第5話「王たる者の義務」

「ファラオ様、至急です!」


朝の儀式を終えたばかりの俺のもとに、慌ただしく家臣たちが駆け込んできた。

宮殿の空気が、いつになく緊迫している。


「……何があった?」


俺は重い腰を上げ、玉座に座り直した。

家臣は深く頭を下げ、震えた声で答えた。


「隣国との国境地帯に、“黒い砂嵐”が現れたと……!」


黒い砂嵐──。

この世界に来てから学んだ知識では、それは”異変”の兆しだった。

自然の現象ではない。

神々が怒っているか、あるいは“世界のバランス”が崩れたときにのみ起きる。


「……ついに来たか。」


俺は心の中で、確信していた。

この異世界に召喚され、エジプトの王となったのは偶然じゃない。

何か”大いなる意図”が働いている。

そして、それがいま──俺に試練を与えようとしているのだと。


「総司令官を呼べ。国境地帯の兵を集結させろ。俺も行く。」


家臣たちは驚愕し、顔を見合わせた。


「し、しかしファラオ様! 王自ら前線へなど……!」


「王たる者、民の先に立つべきだ。」


俺は静かに言った。

その言葉に、家臣たちは何も言えなくなり、ただ深く頭を垂れた。



国境地帯へ向かう道中、俺は考えていた。

この世界の謎とは何か。

なぜ俺はエジプトの王になったのか。


黒い砂嵐の向こうに、答えがある気がしてならなかった。


だがそれは、単なる気のせいではなかった。


国境にたどり着いた俺の目に映ったのは、

ただの自然現象ではない。

空を裂くように開いた「黒い穴」だった。


その穴の向こうには──俺たちの常識を超えた光景が広がっていた。


「……これは、なんだ……?」


兵たちが震え、剣を構える。

だが俺はただ、その異様な光景に目を奪われていた。


あの穴の向こうに、“世界の真実”がある。

そんな確信が、俺の胸を熱くした。


「全軍、待機。俺が行く。」


誰かが叫んだ。


「ファラオ様、無茶です!」


だが俺は、振り返らなかった。


この先に、俺の──この世界の運命が待っている。


そして、俺は知っていた。


「この穴を越えたとき、すべての謎が繋がる」と。


俺は一人、黒い穴へと歩み出した。

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