【第12章】全話簡易サマリー

第十二章「時間遡行編⑥」各話サマリー(簡易版)

Ep.505「女王と母、肩を並べて―共鳴する二つの声」


北方戦線は「虚無のゆりかご」による敵本陣の消失で終結し、メービスはヴォルフの腕の中で戦いの終わりを知る。ロゼリーヌ母子との再会で〈蒼星のブローチ〉を正式に返還し、リュシアンは「メービス様を守る騎士になる」と誓い、王都への帰還の旅が始まる。


Ep.506「薬香の静室、少年の誓い」


固有時制制御と過労の反動で倒れたメービスは、グラン=イストのマルソー邸でルシル軍医の治療を受け、薬香に包まれて眠り続ける。目覚めた彼女を雪割草と蜂蜜ミルクで気遣うリュシアン、庭での剣の稽古を始めるヴォルフの姿に癒やされつつ、ロゼリーヌが「過去と向き合う」と決意して沈む気配を感じ取る。


Ep.507「逢瀬の涙痕、書状に潜む灰」


ロゼリーヌはギルクとの過去を越え、リュシアンと国の未来のためにメービスと共に歩むと決意を伝え、自らの水属性魔術と研究を国に捧げると申し出る。そこへ届いたレズンブール伯爵の書状には「逃げずに罪を償う」決意とラテン語の一文が記されており、メービスは「消えぬ炎」を託された者として、王都へ向かう覚悟を固める。


Ep.508「赦しの街路、希望の雪解け」


ボコタはヴァレリウスの指揮のもと急速に立ち直り、市民はメービスを恐れることなく受け入れ始めている。復興を見届けてから自ら投獄されたレズンブール伯爵の報告、灰鴉亭でのアリアたちとの再会を経て、メービスは「赦し」と「再出発」の空気を胸に王都へ戻る。


Ep.509「華やかな欺瞞、或いは真実の帰還」


一行は夜明け前に王都へ到着するが、「女王は離宮で病に伏していた」という筋書きで離宮に入り、華やかな凱旋を演出することになる。ドレスに着替え、なお「暴虐女王」の汚名を恐れるメービスを、ヴォルフとロゼリーヌ、リュシアンがそれぞれの言葉で励まし、堂々と民の前に立つ決意を支える。


Ep.510「精霊の子らに捧ぐ凱歌~デルワーズの娘、未来を抱いて」


白亜の御料馬車による凱旋パレードは、戸惑いから始まり、メービスの健在な姿と子どもの存在に支えられて、次第に熱狂の歓声へと変わっていく。メービスはそのさなか、自らの黒髪が「呪い」ではなくデルワーズの「願い」であると直感し、悲しみの連鎖を断ち切ると心に誓う。


Ep.511「涙光の継承式〈レガリア・ルミナリエ〉」


隠棲の間でメービスは瀕死の先王と再会し、ロゼリーヌとリュシアンを引き合わせることで、失われたはずの家族の縁を一瞬取り戻す。塔への幽閉を悔いる父を、メービスは「自由を与えてくれた人」として受け止め、王権の象徴と「自分の幸福を最優先に」という遺言を受け継ぎ、その死とともに即位の宣誓式へと歩み出す。


Ep.512「白き刃の静謐 即位の日、国は動く」


即位直後の執務室で、メービスは新たな諜報機関「灰月」の創設、旧宰相派貴族の条件付き赦免、軍制改革の一任など、矢継ぎ早に新体制を布いていく。過去の罪を不問にしつつも「二度目はない」と冷ややかに告げることで、慈悲と恐怖の両方をもって王権を握り直す。


Ep.513「氷の宣告―虚無に呑まれし宰相」


メービスはクレイグが「虚無のゆりかご」に呑まれて消滅した事実と、巫女と騎士による魔族瞬殺の力を公然と示し、新王権への反逆がいかに無意味かを突きつける。レズンブール伯爵については「まだ死なれては困る」と処遇保留とし、その能力を国のために生かす方針を固める。


Ep.514「越えぬまま、寄り添う~願いは声にならずとも」


二人は伯爵の赤黒い封筒を読み解き、アルバート公国と北海三国を巻き込んだ巨大な陰謀の全貌を知る。メービスは「伯爵を絶対に死なせない」と宣言し、自らの過去の名「ミツル・グロンダイル」を封印して、この世界の女王メービスとして、ヴォルフと共に歩む覚悟を改めて示す。


Ep.515「導光の名、リュシファルド」


徹夜で緊急勅令を書き上げたメービスは、貴族院で旧宰相派への贖罪条項を提示し、徹底した管理下での再利用を図る。同時にリュシアンを養子とし、将来の王太子名「リュシファルド(光を守り導く者)」を与える構想をロゼリーヌに明かし、母子の居場所と未来を法的に保障する。


Ep.516「王都、氷解の前触れ――静けさを裂く舌先三寸」


アルバート公国への国書は、被害への哀悼と国境侵犯への非難を巧みに織り交ぜつつ、北海三国を交えた協議の場への「実質的な召喚状」となる。裏では灰月が闇ギルドや資金源を潰しており、メービスは激務のダビドを労いながら、アリアへの想いをからかう余裕も見せる。


Ep.517「闇を纏う祈り姫」


黒髪伝承を利用したアルバートの分断策を見抜いたメービスは、自ら民の前でウィッグを外し、「黒髪の巫女」の真実を語る決意を固める。ヴォルフの強い反対を押し切り、「次の世代を泣かせないために」と茨の道を選んだ彼女は、テラスで精霊魔術と始祖の物語を披露し、黒髪を晒した瞬間、民衆の恐怖と罵声に直面する。


Ep.518「呪いを祝福へと変える翼」


暴動寸前の空気を、リュシアンの必死の叫びとロゼリーヌの訴えが少しずつ溶かしていく。ヴォルフが聖剣ガイザルグレイルを抜き「異を唱えるなら俺が受ける」と宣言し、巫女と騎士がシステムを起動すると、純白の光翼ルミナ・ペンナが顕現し、黒髪は「呪い」から「祝福」へと民衆の認識ごと書き換えられる。


Ep.519「雪解けの円卓、仮面の微笑~帰れない場所、築くべき未来」


黒髪への偏見が消えたことで、「本来の未来」では黒髪の巫女が生まれない歴史に分岐したことをメービスは悟り、自分が帰るべき世界線そのものが消えたと理解する。アストリッド侯妃との駆け引きでは、レズンブール伯爵由来の情報を武器に北海三国共同商業会議を提案し、同時にリュシアンの養子縁組を正式に進め、夜には「戻れなくてもそばにいる」と誓うヴォルフの言葉を胸に、新たな人生を選び取っていく。


Ep.520「魂の片道切符」


書斎でメービスは密かな日記に向かい、「精霊子=魂の情報クラウド」という仮説から、自身とヴォルフの時間遡行と「帰還不能」を論理的に証明する。元の未来が消えた今、「還らない」と自ら選ぶことで絶望を裏返し、ヴォルフへの想いが恋であると認めつつ、その想いを硝子の鈴のように胸の奥へそっと封印する。


Ep.521「檻の中の師、玉座の生徒」


王宮地下牢で対面したレズンブール伯爵は、メービスの政略を辛辣に採点しながらも、その覚悟を認め、死による償いを望む。メービスは「領民を守るために私兵を動かした」という公式解釈で彼の体面を守りつつ処刑を退け、リュシアンの教育監督として離宮に移すことを命じ、伯爵は涙と共に残りの人生を捧げることを誓う。


Ep.522「春の息吹、あるいは王国の新しい呼吸」


春を迎えた王都は、アルバートとの通商条約で港が賑わい、「慈愛の善政」と「灰月の監視」が両輪となって国の血流が整えられていく。ヴォルフは炸裂槍や魔導兵との連携で軍の近代化を進め、離宮では伯爵がリュシアンの「学友」を身分を越えて公募する構想を掲げ、吟遊詩人たちの物語がロゼリーヌとリュシアンのイメージを優しく上書きしていく。


Ep.523「剣と法と、胸奥の痛み」


離宮での朝はヴォルフの苛烈な剣の稽古と、レズンブールによる政治と法の講義で始まり、リュシアンは「王は痛みに寄り添うべきだ」と自分の言葉で語り始める。王家秘学寮の学友募集が平民にも開かれ、立身出世の夢で王都が沸く一方、メービスは剣と書物に向かう二人の背に「父と子」のような温かさを見て、自らの「家族」への憧れを深めていく。


Ep.524「わたしの幸せは、罪になりますか」


雨音の響く温室で、ロゼリーヌはメービスの奥に沈む寂しさを見抜き、「あなた自身の子どもを望んだことはないのですか」と静かに問う。犠牲でしか自分の存在を許せないメービスに対し、「あなたの犠牲の上に成り立つ幸せは要らない」と言い切ったロゼリーヌの言葉が、夜の稽古場でヴォルフを見つめるメービスの胸に「恋」という名前を与えていく。


Ep.525「触れそこねた袖、裂けた夜着」


公務に追われ、同じ寝室にいながらすれ違う夜が続くうち、メービスは「愛されたい願い」と「資格のなさ」の板挟みで自分を追い詰めていく。馬車の中で半ば眠ったままヴォルフを前世の名で呼んでしまい、目覚めた羞恥と恐怖から彼を突き飛ばして逃げ込んだ寝室の扉の向こうに、やがてヴォルフの静かなノックが響く。


Ep.526「守る騎士と、盾を捨てる姫」


扉を無理に開けようとせず、ヴォルフは「俺はお前にとって怖い存在か」とだけ問いかける。自分が怖いのはヴォルフではなく、自分の心だと気づいたメービスは扉を開けて「違う」と答え、「明日、離宮で全部話す」と約束し、その夜、眠れぬまま自分の「好き」と向き合い続ける。


Ep.527「ローズマリーの針、ラベンダーの翳」


翌日、メービスは離宮でロゼリーヌと共に厨房に立ち、リュシアンの好物を作る準備をしながら、ローズマリーやラベンダーの香りの中で心をほぐされていく。湯気と香りが、前世で茉凜と交わしたささやかな約束の記憶を呼び戻し、「誰かと台所に立つ」温かさを思い出させる。


Ep.528「姉妹の午前」


トマトベースのチキンピラフと二種のソース作りは、失敗しそうなオムレツをロゼリーヌがさりげなく繕うことで、「料理も人生も手を加えればやり直せる」という小さな示唆に変わる。メービスがロゼリーヌを「お姉さま」と呼び、完成した「白い幸せと黒い冒険」を四人で囲む食卓は、彼女にとって初めての「家族」の形となる。


Ep.529「薫る午後、揺れる距離——わたしのことば、あなたのまなざし」


リュシアンとロゼリーヌが席を外したテラスに、メービスとヴォルフだけが残り、昼下がりの光とハーブの香りのなかで他愛ない会話が続く。ヴォルフがかつての稽古を「一緒に踊っているみたいで楽しかった」と語ったことで、メービスは「分かち合っていた時間」の確かさを知り、昨夜の約束どおり「全部を話す」覚悟を固める。


Ep.530「論理という名の懇願 離婚宣言と本音」


メービスはまず「リュシアンの自由を守るためにはスペアとなる継承者が必要だ」と理屈を立て、「自分が子を産む」と切り出す。父親を問われて「あなた以外にいない」と告げる本音は、政治と責務の鎧をまとった不器用な求婚だが、ヴォルフの沈黙を拒絶と受け取った彼女は、パニックのあまり「迷惑なら離婚しましょう」と自ら関係を壊そうとしてしまう。


Ep.531「わたしの全部、あなたのぜんぶ」


「離婚」という言葉にヴォルフは怒り、メービスの自己否定を叱り飛ばしたうえで、「嫌なわけがない」とはっきり告げる。年齢差やユベルへの負い目から封じてきた想いを彼もまた打ち明け、互いがずっと求めあっていたことを確かめ合った二人は、「その苦しみごと俺が引き受ける」「全部預ける」と誓い、真の夫婦として結ばれる。


Ep.532「鈴蘭が鳴らす勝利宣言」


翌朝、メービスはもはや独りで目覚めることのない寝台で、ヴォルフの寝息と体温を確かめながら目を覚ます。ぶっきらぼうに差し出された包みの中には銀の鈴蘭の簪があり、「黒髪で短い方が好きだ」と照れ隠しのように告げるヴォルフの手が震えながらそれを挿すと、二人はテラスで他愛ない朝食をとり、「あたりまえの未来」を育てていくことを静かに約束する。


Ep.533「琥珀色の風が鳴る朝」


半年後、秋の風が琥珀色の葉を揺らす朝、リュシアンは正式に王太子リュシファルドとして宣誓し、メービスの腹にはヴォルフとの新しい命が宿っている。情報戦と物語の上書きでロゼリーヌ母子の位置づけを整えた今、メービスは革鎧の裏に縫い付けられていた「ヴォルフと幸せになりたい、子どもはいっぱいほしい」という本来のメービスのメモをヴォルフと共有し、「過去の自分たち」の願いまで引き受けて幸せになると誓い、鈴蘭の簪を鳴らしながら茉凜のいない空へそっと報告する。

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