私の隣

ここは私立川中高校。

私、氷室陽菜(ひむろひな)は体育館の壇上にて演説をしていた。

「全校の皆さんおはようございます。次期生徒会会長の氷室陽菜です。」

そう、私は2年生の後半から生徒会長を任されている。というのも、この学校の生徒会役員の選出方法は少し変わっていて、1年生の秋ごろに生徒会長の立候補を募り、年明けに2年生後期からの生徒会長を決める選挙が行われる。なぜ選挙と任期の始まりがはなれているかというと、一つは3年生が卒業する前に選挙しておくべきという考えである。

2つ目は選挙で選出されてから任期に就くまでに、現生徒会長とともに生徒会を運営して、直接目で見て仕事を覚えられる点というのがある。つまり、生徒会長の任期は実質的には1年半ということになる。 

 そしてこれが最も大きな点だが、生徒会副会長の選出を生徒会長自ら行う点である。つまり、新学期が始まってから夏休みが終わるまでに副会長をスカウトしなければいけないということになる。

 夏休みが終わるまでに副会長が決まらないと、立候補と選挙で決められる(書記など他の役職は最初から選挙)。生徒会長としての力量を試される最初の場ということ。

 「はぁ」

 無事新学期の挨拶が終わり、自分のクラスへ戻る途中、

 「どうしたの?ため息なんかついて」

 と、心配してくれる友達が言ってくれる。

 「副会長探さないとって考えるとつい」

 ーこの人に副会長を頼むのは…ー

なんて考えるが頭を振って言い聞かせる。

 ー表立って喋るのが苦手みたいだし…ー

 「ありがとう、心配してくれたんですね、嬉しいです。」

 そんなことを言っているうちに教室に着いたので去年仲良くなった彼女と別れて自分のクラスに入り、座席表を確認し、自分の席へと向かった。

 窓際の後ろから2列目、多分他の人なら羨ましがるような席だろう。

 しかし、私は授業に集中しなければならない。私は特待生として学費を全額免除されている。今も働いてくれている母を将来的に楽をさせてあげたい。だから勉強も生徒会も頑張ることを決めている。ちなみに父は私が小学2年生のときに借金を残して消えた。そのせいで母は返済のために稼ぎの良い東京に引っ越さざるを得なかった。もちろん私とともに。だから私は母に恩を返す義務がある。そして、成績を落として迷惑をかけるわけにはいかない。

 しかし、川中高校は都内有数の進学校でライバルたちの実力も半端ではない。勉学で手を抜くわけにはいかないのだ。などと考えながら席に着いたときに後ろの席の人に気づき驚く。そう、私が学業成績で唯一劣る不知火くんだということに。

 後々彼が副会長として私を支えてくれるなんてこともしらずに。

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