5章: サラリーマン、タバコ開発中止!?

それは唐突に訪れた。


「タカハシ。少しいいか?」

いつものように研究室で新しい銘柄のタバコを開発していると、国王に呼び出された。

何やら深刻そうな顔をしている。

「どうしましたか?」

と俺が尋ねると、国王陛下はこう続けたんだ。

「実はな……女神様からの天啓を受けたのだ」

彼は頷いた。そしてこう続けた。

「ああ……『タバコの新規研究は禁止する』とのお告げがあったのだ……」

とね。

え?なんでだ?!

俺は混乱したよ!だって俺の開発したタバコを販売して、国を豊かにするために頑張ってきたのに……それなのに突然禁止だなんて!!

「神から政治を任せた我は、女神様の意向に沿わなければならない。それに、その、なんだ。タバコで儲けすぎた、というのもある。このままでは貿易摩擦になってしまい、我が国では海外に事業を展開するなどの対策を取らなくてはならないのだ」

と彼は申し訳なさそうに言ったよ。

「そうですか……」

俺は肩を落としたよ。だって俺のタバコは一大産業になるはずだったのに……

そんな俺の様子を察してか、国王陛下がこう言ってくれたんだ。

「タカハシちゃんには感謝しているよ。君のおかげで我が国は豊かになった。だが、これ以上儲けすぎるのは良くないのだ」

と言ってね。

まあ確かに、クチン合衆国から大量の注文が入ったしなぁ……それに他の国にも売り込みに行く予定だし……でもまさか禁止されるなんてなぁ……

まあしょうがないか……

「わかりました。では、今後タバコはどうするんですか?」

と俺が聞くと国王陛下は答えたよ。

「うむ。今まで通り『アーク・ロイヤル』はそのまま流通販売させる。だが、このままタバコの輸出に依存していては、やがてこの国の財政も破綻してしまうだろう」

「では、どうされるのですか?」

「うむ。そこでだな……」

と国王陛下は続けたよ。

「我が国も自給自足を目指すべきだと思うのだ」

なるほど……

確かにその通りだなと思ったよ。タバコの輸出に頼った経済構造だと、いつか必ず破綻する時が来るはずだからな……

でもどうやって?

すると国王陛下は言ったよ。それは意外な提案だったんだ!

「実はな、我は保存食というものをずっと考えているのだ。この国は地震が多く、津波も来る。災害時に備えるためにも、食は重要だと我は思うのだ」

なるほど。確かにその通りだな……

「わかりました!では俺はその研究開発しますね! タバコの研究なくなっちゃったんで、時間余ってますし……」

と俺が言うと国王陛下は微笑んでくれたよ。そしてこう続けたんだ。

「ああ!頼んだぞ!」


こうして俺は保存食の開発に取り組むことになったんだ!でもタバコが売れなくなったからなぁ……多分しばらくは暇になりそうだな……まあいいか。

そんな訳で、色々考えてみた。

まず、この国は塩がない。

いや正確には海に面している半島だから、海水はあるのだが、前世のようなイオン交換樹脂法、電気透析法といった効率よく塩を取り出す仕組みがない。原始的な蒸発法もあるにはあるのだが、岩塩を輸入するほうが正直安い。

まあそりゃ、そうだ。

こういうのも魔法とかでなんとかならないか?

でも俺魔法の仕組みとかよく分かってないし、そもそも塩化物イオンを魔法で分離なんてできるのだろうか?

俺は城の図書館に寄って、ついでに受付カードを作って調べてみることにした。

身分証は持ってなかったけど、俺の名はタバコの販路のおかげで有名になってたみたいで、司書の女性も俺のことを知っていたんだ。

「これはタカハシ殿!ようこそお越しくださいました!」

と敬礼までされてしまった。俺は軽く会釈をして中に入ることにしたんだ。

まず最初に向かったのは歴史書コーナーだ。

そこには様々な国の本がある。もちろんエルドラゴ王国のものやクチン合衆国のものなどもあるのだが、俺が探しているのはそれではない。

確かこの辺にあったはず……

そんなことを考えているうちに、ようやく目的の本を見つけたよ。

それは『魔法の仕組み、子供向け』と書かれている絵本だった。

「これか……」

と呟きながら、俺はページを開いたんだ。


『魔法の仕組み』

・魔法は精霊の力を借りて行われるものです。

・魔法を使うためには個人の魔力が必要です。

・魔力の量は人によって異なるため、人によって使える魔法に制限があります。

・一部の魔物や魔族などの種族は生まれつき高い魔力を有しています。そのため、強力な魔法を使えます。

・一般的には生活魔法と呼ばれるものが一般的で、水を浄化したり火をおこしたりといった日常生活を送るために必要な魔法です。

・また、一部の魔法は古代文明の遺産として現代に残っています。例えば、空を飛ぶ魔法や瞬間移動の魔法などが有名ですね。これらの魔法は現在では失われており、使える人はほとんどおらず、その原理も不明です。

・魔法は神から人間へ与えられし贈り物と考えられています。古代文明では魔法を使って生活を豊かにしていたそうですが、現代ではほとんど失われてしまったのです。


ていうか、ここでもあの女神とやらが出てくるのか。癪だな。

とりあえず魔法に関してはなんとなくわかったぞ。

こうして調べ物をする作業は嫌いではない。

JT に勤めていた時も、休日は国会図書館に出向いて調べものをして、色んな人に取材したもんなあ。

それが役に立つ日が来るとは。

次は塩化物イオンを分離する方法だが……どうしたものか?

「うーん」

と考えていると、ふと目に入ったのが『科学史』という本だったよ。それを手に取って開いたんだ。するとそこにはこう書かれていたよ!


『科学史』より抜粋

・古代文明では、塩は海水からではなく岩塩や鉱物を採掘して作られていました。また、塩以外にも様々なものが作られていました。例えば鉄鉱石や石炭などです。

・これらの資源は、古代文明の滅亡とともに失われてしまいましたが、その技術は今でも受け継がれています。

・例えば、岩塩を採掘するためには、まず岩を砕くための道具が必要です。また、岩を砕いた後に水で洗い流す作業も必要でした。

・これらの作業には高度な技術と知識が必要でしたが、今では機械によって行われています。しかし、それでもまだ完全に自動化されているわけではなく、人の手で行っている部分も多いのです


「なるほど……」

つまりだ。機械で岩塩を採掘することはできるということだな。

でもそれだけじゃダメなんだ。問題は塩化物イオンだ。どうやって分離すればいいのやら……

うーん、とまた悩んでいると、ふと目に入ったのが『水処理』という本だったよ。それを手に取ったんだ。


・水を浄化するためにはいくつかの方法があります。例えば、活性炭を使う方法やイオン交換樹脂法などが有名です。どちらも錬金術によって水から不純物を取り除く仕組みです。

・また、逆浸透膜と呼ばれる特殊な膜を使うことで、水を濾過することもできます。これは非常に高度な技術であり、現在ではほとんど使われていません。


他にもないか、と図書館を歩き回っていると『錬金術実験』という本を見つけたよ。

「胡散臭せぇ……」

それを手に取って読んでみると、興味深いことが書かれていた!


・錬金術は古代文明の魔法技術の一つです。古代文明では魔法によって様々なものが作られていましたが、現代ではほとんど失われてしまいました。

・しかし、一部の錬金術師や魔法使いは今でも錬金術を使えると言われています。彼らは独自の方法で錬金術を行っているのです。

・錬金術では、物質を分解したり合成したりすることで新たなものを作り出すことができます。しかし、その技術は非常に高度であり、現在ではほとんど使われていません。

・錬金術の代表的な例として『賢者の石』があります。これはあらゆる病気を治す薬を作ることができると言われていますが、実際にはまだ見つかっていないのです。


「ふむ……」

と俺は考えたよ!

つまりだ。

化学的に塩化物イオンを分離するにはどうすればいいか? 答えは簡単だ! それは錬金術を使うしかないんだ!! でも俺は錬金術なんて使えないよ? そもそもこの世界の錬金術ってどんな感じなんだ? 俺のイメージだと、なんか怪しい薬を作ってそうなんだけど……

まあいっか。とりあえず錬金術師とやらに聞いてみればいいだけの話だ! 俺は早速、城の中にあるという錬金術師の部屋に向かうことにしたんだ。


広いなぁこの城。なんでも人材揃ってるよ。

「失礼します」

とノックして中に入ると、そこには一人の女性がいたよ。

彼女は俺を見て少し驚いた様子だったけど、すぐに笑顔になって言ったんだ。

「あら?あなたは確か……」

どうやら俺のことを知っていたみたいだ!よかったぜ! でもなんかこの人ちょっと怖いんだよな……だって目の下に隈ができてるし……徹夜で研究とかしてるんだろうか? まあそれは置いといて、まずは本題に入ろうと思う。

「初めまして。私、タバコの研究をしているタカハシと申します」

「ああ!あなたがあのタカハシさんなのね!」

と言うと彼女は目を輝かせたんだ。なんか嫌な予感がするな……

「それで、今日は何か御用ですか?」

と聞かれたので俺は答えたよ。

「はい。実はですね……」

そして俺は彼女に事情を説明したんだ。すると彼女は納得した様子で頷いてくれたよ。よかった……でもまだ油断はできないぞ……

「……というわけでして、ぜひ錬金術を教えていただけないかと思いまして……」

と言うと彼女は少し考えてから言ったんだ。

「わかりました。でも……その前に」

彼女は俺の目の前に立つ。

百五十センチくらいの身長だが、幼女の姿になってしまった俺としては、非常に大きく感じたよ。そして彼女はいきなり俺をハグしてきたんだ!

「かわいいー!!」

と言って頬ずりしてきた。ちょっと痛いけど、まあ悪い気はしないかな……

でも俺は男だぞ!

「ちょ、ちょっと!」

と俺が慌てていると、彼女は言ったんだ。

「ごめんなさいね。私、可愛いものを見るとつい……」

と言いながらもまだ離そうとしない。もう好きにしてくれよ……

頭におっぱいが乗ったり、いい匂いがしたりして気持ちいいし。

「あの……そろそろ……」

と言うと彼女はようやく離してくれたんだ。ふぅ助かったぜ……

「それで、錬金術を教えていただけるんですか?」

と俺が聞くと彼女は言ったよ。

「もちろん!喜んで!」

こうして俺は錬金術師の先生に教えてもらえることになったんだ!やったぜ! でもその前に一つだけ聞いておかなければならないことがあるんだ。それは『賢者の石』についてだ。もし本当にそんなものがあるなら、是非とも手に入れておきたいからな。

「ところで」

「私のことはぜひ、『先生』と呼んでくださいな」

と彼女は言ったよ。まあ本人がそう言うならそうするか……

「はい、わかりました。それでですね……」

俺は彼女に質問したよ!

「賢者の石ってご存知ですか?」

すると先生は驚いた様子で言ったんだ。

「ええもちろん知っていますとも!でもあれは伝説上のものですよ?」

「そうなんですか?ではどこにあるとかは……?」

と聞くと彼女は少し考えてから答えたよ。

「うーん……私も詳しくは知りませんが……確か古代文明の遺跡にそれらしきものがあったとか聞いたことがあります。師匠なら、もっと知っているかもしれないのですが……」

「なるほど……」

「まあ、あくまで噂ですけどね。でももし本当にあるのなら見てみたいものですわ!」

と先生は目を輝かせていたよ。やっぱりこの人も研究者なんだな……

実は賢者の石については知識を蓄えておきたかったんだ。なぜなら賢者の石はあらゆるものを金に変えたり、不老不死をもたらすと書かれてあったからだ!

それなら、俺の身体を元に戻すことができるかもしれない。あのクソ女神に一泡ふかせてやる!

「でも、もしかしたらダンジョンに詳しいガイルさんなら知っているかもしれませんね」

と先生は言ったんだ。

「ガイルのこと知っているのか?!」

「ええもちろん。何度か材料の採取に一緒についてきてもらってますよ? 彼、すごく頼りになるんです」

と彼女は笑顔で答えたよ。そうか、あのガイルが……冒険者として有名だったのか。

家では農業をして飯食って、夜に一人でタバコを吸っていたイメージしかなかったけど。ちょっと尊敬かも。

「では、ガイルに聞いてみますよ。ありがとうございました!」

と俺は言ったんだ。

「いえいえどういたしまして」

彼女は笑顔で手を振ってくれたよ。なんかいい人だな……この人なら信用できるかもしれないな……

よし!そうと決まれば早速行動だ!

俺は城を出て、冒険者ギルドへと向かったんだ。そして受付で伝送魔法、まあ電話だな。それでガイルを呼び出したんだ。するとすぐに彼はやってきたよ。相変わらず無精髭を生やして眠そうな顔をしているな……

「久しぶりだねタカハシちゃん。元気にしてるかい?」

「はい!おかげさまで。ルナやミレも元気ですか?そっちにも全然顔出せないですみません」

と俺は頭を下げた。するとガイルは笑って言ったんだ。

「いいんだよ!タカハシちゃんには感謝してるんだから!」

そして、彼は俺にこう言ってくれたよ。

「それで、今日はどうしたんだい?また新しいタバコのレシピでも思いついたのかい?」

と聞かれたので俺は答えたよ。そう、俺の目的は賢者の石だ!

「実はですね……俺、賢者の石を探してまして」

と言うと彼は驚いた様子だったよ。まあ当然の反応だよな……

「賢者の石?そんなものが本当にあると思っているのかい?」

と聞かれたので、俺な答えたよ。

「はい。実は……」

そして俺は彼に説明したんだ。すると彼は言ったよ。

「なるほど……でもそれはただの伝説だよ」

とね。まあそうだよな……でもここで諦めるわけにはいかない!だから俺は食い下がったんだ。

「お願いします!もし知っているなら教えてください!」

と言うと彼は少し考え込んでから言ったんだ。

「……わかった。でもあまり期待しないでくれよ?」

とね。俺は嬉しくなってつい飛び跳ねてしまったよ!やったぜ!!

「ありがとうございます!」

「じゃあ俺、クエストが終わったばかりでもう帰らなきゃいけないから。馬車ももう予約してしまったし」

と彼は言ったんだ。そうか、確かにもう夕方だしな……残念だけど仕方ないか……でも新しい情報ゲットできたしいいか!

「わかりました!」

「一緒に帰るかい? それとももう少し街をブラついて行くかい?」

と言われたので、俺はこう答えたんだ。

「では一緒に帰りましょう!」

俺は一人分のお金と追加の乗車券を買って、馬車に揺られながら家に帰ったんだよ。

しかしまあ、車移動に慣れていると、馬車特有の揺れは結構キツイものがあるよな。道も舗装されてないし。

「お尻痛い……」

とつい言ってしまうと、ガイルが笑いながら言ったんだ。

「ははっ!俺もだよ」

なんか和むなぁ……この人とは気が合うんだよな。こういう人畜無害そうなところが特に。

それからしばらく他愛のない話をしていたんだけど、突然ガイルの表情が暗くなったんだ。どうしたんだろうか? 心配になって聞いてみることにしたよ。すると彼はこう答えたんだ。

「実はなタカハシちゃん……最近この辺も物騒になってきたみたいでな」

ああそうか、確かにそうだなと思う。最近物騒な事件が多い気がするんだ。城下町では強盗や誘拐なんかが頻発しているらしいし……

「そうなんですか?何かあったんですか?」

と聞くと、彼は言ったよ。

「実はな、最近この街で『黒ずくめの集団』が出没しててな……」

黒ずくめか!いかにも怪しい奴らだな。どこかの探偵漫画みたいだぜ。

「その集団の特徴とかは?」

と聞くと、彼は答えたよ。

「それがよくわからなくてな……ただ、奴らが使う魔法は非常に強力らしいんだ」

ほう!それは興味深えな!でもそんな奴がいるならもっと話題になってもいいはずなんだが……

「そうなんですか?でもあまり聞いたことないですね……」

と言うと、彼は言ったよ。

「ああ。だから俺も気になって調べてみたんだが……どうやらかなりヤバい組織らしくてな」

「なるほど……」

「最近この街でも行方不明になる人がチラホラ出てきてるんだが……もしかしたらそれも奴らの仕業かもしれねえ……」

と彼は暗い表情で言ったんだ。うーむ、やはりそうなのかな。これはちょっとヤバい状況なのかもしれないぞ。俺は少し考え込んでからこう答えたよ。

「そうですか……わかりました!気をつけるようにしますね!」

すると彼はホッとした様子で言ったんだ。

「ああ!頼むぜタカハシちゃん! 特に君は小さい女の子なんだからな! 何かあったらすぐ俺を呼ぶんだ!いいな?」

「はい!」

俺は元気よく返事をしたよ。そして俺たちは家に帰ったんだ。

「ただいま!」

と俺が玄関を開けると、ルナやミレが飛びついてきたんだ! そして二人は嬉しそうに言ったよ。

「おかえり!!」

2人は満面の笑みを浮かべていた。

「どうしたの急に? もう。帰ってくるなら連絡してよね! ご飯の準備もあるんだから」

とミレが言った。

「ごめんごめん」

俺は苦笑しながら謝る。するとルナが聞いてきたんだ。

「それでどう? お城での暮らしは慣れた?」

と聞かれてしまったので、俺は正直に答えることにしたんだ。

「まあなんとかね……ただちょっと窮屈なこともあるけど……それにご飯はミレが作った方が美味しいし」

と言うと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。そしてルナは言ったんだ。

「ありがとう! でも私はタカハシが元気ならそれで十分だよ!」

と言ってくれたんだ。本当に優しい子だよな……

そして晩飯をみんなで食べて、風呂に入った。

やっぱりミレが作るグラタンはおいしい。

寝る前、ワインを飲んでいた大人二人に。

「お金ありがとうね。ガイルが無茶なクエストしなくてもよくなったんだから。でも、タカハシちゃんも無理はしないでね」

とルナに言われてしまった。ちょっと照れ臭かったけど、嬉しかったよ。

「うん!ありがとう!」

と言ってから、俺は部屋に戻ったんだ。

「たしかに、前よりもガイルの傷とか減った気がするな」

と独り言を呟き、俺は眠りについたんだ。そして翌朝目が覚めると、ルナやミレに起こされた。どうやら俺がなかなか起きてこないから心配してくれたらしいんだ!なんていい子たちなんだろうか……

でも大丈夫だって! ちょっと寝心地が良すぎただけだし。


というわけで、今日も一日頑張っていこう! 俺はそう決意し直したんだ。そして着替えを済ませると早速家を出ることにしたんだ。今日は何をしようかな?

「よし!まずは冒険者ギルドに行ってクエストでも見てみよう!」

と決め、俺は家を出た。もしかしたら賢者の石関係のクエストがあるかもしれない。

するとそこにはルナがいたよ。彼女は俺を見るなり言ったんだ。

「タカハシちゃん、どこ行くの?」

「ちょっとギルドまでね」

と答えると、彼女は少し心配そうな表情を浮かべた。そして俺に聞いてきたんだよ。

「……もしかしてまた危険なことするつもりなの?」

俺は慌てて否定したよ。

「違うって!ちょっとクエストの見学に行こうと思っただけだよ!」

すると彼女はホッとした様子で言ったんだ。

「そう……なら良かったわ」

こんどはルナが聞いてきたんだ。

「ねえタカハシちゃん、今日は何する予定なの?」

と聞かれたので俺は答えたよ。

「ん?特に決めてないけど……」

と言うと、彼女は少し呆れたように言ったんだ。

「またそんなこと言うんだから……少しは休息を取りなさいよ」

「はい……すいません……」

と素直に謝ったんだ。確かに最近ずっとバタバタしてたもんな。たまにはゆっくり休むのも悪くないかもな……

「わかったわ。じゃあ今日は私が街を案内してあげる!」

とルナが言ったんだ。俺は喜んで承諾したよ。

「今度こそ雑貨屋さんでかわいいの買うんだ!それにケーキ屋さんにも行ってみたいし。あとそれと……」

と彼女がはしゃいでいて、俺は笑っていたよ。そして彼女は俺の手を引いて歩き出したんだ。

「じゃあ行きましょ」

そんな会話をしながら二人分のお金を払い俺たちは馬車に乗り、しばらく歩いていったんだよ。途中で色んな人とすれ違ったけど、みんな笑顔で挨拶してくれたんだ! それがすごく嬉しかったなぁ……この街に来て本当に良かったと思ったよ。

それからしばらく歩いて、ようやく目的の雑貨屋に到着したんだ。店内には様々な商品が並んでおり、見ているだけでも楽しめたよ。特に気になったのはアクセサリー類だ。どれもキラキラ輝いていて、とても綺麗だったよ。

「ねえタカハシちゃん!これ可愛いと思わない?」

とルナが聞いてきたんだ。彼女が手に持っているのはピンクの花がついたイヤリングだったよ。俺はそのデザインを見て思わず言ったんだ。

「うん!すごくいいと思う!」

すると彼女は嬉しそうに笑ったんだよ。そして俺にこう言ってくれたんだ。

「じゃあ買ってくるわね」

と言って店主のもとへ向かっていったんだけど、途中で何か思い出したかのようにこちらを振り返ったんだ。何だろう?と思っていたら彼女からこう言われたんだ。

「タカハシちゃんも一緒に来なさい! 私一人じゃ不安だから!」

と言われたので、俺は彼女について行ったんだよ。そして店主の前に着いたところで彼女が言ったんだ。

「これください。あの子にプレゼントなんです」

すると店主は無愛想ながらも笑顔で答えてくれたよ。どうやらこの店に置いてあるものは全部手作りらしいぞ!!すげーなオイ! あとなんかいい匂いがするんだよね……香水かな?それともアロマオイルでも入れてるんだろうか……気になるなあ……でも今はそんなことよりもルナへのお礼だ!ありがとうって言わないとな!

「ルナ、ありがとう」

と言うと、彼女は少し照れくさそうにしていたよ。そして俺たちは店を出て、また歩き出したんだ。次はどこに行こうか?と考えているうちにお腹が空いてきたんだよ。なのでどこか適当なお店に入って食事をすることにしたんだ。


店内に入ると店員が出迎えてくれたんだけど……なんかちょっと様子がおかしい気がするぞ?どうしたんだろ?と思っているうちに席に案内されたよ。そしてメニュー表を渡されたんだ。

「あ、これ」

クチン料理だ。おいしかったなぁ。また食べたいかも……

そう思って見ているとルナが声をかけてきたんだ。

「タカハシちゃん!何か食べたいのある?」

俺は迷わず答えたよ。

「クチン料理!」

「なにそれ? おいしいの?」

俺はアモンとの会話を思い出し、言ったんだ。

「うん!すごくおいしいよ! クチン合衆国の郷土料理なんだ」

すると彼女は目を輝かせて言ったんだ。

「じゃあそれにしましょう!」

よしきた!とばかりに俺は手を挙げて店員さんを呼んだんだよ。そして注文を終えるとしばらくして料理が運ばれてきたんだ! 見た感じ辛そうだけど大丈夫かな?一口食べてみると……辛い!!でもうまい!!辛いのに美味しいとはどういうことだ?! 不思議だ……でも癖になる味だなこれは……

「ねえタカハシちゃん、これ本当においしいわね」

そんなことを考えているうちにルナが話しかけてきた。

「だろ?」

と答えると、彼女は微笑んで言ったんだ。

「タカハシちゃんって本当においしそうに食べるわよね」

そんなやり取りをしながら食事を終え、俺たちはまた街へと戻ったんだよ。次はどこに行こうかな……そうだ!ガイルたちにお土産買っていこうかな?何が喜ぶだろう……と考えているうちに、あるお店の前に辿り着いていた。

あ。ここアレン商会だ。入ってみるとたくさんの商品が並んでおり、目移りしてしまうほどだったよ。特に気になったのは綺麗な宝石やアクセサリー類だ。どれも素敵で見ているだけでも楽しめたよ。でも俺には高いので手が出なかったけどね……まあ見るだけで満足しておこうかな……と考えているうちにルナから声をかけられたんだ。

「タカハシちゃん、これどう思う?」

と言って彼女が指差したのは小さな猫の絵が描かれたマグカップだったんだよ! すごく可愛いデザインだなと思ったんだけど、値段を見てびっくり!なんと1000ダルクなんだ!高すぎだろおい!

ああでも、アレンさんの知り合いである俺ならば、値引き交渉ができるかも! そう思った俺は思い切って言ってみたんだよ。

「これ、ください」

すると店員は笑顔で言ったんだ。

「ありがとうございます!ですが……あともう百ダルクほど安くできますよ!」

よしきた!それなら買えるぞ!と思う。

「それで売ってくれたら買いたいです」

と提案してみると、店員は申し訳なさそうな表情になった。

「タカハシちゃん!ここは私がに任せて!」

店員に向かってこう言ったんだ。

「あのーすいません!これパパとママへのプレゼントなんですけど……これお安く売ってもらうことってできませんか?」

すると店員は笑顔で答えたんだ。

「かしこまりました!セットで買うのであればさらにお安くできますよ!」

と言ってくれたので、俺たちは迷わず購入することにしたんだ。

「じゃあセットでください」

と言うと店員は笑顔で言った。

「ありがとうございます!では合計で1500ダルクになりますね」

俺はお金を払って商品を受け取った後、ルナと一緒に店を後にしたんだ。それからしばらく歩いているうちにお腹が空いてきたので、近くのカフェに入ったんだよ。そこでお茶を飲みながら休憩することにしたんだ。そして注文したケーキを食べようとした時、突然後ろから声をかけられたんだ。


黒いフードに黒いマント、そして手には杖を持った男だった。彼はゆっくりと近づいてきてこう言ったんだ。

「あの……お聞きしたいことがあるのですが」

とね。俺は警戒しながらも答えたよ。するとその男はさらに続けて言ったんだ。

「実は私、最近この街に流れ着いたばかりでして……」

怪しい。

「ルナ、下がってて」

俺はルビーの杖を取り出し警戒した。するとその男は慌てて言ったんだ。

「待ってください!怪しい者ではありません!」

とね。でもどう見ても怪しいだろ……と思っていると、ルナが口を開いたんだ。

「あの……あなたは一体何者なんですか?」

すると男は少し考え込んだ後こう言ったんだよ。

「……私はただの旅の魔法使いですよ」

「じゃあその格好は何なのですか?そんな格好で歩いていたら目立つと思うのですが……」

と俺は聞いたんだ。すると彼はこう答えたよ。

「それはですね……実は私、追われている身でして……」

「追われている?」

とルナは聞き返した。すると彼はこう答えたんだ。

「はい……実は私、ある組織に追われているのです」

組織?一体どんな組織なんだ?気になるけど今は聞かないでおこう。

「それでその組織というのは?」

俺はそう質問したよ。男は少し間を置いた後ゆっくりと語り始めたんだ。

「……それはですね……『黒ずくめの集団』と呼ばれている組織です」

ガイルが言っていたやつだな。

「その『黒ずくめの集団』というのは一体どんな組織なんですか?」

と俺は聞いたんだ。すると男は答えたよ。

「彼らはとても危険な存在なのです」

危険?どういうことだ?

「具体的にどのような活動をしているんですか?」

そう聞くと、彼は少し考え込んだ後にこう答えたんだ。

「組織は主に人身売買を行っているのです……誘拐や窃盗など……そして奴隷として売り飛ばしたりもしています」

人身売買?

「それに、問題は彼らが使う魔法にあるのです」

魔法?一体どういうことなんだ?

「……それはどういうことですか?」

そう聞くと、男は少し間を置いた後にゆっくりと語り始めたんだ。

「彼らは強力な氷魔法を使うのです。元々、魔法大国である『カノン連邦』で開発された魔法なんです」

カノン連邦?初めて聞く名前だな……まあ今は置いておこう。

「そうなんですか?」

と聞くと、男はさらに続けたんだ。

「はい。そしてその魔法を使える者はごく僅かしかいません。なので彼らはその力を悪用して人身売買を行っているんです」

なるほど……そういうことか……でもなんでそんなことをするんだろう?何か理由があるのか?

「なぜそんなことができるのですか?」

そう質問すると、彼は答えた。

「……それはですね……彼らにとってそれが当たり前になっているからです」

とね。つまり、強力な魔法を使える者にとってそれが普通になっているということか……

「……なるほど」

まあとりあえずはわかったぞ。でもまだ聞きたいことがあるからな。もう少し聞いてみよう。

「それで、あなたはその組織から逃げてきたということなんですね?」

そう聞くと彼は答えたよ。

「はい……そうです」

そしてさらに続けたんだ。

「実は私、クチン合衆国の田舎にある小さな村に住んでいたんですよ」

彼がフードを外すと、ネコのような耳が生えていた。獣人族だ。彼は続ける。

「私はそこで家族と平和に暮らしていたんです……でも、ある日突然奴らが襲ってきたのです」

とね。そして彼は語り始めたんだ。

「……あれは私が十歳の時でした。村の近くに魔物が現れたので退治しに行った時のことです」

俺は黙って聞いていたよ。すると彼はさらに続けたんだ。

「その魔物は強かったのですが、なんとか倒すことができました。しかしその後、私の両親と妹が攫われてしまったんです」

なるほど……

「それで私は組織に入り、内緒で両親と妹を探していました」

なるほどね……でもそれってつまり、その組織が人身売買をしているってことだよな。

「じゃああなたはその組織の一員だったということですよね?」

と聞くと、彼は答えた。

「はい……そうです」

やっぱりか……まあなんとなくわかってたけど……

「それで、あなたの両親はどこにいるんですか?」

そう聞くと、彼は少し間を置いた後にゆっくりと答えてくれたよ。

「実は私……両親を奴らに殺されてしまったのです」

ああそうか……それは辛いな……

「奴らは両親を実験台に使ったんです……そしてその後は用済みになったので、私が、殺しました。殺さないと、私が殺される……」

なるほど……そういうことだったのか。でも、なんでそこまでして人身売買をする必要があるんだろう?

「どうして人身売買なんかするんですか?」

そう聞くと、彼は答えた。

「……それはわかりません。ただ奴らは人を攫って奴隷として売っているのです」

とね。まあとりあえずわかったぞ。でもまだ聞きたいことがあるからな。もう少し質問してみるか。

「じゃああなたはなぜ組織から逃げてきたのですか?」

そう聞くと、彼は少し間を置いた後にゆっくりと語り始めたんだ。

「私はある日、組織が人身売買のために村を襲っていたことを知ってしまったのです。それで私はそのことを告発しようとしたのですが、見つかってしまい捕らえられてしまったんです」

なるほど……そういうことだったのか。でもどうして彼は逃げることができたんだろう?

「じゃあどうやって逃げたんですか?」

そう聞くと、彼は答えたよ。

「実は私、魔法が使えるのです。それでなんとか逃げることができました」

そうなのか……すごいな……

すると彼はさらに続けたんだ。

「その後私は一人で旅をしてきました。そしてこの街に流れ着いたんです」

なるほど……そういうことだったのか。まあだいたいわかったぞ。

確かに俺なら国王あたりに直訴して、この人を難民として保護することができるかもしれないな。

でも。

「なんで俺たちに声をかけたんですか? 他にも人はたくさんいたでしょう?」

と俺は聞いてみた。すると彼は答えたよ。

「はい……実はあなたからタバコの匂いがしたからです。私たちクチンの民は鼻が効くので、タバコを吸う人はすぐにわかります。おそらく、あなたが貴族かそれに近い人間であることはすぐにわかりました」

そうなのか……まあ俺は平民だしただのタバコ研究員だけどな……

「だから、あなたなら信用できるのではないかと思ったのです。それに……」

と彼は言ったんだ。そしてこう続けたんだよ。

「あなたは私の妹に似ているんです」

とね。俺はそれを聞いて少し驚いたよ。

「そうなんですか?」

と聞くと、彼は答えたよ。

「はい。とても似てます。目元とか髪の色とかそっくりです」

そうなのか……でも、それだけで信用できるのかな?まあいいや。とりあえずこの人を保護してあげないとな。俺はそう思ったんだ。

「わかりました!じゃあ俺たちと一緒に行きましょう。とりあえず城まで案内します」

そう言うと、彼は嬉しそうに言ったよ。

「ありがとうございます!本当に助かります!」

俺たちはカフェを出て歩き出した。そして城へと向かったんだ。


乗合の路面列車に揺られながら、俺たちは王都へと向かっていた。

「ねえタカハシちゃん、これからどうなるんだろうね?」

とルナが言った。

「わからないよ……でもきっとなんとかなるさ」

俺はそう答えた。すると彼女は微笑んで言ったんだ。

「うん!そうだよね!」

それからしばらく経ってから列車はエルドラゴ王国の最寄り駅へと辿り着いた。門番に事情を説明し、国王陛下との謁見を求めたんだ。すると門番は俺の顔を見るなり驚きながら言ったんだ。

「貴方はもしかしてタバコ研究のタカハシ様ではありませんか!?」

俺は驚いて言った。

「え?俺のことを知っているんですか?」

すると門番は言ったよ。

「もちろん知っていますとも!あなたの発明によって我々の暮らしは大きく変わりましたから!」

なるほど……確かにそうだな……俺が外貨を稼いだおかげで日用品の物価が下がり、国民の生活水準が上がったんだ。

「それで今日はどういったご用件で?」

と門番が聞いてきたので俺は答えたよ。

「実はこの人を保護してもらいたいのです」

すると門番は驚いたような顔をした後言った。

「それは一体誰でしょうか?見たところ獣人族のようですが……」

ああそうか、まだ紹介していなかったな……と思い俺は言ったんだ。

「彼はクチン合衆国の田舎にある小さな村に住んでいたそうです。でも、故郷を襲われて逃げてきたらしいのです」

すると門番は納得したように頷いた後言った。

「そういうことでしたか……わかりました、国王陛下に掛け合ってみますので少々お待ちください!」

門番は城の中に入って行ったんだ。そして数分後、彼は戻ってきたよ。

「お待たせいたしました!許可が下りましたのでどうぞ中へお入りください!」

そして俺たちは謁見の間に通されたんだ。

「タカハシ、して今日はどのようなご用件で?」

と国王が言ったので俺は答えたよ。

「実はこの人を保護してほしいのです」

すると国王陛下は驚いたような顔をした後言ったんだ。

「それは一体誰でしょうか?見たところ獣人族のようだが……それと、そこの少女よ。申し訳ないが席を外してくれないかね」

「しょうがないね。あたし帰ってもいいってこと? タカハシそこで暮らしてるし、もう遅いし」

紙袋に入ったマグカップを手持ち無沙汰に弄りながらルナが言ってきた。俺は慌てて言ったんだ。

「ごめん! 俺が買い物なんかに誘わなければこんなことにはならなかったのに……」

すると彼女は微笑んで言ったんだ。

「ううん、気にしないで!だってタカハシちゃんと一緒だと楽しいもん!」

俺は少し涙が出そうになったけど我慢したよ。そしてルナが言った。

「また一緒に買い物しよーね」

「ああもちろんだよ!」

と俺は答えたんだ。でもこのまま一人で帰すわけにはいかないな……

「国王陛下、ごめんなさい。俺も席外します」

俺は国王陛下に謝り、ルナと一緒に部屋を出たんだ。

「あ! お父さんとお母さん、ここまで来てるんだって! だから今連絡していい?」

と聞いてきた。

ガイルの探知魔法なのだろう。

俺は少し考えてから言ったよ。

「うん!いいよ!」

まあたしかにガイルとミレがいれば安全だろう。

「タカハシちゃん!迎えに来てくれるって……でもちょっと時間がかかるかもだって……」

そうか……まあ仕方ない。俺はルナのお父さんとお母さんにくれぐれもよろしくと言ってほしいと伝えるように言ったんだ。

「ありがとう!タカハシちゃん!」

そう言って彼女は俺に抱き着いてきたよ。そして耳元で囁いたんだ。

「大好き」

俺は顔が真っ赤になったけど、なんとか平静を装って答えたよ。

「俺も。好きだよ」

ルナには知り合いもいないこの異世界で、俺を拾ってくれた恩がある。それに、彼女の「好き」はラブじゃなくてライクのほう、だと思う。

「ルナ、本当にありがとう」

そう言うと、彼女は少し驚いた顔をした後にっこり笑ってくれたよ。そして言ったんだ。

「こちらこそだよ!タカハシちゃん!」

俺はルナと別れた。

そして再び謁見の間に戻ると、もう既に結論が出ていた。

「その獣人族を保護致そう。そして、我が国で暮らすことを許可しよう」

と国王陛下が言った。俺はほっと胸をなで下ろした後言ったんだ。

「ありがとうございます!」

「ただし条件がある。それはこの城に住むことだ」

と言ったので、俺は戸惑ったんだ。でもまあ構わないか、とは思ったんだ。

「分かりました。ご厚意に感謝いたします」

「ただ、その……すぐに部屋が用意できるわけではない。しばらくはタカハシの部屋を使ってくれ。タカハシ、頼めるか?」

「はい、もちろんです」

そして国王陛下に一礼した後、二人で部屋に戻ったんだ。

ちなみに城暮らしとはいえ、部屋はそんなに広くない。

私物といえば持ってきた着替えと、机の上に乱雑に置かれた大量の研究資料くらいだ。それと杖が一本立てかけてあるくらいで、あとは何もない。

でもそれがちょうどいい。研究に没頭できるから。

ただ、ベッドが一つしかないんだよなぁ……狭いし。

ま、男同士なら問題ないだろ。

俺はベッドに横になり、天井を見つめる。今日は疲れていたせいか、すぐに眠ってしまったよ。

次の日、目を覚ますと部屋は真っ暗だった。まだ朝早いらしいな。

ベッドから起き上がり、部屋から出ると廊下では衛兵が巡回していたんだ。

「タカハシ様おはようございます。朝早いですね……」

と衛兵の一人が言ったんだ。

「おはよう。俺、ちょっと散歩してきますね」

すると衛兵は微笑んで言ったんだ。

「いってらっしゃいませ」

城中を散策することにしたんだ。このエルドラゴ王国の城内を改めて観察すると、とても新鮮だったよ。

まず驚いたのが、城の中に公園があることだね。しかもかなりの広さがある。

そしてさらに驚くことに、この城には温泉があるんだ。

「すごいなぁ……さすが異世界だ……」

俺は感動していたんだ。だって日本にいた時はこんな光景見たことなかったからね。

それからしばらく歩き回っているうちにお腹がすいてきた。

俺はあの獣人族を起こすことにする。

部屋へ戻ると、彼はもう既に起きていた。

「おはよう。ええと……」

「そういえば、まだ名乗っていませんでした。カレン、と申します。」

「そうか、カレンって言うのか。俺はタカハシだ。よろしくな」

こうして俺たちはお互いの名前を知り合った後、一緒に食事をとることにしたんだ。

食事は城の食堂で行われたよ。メニューはパンにサラダといったシンプルなものだったけど、味はとても美味しかった。

食事中に彼が話しかけた。

「あの、タカハシ様は研究者ということですが、どのようなことを研究されているのでしょうか?」

「タバコの……って言ってもそうだな。タバコの研究開発は止められたし……別の事業でも始めようかなって」

「別の事業ですか?それはどんな内容なのでしょうか?」

とカレンが聞いてきたので俺が答えようとしたその時だった。

「タカハシ様、国王陛下がお呼びです。謁見の間へお越しください」

と衛兵が呼びに来たんだ。俺は急いで立ち上がり、カレンと一緒に謁見の間へと向かったんだ。


なんだろう。とても胸騒ぎがする。

悪い予感だ。

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