第4話

神崎くんと2人きり…

え? どうすればいいの? 神崎くんのほう、向けないよ…。


「―――七原さん。」


名前を呼ばれる。振り返らない私と、その先を言わない神崎くんとの無言の戦い。ほんの数秒の沈黙に耐えられず、私は振り返ってしまった。


神崎くんと視線がぶつかる。

真剣なその目から、そらせなくなってしまった。

「昨日は急に、ごめん。…びっくりさせっちゃったよね?」

「あ、うん…あはは…」

うまく言えない。そりゃ、こ、告白にはびっくりしたけど…神崎くんがあのカフェで働いてたことにもびっくりだよ…私と先輩のこと知ってたわけだし…。


「…だけど、本気。嘘じゃないから…あの時言ったこと、全部。」

神崎くんの顔の赤みが、緊張が伝わってくる。神崎くんの目が、声が、体の強張りが、感じ取れる。


「―――もう一回、言っていい?」

神崎くんが一歩、私と距離を詰める。私は、動けなかった。




「七原さんが、好きなんだ。だから、この3日間を俺に下さい。」

神崎くんは、視線を外さない。私から、そらさない。


素直に、嬉しいと思う。でも…


「―――ごめん。」


私も、神崎くんから視線を外さない。神崎くんも、そらさない。


「私ね、先輩が初めて好きになった人なんだ。初めて好きになって、初めて告白して、初めて付き合ったの。その人に昨日、振られちゃったけどね…。だから、今は誰かを好きになれない。」


「…昨日、なんで泣くの我慢したの?」

「…え?」

なんだろう…自分の頬に何か暖かいものが流れた。触れば指が濡れた。

「あれ…ごめん…止まんなっ…」

一度分かってしまったらもう、止まらなくなっていた。


「―――止めなくていいよ。」


強く擦る私の手に優しく触れる、神崎くんの手。細くて長くて綺麗で、だけど男の人の手。


「―――本当に、好きだったんだよね。」

「…うん。」

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