第25話 再び、世界へ

 夜が明けた。


 焚き火の跡に残る白い灰を見つめながら、如月ミカはそっと立ち上がった。


 封筒を手に取り、決意を確かめるように深く息を吸った。


 ミカは思った。


 ──私は、もう一度、出す。


 排泄しないことで手にした静寂も、沈黙も、尊かった。

 だが、自分はやはり、世界と繋がりたいのだ。

 内に燃える命を、外へと押し出したいのだ。


 出すことを恐れずに生きる。

 恥も、痛みも、悦びも、すべてを晒して生きる。


 それこそが、私にとっての生だ。


 ミカは更新用の封筒を破り捨てた。

 赤い蝋の封は、崩れ落ちた。


 返信はしない。

 うんこ免除許可証は、失効する。


 ミカは空を仰いだ。

 まだ朝の光は弱かったが、その空は確かに広がっていた。


 何も持たず、何も恐れず、もう一度世界と向き合うために。


 彼女は、静かに歩き出した。


 出すこと。

 それは、恥でも、敗北でもない。

 それは、生きることそのものだった。


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