僕は男だ!!!!

風切が狐の穴倉に働いてくれることになったわけだし、依頼を受けようと思ったが一つもきてない。

まぁ、そんな頻繁にきてもらっても困るだけだが。

そうこうしてると、時刻は17時。

そろそろお開きにするとしよう。

「風切、今日はここまでだ」

「あ、そうだね。燃町くんのバイトの時間だしね」

「ん?なんで知ってるんだ?」

「え…?あ…あぁ!!!」

とてつもなく動揺する風切。

別になんで知ってるか聞いただけなのに…。

風切は僕に背を向け何か呟いている。

そして再び僕の方に向き直る。

「バイトがあるの知ってたのはあれだよ!夜に帰るとこ、見たりするからさ!」

夜に帰るところ見るって、なんで風切はその時間に外にいるんだか…。

まぁ、それでふと思い出した。

「風切はあの夜何してたんだ?」

「あの夜…って燃町くんと会った夜?」

「そう、カマチを見つける前日」

「あの日はカマチを探してたんだ。家にいたはずなのに突然いなくなっちゃって…」

「ふーん…カマチはなんでいなくなったんだ?」

風切のスマホを使ってパズルゲームをしているカマチに聞いてみる。

手先器用だなぁ…。

「カナコの家にいると、あいつらに見つかった時にカナコに迷惑がかかるからだよ」

なるほど、あいつら…ガイアは平気でそういうことをする、ということだ。

ガイアは僕を殺そうとする。

ただ、わかっているなら対処はしやすい。

これからは警戒を強める必要があるのかもしれない。

「 ところで、燃町くん。話は戻るけどバイトの時間じゃないの?」

「バイト辞めたんだよ」

「なんで!?燃町くんってお金に困ってるんじゃないの!?」

言い方はどうかと思うが、両親がいない僕は確かに金に困っている。

「辞めた理由は二つあって、一つ目は収入が入ったからだね」

「収入?」

「この前の依頼で50万、そして家を漁った時に見つけた壺を売ってみたところ200万だったんだ」

「200万!?なんで今まで気付かなかったの!?」

「掃除とか苦手なんだよ…。もう一つの理由なんだが…男の僕にメイドカフェはおかしい!」

「メイドカフェ…?」

まぁ、困惑するわ。

「それって、厨房ってこと…?」

「僕も最初はそう思ったよ…」

「じゃあ…ウェイトレスってこと…?」

「……………」

沈黙による答え。

僕の見た目や声は女性と言っても間違いではない。

だけど、メイドカフェで働かせる、しかもウェイトレスはおかしいと思う…。

「バイト先探してる時に、話しかけられて、あれよあれよとウェイトレスやることになって…」

「まぁ、燃町くん…普通に可愛いし…」

そんな話をしてると、玄関のチャイムが鳴る。

「わ、私見てくるね!」

そう言うと風切は玄関に向かう。

一分ほど経って、風切が大きなダンボールを持ってきた。

「宅配だったよ。すごく重かったけど、何頼んだの?」

「何か頼んでたっけ…?」

ガムテープを剥がし、ダンボールを開ける。

瞬間、ダンボールから飛び出した何に僕は首を絞められる。

「ガ………!」

息ができない…!

これは…ロープ…!?

首に巻き付くそれに僕が気づいた途端、ロープは僕の首を離れる。

そして、壁に何かが激突する音。

「ゲホッ…!ゲホッ…!」

壁に視線を向けると、僕の首を絞めていたであろう人物と、その胸ぐらを掴む九尾が立っていた。

「あなた…!よほど地獄が見たいようね…!」

そう言って、九尾は胸ぐらを掴む手とは、逆の手に炎を纏わせる。

「九尾…!それ以上は…」

「降参」

突然、場の空気とは違った拍子抜けする声が聞こえる。

「は…?」

九尾も驚き、胸ぐらを掴む手が離れる。

「間違えた、一時降参。今回は僕の負け」

その声は床にへたり込む中性的人物から発せられていた。

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