いっぱいになってしまった。
「シルヴィア様、もう食べられません」
「私も」
サラとスレナが食べるのをやめてしまった。マリアは休憩している。
私も、もうすぐギブアップだ。
「私もお腹いっぱいだわ」
「余ったお肉は明日使いましょう」
マリアが焼いた分を全て平らげた。これは助かる。
「さて、お片付けでもしましょうか」
「そうですね」
後片付けを始めた。お皿や器はサラが洗い、焼肉プレートの鉄板はスレナが洗っている。マリアはダイニングテーブルの拭き上げか。私だけ何もしていない。
「シルヴィア様、お暇ですか?」
「うん」
「では、アイスティーをグラスに入れてください」
「分かったわ」
冷蔵庫からアイスティーが入っている冷水筒を取り出し、グラスに注いだ。
食後のティータイムか。サラは本当に気が利く。
「後片付け終わりました。さて、休憩でもしましょうか」
「皆、アイスティーをどうぞ」
食後の後片付けを済ませた三人がアイスティーを飲んでいる。
私としては、焼肉プレートだけでなく、ホットプレートやたこ焼き器も作っていいと思っている。サラやスレナ、マリアにそれらを使った料理を食べたいか聞いてみるのも悪くない。
「シルヴィア様、今日はありがとう御座いました。また食べましょうね」
「そうね。また機会があったら食べましょう」
スレナがにっこりと微笑んだ。
私はスレナの笑顔に応え、アイスティーを飲んで喉を潤した。
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