第4話 特訓



イリュージョンシティにペルツァと一緒に戻ってきた。そこで別世界で捕らえた男2人を事情聴取後、牢屋に入れる。


「本当に一山当てたいだけだったんですね〜。」



移動中に聞いた話だが、どうやら奴隷制度が残っている異世界もあったり、人を使った実験をする者が居たり、そのため誘拐するケースがイリュージョンシティ含め多いらしい。



「まあ、あいつらはあの程度で転生者とその仲間を捕まえれるってのが頭お花畑だよ。弱すぎる。」




本人たちは特殊能力無し、武器も自作した銃とナイフだけだった。


1度オニキスとペルツァの戦いを見たことがある自分からしたら、準備不足感は否めない。




「またこう言う人達が現れると自分達の仕事が増える…出来たらいないほうがいいですね。」


「どちらにせよ仕事はまた明日からだ。オニキスがもうそろそろ帰ってくるが、お前先に上がっていいぞ。荷物もそろそろ届いてるだろ。」




自分は御言葉に甘え、帰宅する事にした。

荷物の事とは、職場と自宅からの距離があるので、その事を仕事の休憩合間に2人に話していた。


そしたらオニキスが管理しているアパートが1部屋空いているとの事なので、お言葉に甘えて借りる事にした。


ちなみに 会社の経費で異世界移動ポットを買っているとのことなので、そちらを使い帰路に着くことに。検査官は絶対に居るのでこっそり武器などの持ち込みは出来ない。流石に対策はされてるよなあ…。直通で尚且つ10分でアパート前に着くのは便利だなあ…前とは大違いだ…。





アパート前のテントから出た瞬間、目の前にはクロユリ…と、トラックが停まっていた。


「ああ…フェルダね。あんたの荷物届いてるわよ…」


未だ覚えられてない…。


「フェルマです!なんで覚えてくれないんですか!」


もはやわざとじゃないと説明がつかないぐらいの間違いを連発される…この人本当に覚えないなあ…。


「あんたの名前は正直どうでもいい…けど、ペルを守ってくれるなら別に覚えるけど…」


ペルと言うのはペルツァの愛称であり、本人から聞いたところによると、付き合っていた時に勝手に呼ばせてたらしい。


「…それは期待しないでください。」


「なら覚えない…」




即答された…諦めて借りた部屋、203号室に荷物を入れていく事に。

クロユリは特に手伝いもせず、テントに戻っていった。

一人で荷物を全て入れる頃には、外は暗くなっていた。

疲れたし…出前でも…と考えていたその時、チャイムが鳴った。




「はーい!扉開いてるんで、入ってきて大丈夫ですよー!」


扉を開く音がし、そちらを見ると


「よ、引っ越し祝いだ。」



オニキスがお菓子とジュース、酒缶を持ち入ってきた。

空の段ボールを机代わりに物を置き、話し始める。



「そういえば、オニキスさんってお酒飲まないんですね。体の年齢とか…あ、でもそれだったらペルツァさんも飲めないか。」


「私が酒飲まないのは単純に苦手だからだ。酒の味は色々飲んでみたが苦くて苦手なんだよ。」


本当に単純な理由だった…。




「それなのにペルツァは酒を飲め飲めうるせえ!好き嫌いは誰だってするもんだろ!ったく、クソガキがよお!」


そう言いながら持ってきていた長いふ菓子にかぶりつく。

かぶりついている間、思い出した顔でスマホを取り出し何かを見ていた。

何を見てるのか分からないが、見終えたであろうタイミングでふ菓子をジュースで飲み込み、話し始める。




「そういえばだが、お前には明日から特訓がある!だから朝は職場から50kmぐらいのところに空間移動してもらう!」


唐突に言われ、驚きを隠せなかった。


「え、ちょ、ちょっと待ってください!そんな事急に言われても!」


「大丈夫だ!私も行く!」


そういう問題じゃなかった。




「まず!なんでそんな事しないといけないんですか!」


そう言うと、タブレットを取りだし説明し始める。

タブレットには、今日仕事で行った小屋周りが映っていた。



「説明すると、私らはそもそも違反者を取り締まる組織。今日とっ捕まえたやつを含めてな。」



画像を山小屋周りで捕まえた奴らに変えながら、話を続ける。


「んで、そんな奴らへの対抗策のひとつが武力行使。もちろん、攻撃せずに逃げていくやつも居るから基礎体力上昇!そのためにお前を50kmほど走らせる!」


な、なるほど…確かに理にかなってはいる。でも…



「50kmって…フルマラソンよりちょっと長いぐらいじゃないですか!せっかく引っ越したのに…」


オニキスがにっこりと説明し始める。


「大丈夫だって!既にお前は普通の人じゃないからさ!このぐらいだと…ざっと2時間半だな!慣れればもっと早く着くぞ!」


と、言われ。不安を抱きながら晩酌は続いていく…。





次の日、朝5時に起きてオニキスを待つ。

こんな朝早く起きるのは久しぶりだな…。

ちなみにルートが少し複雑らしいので案内するということ。

どうやら普通のルートではないらしい。

流石にスーツでは動けないということでオニキスが取り寄せたジャージを着てアパート前で待つ。



「おまたせ~!いや~、久々にこの服着ようと思って探してたら遅くなったわ!」



そういって着ていた服はブルマだった。

しかも、上にジャージを羽織っているタイプの。



「いや走るためにいつものパーカーじゃないのはわかるんですけど…ジャージじゃなくてブルマ?」


「私の趣味の一つだ。パーカーも悪くないがこの衣装でぶかぶかジャージ着るのも癖にぶっ刺さるやつは刺さる。まあジャージは私の背丈じゃ手に入れづらかったから自作だ。」



どや顔で自身の全体像を見せつけてくる。

ちなみに本当に背丈はでかくて、自分が170cmほどで、それと同じぐらいだ。

長生きしているからおそらくその過程で色々あったのだと想像できる。



「よ~し!とにかく!善は急げだ!今から走るぞー!おー!」


オニキスはジャージのチャックを閉め、気合を入れる。



自分達はポットに乗り、仕事場ではなく…ある商店街に着く。

八百屋、魚屋、肉屋…普通に仕事で使わなくとも、お休みとかで買いに来るものいいなあ…。

だけど、今日はトレーニングだ。目移りしてる場合じゃない。



そう思いオニキスのほうを見るとスマホでルートを確認してすぐに


「うっし、んじゃ行くぞ~。」



ゆったりとした声からは信じられないほどのスピード…。

急いで追いつこうとし、全力で走り始める。


正直、道が複雑なのはちょっとどころじゃなかった。

街の中を走っていたかと思えば、いきなりビルの中に入り、階段で屋上に上り、ビルとビルを飛び越える。



正直怖いけど、まだ行ける範囲だった。

…感覚が麻痺しているって言うことだけは実感する。

そしてそこからまた階段で降りて、次は古びた工場内で走り回ったり、飛び越えたりなど。

ここまでくるとパルクールをしてるような感覚になる。

その後は、ほかにも数メートルの高さから飛び降りたり、ただただ走ったり。気が付くと、職場の前だった。



「よし…7時半前だな、休憩!仕事時間の9時まで休んでていいぞ~!」



オニキスがそういうと、会社内に入る。

自分は流石に一度アパートまで戻り、ジャージを洗濯にかけた後、スーツに着替え出勤する。

9時頃、前に立ち寄ったトレーニングルームを使い説明をするとのことでそちらへ向かう。



「ってなわけで、この世界での基本的なことを説明していくぞい!」


プロジェクターが付いたホワイトボードの前に座り、まるで学生生活を思い出させるような座学が始まる。



「疑問に思ったことがあったら、その場で手を挙げて質問すること!」


ナイフを指示棒替わりに、説明が始まる。



「まず、この世界、イリュージョンシティは異種族との混合でできている。街を走り回ってもらった時も、人以外がかなりいただろ?」


確かに、人だけじゃなくて獣人と呼ぶ種族や、ドワーフなど、ファンタジーのお話に出てきそうな人達が居る。


画像が変わり、説明が続く。



「イリュージョンシティで見ない種族は…珍しいのが悪魔と、天使、あと、エルフ族とかだな。あいつらは自分たちの文化を大切にすることが多いし。」


また画像を変えながら、説明が続く。



「んで、この世界の割合とか見てもわからんだろうからほかの事を説明すると…こっちが自分たちの地球、んでこっちが私らの今いる世界。ぶっちゃけあんま変わらん。強いて言えばこの世界が一番異世界とのつながりが多いとこだな。あっちは完全に閉め切っちゃったし。」



自分はふと疑問に思い、手を挙げて


「あの、なんで閉め切るんですか?」


オニキスはペンを取り出しコップの絵を描き始める。



「異世界の一つ一つはコップのような感じでできてる。コップに水を入れ過ぎると溢れるだろ?これが1週間ぐらい前に言ったバグが起きる場合。」


更に絵を描きながら話を続ける。



「だから丁度よく溢れないように水を入れて溢れないようにする。んで、これがこのふたつの違い。世界によってコップのデカさが違うんよ。」


「って事は、自分が過ごしてる世界のほうがコップは小さいんですね?」



オニキスは頷きながら


「分かりやすく言えばお茶碗と寸胴ぐらい違う。」


「本当に差がありますね…」


大きさを想像したら本当に違いすぎる事を察していた。



「あ、でも溢れるって言ってもどうやったらそうなるんですか?普通に暮らしてますけど、そんなことないですし…」


「これに関しては単純に力を抑えてるからなみんな。私もそうだけど。」


それってつまりは…



「ドラゴンが出てくるボールの作品みたいな感じですね?」


「大体そんなもんだ。」



プロジェクターを止め、ホワイトボードなどを片付けるオニキス。


「んじゃ、次。さっきの話とつながるんだけど、力抑えすぎると能力が使えないとかあるからこういうのを使う。」



そう言って取り出したのは銃だ。

ただオニキスが持っているやつじゃなく、それよりデカい武器であった。

それをいじりながら話を続ける。


「こいつはそっちの世界でもあるけど。軍隊とかで採用された経験を持つAk47ってやつだ。ただ、こっち用に作られてるから色々違うんだけどな。」



その武器を渡してきながら


「こいつが私らのメイン武器になる。当然お前も使う。」



一応受け取りながらも


「使えるんですかね…?いや、使うしかないんでしょうけど。」



オニキスはニヤッとしながら


「お、分かってきたな!ってなわけで、武器や技をお前に全部教え込むぞい!大体能力込みで1年やるぞい!」


そんなこんなで、オニキス風に言う修行編が開始するのであった。




第4話【完】



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第四話終了時点


オニキス「作者~完全にお前の趣味だよな。銃器は。」


作者「Ak47はお前の趣味だろ、銃の描写は絶対入れたかったけど。」


フェルマ「この銃は具体的にどんな銃なんですか?」


オニキス「国の云々入れるとややこしいことになりそうだから、性能だけ説明しよう。」


作者「基礎的なアサルトライフルの原型ってか…こいつクローンが多すぎてちょいとあれだが、今回のは初期型ベースだ。ってか、オニキスの私物の一部だけどな。」


オニキス「これを手に入れるのに、そんな苦労はしなかったな。だって構造が簡単な上に、メンテナンスとかめっちゃ簡単だもん。」


フェルマ「ばっちりガンオタじゃないですか…!」














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