第2話:恋人の浮気現場を目撃してしまう
(な、なんだよこの光景は……ゆ、夢じゃないのか……?)
俺は頭が真っ白になりながらもその光景を見続けていった。俺の恋人であるアンジェとクランリーダーのギースは何度もキスをしていっていた。
「ちゅっ……なぁ、アンジェ……今からここでしても良いか?」
「まだ駄目よ。だってまだ午前中じゃないの……そういうのはちゃんと夜になってからね。夜になったらまた私の部屋で沢山愛し合いましょ?」
「はは、わかったよ。それじゃあ夜を楽しみにしているな。ん、ちゅっ……」
二人は楽しそうに抱擁をしながらそんな会話をしていっていた。そして今の会話内容からしてこの二人は今までに何度も愛し合っているらしい……。
(な、なんでだよ……なんで俺以外の男とそんな関係になっているんだよ……アンジェ……)
俺はそんな二人の会話を聞いた瞬間……突然と俺はクラクラと眩暈がしだしていった。まさか俺の恋人がこんな不貞行為をしているなんて思わなかったから……。
「……うっ……あっ……!」
―― バタンッ
「んちゅっ……って、え?」
「……ん?」
「……あ」
突然と眩暈がしだした俺はそのまま床に向かって倒れ込んでいってしまい、その反動で半開き状態だったリーダー室のドアを盛大に開けていってしまった。
するとアンジェとギースはビックリとした表情をしながらドアを開けていった俺の方を見てきた。
「あ……ア、アルス……」
「もしかして……見てたのか? アルス……」
「う……あ、あぁ……全部……見させて貰ったよ……」
俺は眩暈がした状態のまま何とか頑張ってその場で立ち上がっていった。そしてそのままアンジェにこう尋ねていった。
「ア、アンジェ……ギース……お前達は……浮気してたのか……」
「ア、アルス……これはその……え、えっと、ちが――」
「あぁ、そうだよ。俺とアンジェはずっと前から何度も愛し合ってきたんだよ!」
「え? あ、ちょ、ちょっと、ギース!」
「っ……!?」
俺がそう尋ねていくと凄く狼狽えている様子のアンジェに対して、ギースは自信たっぷりな表情をしながらアンジェと何度も愛し合ってきたと高らかに宣言してきた。それはつまり今まで浮気していたという自白だ……。
(ど、どうしてだよ……俺はギースと初めて出会ってから今日に至るまでこの10年間ずっと信頼し続けて来たのに……何でそんなギースが俺の恋人を寝取ったんだよ……)
俺は自信満々な表情でそんな宣言をしてきたギースの事を到底信じられなくて頭がガンガンと痛くなってきた。吐き気も止まらない……。
「ど、どうしてだよ……どうして二人が愛し合ってるんだよ……と、というか俺という恋人がいながら……どうしてアンジェは浮気なんて受け入れてるんだよ……」
「そ、それは……」
「ふん! もう良いだろ、アンジェ! 素直にコイツに思ってる事をぶちまけてやれよ!」
「……ギース……」
「え……な、なんだよそれ? ア、アンジェが俺に思ってる事って……い、一体何の事だよ?」
ギースがフンっと鼻を鳴らしながら唐突にわけのわからない事を言ってきた。俺はギースの言葉の意味がわからなくてポカンとしてしまった。
しかしそんなギースのわけのわからない言葉を受けて、先ほどまで凄く動揺していた様子のアンジェは何故か覚悟を決めた顔をしだしていった。
そしてアンジェは覚悟を決めた表情になりながら俺にこんな事を言ってきた。
「……ごめんなさい、アルス。私はもう……アナタの事を愛してないの……」
「……え?」
俺はアンジェにそう言われた瞬間、また頭が一気に真っ白になってしまった。
「お、俺の事を愛してないって……どうしてだよ……?」
「単純な話よ。アナタに男としての魅力を感じないの」
「男としての魅力……? な、なんだよそれ? い、意味がわかんねぇよ!」
「ぷはは、わかんねぇんなら俺からもっと具体的に言ってやるよ! お前は冒険者としてこの10年間、いつも戦闘には加わらず俺やアンジェの後ろにコソコソと隠れてたよな? モンスターを退治する力が無いとか言って俺やアンジェの後ろにずっとコソコソといるだけなんて……お前は男として恥ずかしいと思わねぇのかよ? そういうテメェの貧弱な所にアンジェはどんどんと冷めていったんだとさ!」
「えっ!? い、いや、でもそれは……し、仕方ないだろ? だって俺は
「はんっ! テメェは何いってんだよ! お前以外の
「い、いや、それは確かにそうかもしれないけど……でも俺は力も体力も全然ないから前衛の才能はない――」
「そうやって言い訳してるのが男らしくねぇって言ってんだよ!! いつも楽ばっかりしやがってよ! このクソボケがっ!!」
「って、ぐはっ!?」
―― ドゴッ!
そう言ってギースは俺の腹部を目掛けて全力で蹴り上げてきた。あまりにも突然の事過ぎて俺はギースの蹴りに受け身を取る事が出来ず、そのまま大きく吹っ飛ばされてしまった。
「はは、やっぱりお前は弱い男だな。こんな軽く蹴り上げただけなのに簡単にぶっ飛ばされるなんてよ。ってか前々から思ってたけどよー……お前は冒険者として向いてねぇよ! このクソザコがよ!!」
「ぐっ……だ、だから俺は……回復士なんだよ……仲間の皆の命を救うのが……俺の役割なんだよ……」
「はは、何カッコつけてんだよこのボケッ! ってか何が
「え……? い、いや、確かに身体の傷はポーションでも回復は出来るけど……でもポーションでは身体の欠損を治す事は不可能だし、ポーションの効果は遅効性だから致命傷の傷を負ったら助からないだろ? だ、だから一概に回復士がポーションに劣るなんて事はいえないぞ……!」
「身体の欠損? 致命傷の傷? それらを回復士は治せるっていうのか? ぷはは! そんな訳ねぇだろ! 何を言ってんだよテメェは!!」
「……え?」
「何そんな惚けた顔してんだよ。いいか? 身体の欠損を治したり、致命傷を完治したりする魔法なんてこの世には存在しねぇんだよ! 回復士が使える回復魔法は
「えっ!? 回復士が使える魔法はその二種類だけだって……?」
「あぁ、そうだろ! だから前衛の仕事が出来ない回復士のテメェはポーション以下のゴミクズ男って事なんだよ! それが理解出来ねぇんだったらさっさと冒険者を辞めろ! このボケカスが!!」
「えっ……って、ぐはぁっ!?」
―― ドゴォンッ!
ギースはそう言いながら倒れ込んでいる俺に向かってもう一度蹴り上げて来た。俺はギースに蹴られた腹部を抑えながら床にうずくまっていった。
「ぐ……はっ……」
「ぷはは! やっぱりお前はクソザコ過ぎだろ!! 早く冒険者なんてやめて故郷の村に一人で帰れよカスが!! この役立たず回復士がよ!! お前なんか要らねぇんだよ!!」
ギースは大きく笑いながら俺に向かってそんな侮蔑的は事を言い放ってきた。ギースに思いっきり蹴られて身体は痛いし、侮蔑的な事を言われてショックも受けてはいるんだけど……でも俺はそんな事よりも気になる事があった。それは……。
(ぐっ……で、でも回復士は二種類の魔法しか使えないってどういう事だ……? それに回復魔法では身体の欠損や致命傷は治せない? いや、そんな馬鹿な……)
どうやら冒険者ギルドにはジョブ一覧本というものが置かれているらしい。俺はそんな本が冒険者ギルドに置かれてるなんて全く知らなかったんだけど……その本には回復士が使える魔法は二種類だと書かれているようだ。
でもその回復士の情報は完全に間違っている。何故なら俺は回復士として使える魔法は三種類持っているからだ。俺が使える魔法は“再生魔法”と“状態異常回復”と……あと一つはもちろん“完全回復魔法”だ。
だから俺はギースが出来る訳が無いと言っていた身体の欠損や致命傷なども治す事が出来るんだ。
そして俺はこの“完全回復魔法”を習得するためにこの数年間必死になって血に滲む努力を重ねてきたんだ……。
(だから俺は……俺は決して今までずっと皆の後をコソコソとして楽をしてた訳じゃないんだ……)
確かに俺は戦闘面では力は全然無いのでモンスター討伐には全く役立たない男だ。他の回復士と違ってメイスを振り回して前衛を担当する事も出来ない。だからギースにクソザコ男だと罵られるのは仕方ない事でもある。
でもだからこそ……そんな非力な俺だからこそ、俺は今まで人一倍努力を重ねていったつもりだ。毎日修行をしてきたし何度も血に滲む努力を積み重ねてきた。
さらにクランの仲間達にお願いして俺の修行に何度も付き合って貰ってきた。俺が修行に付き合って欲しいとお願いするとクランの仲間達は皆いつも皆快く付き合ってくれた。本当に優しくて頼りになる仲間達ばっかりだ。
そしてそんな仲間達の協力と血に滲む努力を積み重ね続けた結果、その努力が実って俺は半年程前に“完全回復魔法”を取得する事が出来たんだ。
それから俺は習得したこの“完全回復魔法”を今まで何度も使用してきた。クランの仲間達が危なくなった時やもちろんギースやアンジェにだって何度もこの完全回復魔法を使用してきた。
そしてそのおかげでこの半年間に最強格と言われてるキングベヒーモスやリヴァイアサン、ニーズヘッグなどの大型モンスターを仲間の命を誰一人として落とす事なく何度も討伐する日々を過ごしてこれたんだ。そんな成果もあって俺達はS級クランに昇格する事が出来たんだ。
(それなのに……それなのにどうしてギースはそんな事を言ってくるんだよ……)
俺は仲間の皆の命を守るために何度も完全回復魔法を使ってきたし……その回復魔法も役に立ってS級クランに昇格出来たというのに……ギースは俺の事を認める事もなくただの役立たずだと侮辱してきた。
(どうしてだよ……俺達は今までずっとお互いの事を信頼しあっていた仲間だったはずじゃないか……それなのに……どうしてそんな侮辱をしてくるんだよ……)
俺は10年近くも一緒に過ごしてきた仲間のギースに今までずっと冒険者として役立たずだと思われていたという事を知って酷くショックを受けていった……。
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