第5話 愛しき残念な娘たち
「あ! こら、コナツ!」
コナツはいたずらっこ。今日も今日とてお義母さんの靴下を片方だけくすねてケージに潜り込んでいった。
「……はぁ……」
お義母さんのため息、イコール、片方だけになった靴下の数。
コナツは片方の靴下だけがいいらしい。しかも、お義母さんのものだけ。こうして我が家では生き残ったもう片方の靴下がまるで、『俺、まだ靴下やれます!!』と言っているようにも思えるけれど……。
「コナツ、もうこっちはいいのね。ほんっっっとーに! いいのね?」
この問いかけに、いかにも、
『何に呆れられているのか、コナツ、ワカンナイ』
などと言っているかのごとく、キュルンとした瞳で飼い主——お義母さんを見上げた。
「もうしょうがない子ねぇ」
心底呆れたように、でも愛おしそうに、まだやれそうな靴下をお義母さんはゴミに出した。
「そういえばコハナちゃんは靴下をくすねたりしないの?」
お義母さんの疑問。
「そういえばそういう話は聞かないですね。コハナちゃんが来たら聞いてみます」
と言っても直接コハナちゃんに聞くわけにもいかないので、おさんぽサブリーダー真二くんに聞くことにした。
「コハナはそんなことしないですね」
「そうなんだ」
コハナちゃんの茶目っけエピソードを期待していた私の出鼻は挫かれた。
「多分、そんなにいたずらっ子だったら、盲導犬なんて勤まらないんじゃないかな。たしか、適性がないと訓練さえしてもらえないって聞いたことがありますよ」
へぇー。と思って浮かんできた疑問。
「それじゃあ、適性がある子をヘッドハンティングするの?」
真二くんが
「あくまでも俺が知ってる範囲の話で」
と、前置きをして口を開いた。
「パピーウォーカーといわれる育ての親の元で愛情たっぷりに育って、その中から適性のある子を選ぶんだそうですよ」
へぇーへぇー。そしてさらなる疑問。
「それじゃあ、盲導犬に選ばれなかった子は?」
「訓練されて介助犬になったり、一般家庭で愛されて飼われる子もいるって聞きます」
へぇーへぇーへぇー。
「ということは、コハナちゃんってもしかしてエリート?」
「ま、まぁ、そうっすかね?」
なんで真二くんが照れるの!?
そのコハナちゃんは我が家のいたずら娘の歩調に合わせてお散歩してくれている。時々リードを持っている私の腕を持って行こうとするけれど、その度にコハナちゃんが甘噛みでたしなめた。
その側を歩いている皐月は、早く公園で二匹と遊びたくてウズウズしているらしい。ソワソワとスキップしている。
しかし、目を離したふとした瞬間。
あっ、コケた!
「う、うぇ……」
あ、泣く? 泣いちゃう?
でもこういうときはコハナちゃんの出番。皐月の頬をペロリと舐めた。
うん。慰められてにっこり笑った我が家の長女と、無駄吠えしている次女はエリートになることはなさそうだねー。だからうちで、愛情たっぷりに育てることにしよう。
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