婚約破棄ですって、嫌ですわ。

❄️冬は つとめて

第1話 婚約破棄ですって、嫌ですわ。

それは学園の昼休み、お昼を楽しむ中庭で起こった。


「オディール、お願いがあるんだ。」


中庭のベンチに座ってお弁当持参のオディール・フォン・ブラック公爵令嬢に彼は話しかけた。オディール令嬢は長い黒髪を後で一つの三編みにしぱっつん前髪の下から覗く吊り目の黒い瞳で彼を睨みつけた。否、目が悪いので細めた目が睨んでいるように怖かった。


「なんでしょうか? ジークブルク様。」

「あ、いや。その、」

彼は彼女の婚約者のジークブルク・フォン・グレート侯爵令息。茶色の髪の普メン、気の弱い男であった。オディールの睨み付ける(目が悪いだけ)の眼差しに目を逸した。


「がんばってください、ジーク様。」

隣にこれまた見た目か弱そうな令嬢が、ジークブルクを支えている。彼女の名はオデット・ホワイト男爵令嬢。ふわっふわの茶色の髪と可愛らしい顔の令嬢だ。彼女がジークブルクに頑張れと励ましている。


「オディール!! 僕と婚約を破棄してくれ!! 」

「嫌ですわ!! 」

大きな声でやっと要件を言い切ったジークブルクに、オディールは速攻で断った。


「ぼ、僕は、オデットを愛しているんだ。」

「そうですか。」

ジークブルクは、どもりながらも婚約破棄の理由を言った。


「だから、僕と婚約破棄をしてくれ。」

「嫌ですわ。」

ジークブルクは婚約破棄を求めるが、オディールは拒否をする。


「私達、愛し合ってるの。」

「そうですの。」

オデットは目に涙を溜めてオディールに懇願する。


「ですから、ジークブルク様と婚約を破棄してください。」

「嫌ですわ。」

オデットの涙の懇願にもオディールは速攻で拒絶する。


「僕とオディール君との間には愛はない。だから僕と婚約破棄をしてくれ。」

「嫌ですわ。」

オディールはオウム返しのように同じ事しか言わない。総てが、婚約破棄を拒否してくる。  


「なぜだ、なぜなんだ!! 」

ジークブルクが叫んだいると、段々周りに野次馬が集まって来た。学生達は面白いことが始まったと、ワクワクして見ていた。


「お忘れですの、ジークブルク様。これはですわ。」

「そうだ、オデットとは幼馴染なんだ。君との婚約前から愛し合っているんだ、だから婚約破棄をしてくれ!! 」

「嫌ですわ。」

けんもほろろに言い返す。


「ジークブルク様、わたくしに婚約破棄をお願いするのはお門違いですわ。」

オディールは膝の上の弁当箱をベンチに置き立ち上がった。


「そう言うことは、お父様かグレート侯爵様に言って頂かないと。わたくしにはどうすることもできませんわ。」

上から目線でジークブルクに圧力をかけ、目を細めて見る。オディールの正論とオディールの睨み付ける目(目が悪いだけ)に、ジークブルクは狼狽え目を逸らす。


「父は嬉しそうで…… これで名家の血が入ると。成金侯爵と言われなくなると…… 」

グレート侯爵は最近、伯爵から侯爵になり上がったばかりであった。ブラック公爵家は先の王の姉君が嫁いだ、由緒正しい王族の血が交じる名門であった。グレート侯爵にしては、王族の縁戚になれる絶好のチャンスでもある。


「でも…… 僕は、オデットを愛しているんだ。だから、君から父に婚約破棄を言ってくれれば。」

「嫌ですわ。」

上位のオディールから、自分の父親に婚約破棄を言ってくれとジークブルクはお願いする。が、速攻で断られた。


「オディール様。、夫となる方が他に愛する人がいるのは嫌でしょう。」

「構いませんわ。」

オデットは女性の心情にうったい掛けるが、速攻で拒絶される。


「わたくし高位貴族として『愛人ごときに、目くじらを立てるな』と、教わっておりますわ。ですから構いませんわ。」


とは言っても、オディールの両親は今だらぶらぶの夫婦である。だが一応高位貴族として、もし王族への婚姻の時の為に側妃の対処の心得は教わっていた。


「私が、構うの!! 」

オディールの言葉に、オデットは自分は愛する人に他に女がることが嫌だと声をあげた。



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