第13話 残された封筒

 皐月に、コハナちゃんがもう帰ってこないということをどう説明したらいいだろうか? 真二くんには「私に任せて」なんて言ってきたものの……。

 私は困ったけれど、大抵のことは意思疎通できる私たち親娘だ。皐月が納得するまで根気よく話をするしかない。

 帰宅して、顔を覗かせてくれたお義母さんへの挨拶もそこそこに、私はソファに腰を降ろして皐月を膝の上に乗せた。

「さっちゃん、あのね、コハナちゃんのことで大切なお話があります」

「おかあさん、なにー?」

 あどけない瞳に、これから残酷なことを言わなければならないと思うと胸が痛む。

「コハナちゃん、遠くへお引っ越ししちゃったの」

「おひっこしー?」

「うん、そう。お父さんもお仕事するために、ひとりだけ離れて暮らしてるでしょ?」

 皐月が頷くのを見届けて、言葉を続けた。

「お父さんは時々帰ってこれるけれど、コハナちゃんはもう帰ってこれないの」

 言われていることが理解できないのか、皐月は固まってしまった。

「さっちゃん……皐月、どうしたの?」

 いや、皐月は理解していた。

 小刻みに首を左右に振りながら「うそ」と呟く。

「さっちゃん、嘘じゃないの」

「おかあさん、なんで……なんで?」

 皐月が取り乱すのも仕方がない。あんなに大好きで、大好きで、コハナちゃんのこととなると少し様子がおかしくなるほど大大大好きなのに。

 その小さな身体で受け止めるにはあまりにも大きな絶望。

「おかあさんのうそつき! コハナちゃんにはまたあえるもんっ!!」

 膝の上から飛び降りた皐月は、お義母さんの部屋に駆け込んだものだと、てっきり思い込んでいた。


 夕飯の買い出し帰りで気がついた。玄関の前に、青い封筒が落ちている——誰だ、こんなところに? 誰かが投函しそこねたか、それか誤配達か。

 しかし、そのふたつのどちらでもない。


 だって、その封筒は。

「お義母さん! 皐月、居ますか!?」

 その青い封筒は。

「さっちゃん? いや、来てないよ」

 ネモフィラの丘で、皐月と一緒に選んだハンカチを包んだものだったから。

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