第28話 凪柊萌との関係

 意識が落ちてどれくらいたっただろうか? まさか萌萌にいきなりキスされるとは思わなかった。


 柊という存在がいるのに何を血迷っているんだ?


「……ん? ここは……」

「士郎君。大丈夫!」

「士郎! 大丈夫?!」

「凪と柊? 何で2人がここに居るんだ?」

「お風呂場で倒れたって。萌ちゃんから聞いたのよ。それで家から急いでやって来たのよ」

「最初、聞いた時びっくりしたんだよ」


 凪と柊が心配そうな顔で俺を見つめている。どうやら、萌萌は俺ここに居る事を2人に連絡したみたいだ。


「俺が倒れた? いや。俺は萌萌にいきなり唇…んぐ」

「士郎君。良かった! 目を覚ましたんだね。良かったよー!」

「ちょっ! 萌萌。いきなり抱き付くなよ。そもそも君が俺にキスなんて……ん!」


「へ?」

「萌ちゃん! 何してるの?」


 萌萌は俺に抱き付いた後、風呂場の時の様に俺の唇にキスをしてきた。


「………これでボクの本気分かってくれた? ボクが本当に好きなのは、士郎君のなんだよ。昔から今でもね」


 萌萌は赤面しながら俺の顔を両手で抑え、大きな声で叫んだ。


「萌萌が……いや。萌が好きなのが俺? でもあの写真だと柊と抱き合ってたんじゃあ」

「そんな分けないでしょう。お風呂でも言ったけど、あれは趣味なの! コスプレのね。本屋で出くわした時もその資料を見る為だったし……そんな事より、私が本当に好きなのは君なんだよ。士郎君」


「萌ちゃんが士郎にキスをした?」

「……萌! 士郎君に何をするの? 私だってまだした事ないのに~」


 凪が呆然と俺達を見て、柊は萌の身体に抱き付いて俺から引き剥がした。


「柊。ごめん。士郎君に対するボクの気持ちは本物になっちゃったの……もうこの気持ちを抑えられなくなっちゃたんだ」

「……萌。だ、だからって、人の彼氏にキスするなんて。許される事じゃないでしょう。分かってるの?」

「付き合ってる振りをしているだけなんでしょう? それなら早いもんの勝ちだよ。柊」

「ムカッ! も、萌は昔から私が大切にしている物を直ぐに取ろうとするから嫌いなの!」

「そんなの柊だってそうだよね? ボクの物を直ぐに取ろうとしてさぁ」

「む~! 萌のバカ!」

「なっ? 柊が変な勘違いをしてるからじゃないの?」


 萌にいきなりキスされたかと思えば、今度は柊と萌が口喧嘩をし始めた。


「ね、ねえ? 士郎。これどういう状況? 何でこんな状況になってるの?」

「んー…簡単に要約すると。萌は俺が好きで、それに怒った恋人約の柊が怒ったって感じだな」

「……乙女心は複雑って事ね。納得したわ」


 さすが天然の凪だ。こんな状況でも冷静に状況を見ている。そうか。こんな状況だからこそ、俺は凪に告白する絶好のタイミングじゃないんだろうか?


 そうだ。こういう特殊な状況こそ、一番のチャンスなんじゃないか? 隣には凪が居る……ならば俺はここで決めるべきだろう。俺!


「……凪。こんな時だけどさ。凪に伝えたい事があるんだ」

「な、何よ。士郎、珍しく真面目な顔なんてして」

「ああ、あのな。凪、本当は俺、凪の事が好……」


「「この先はまだ言っちゃダメぇぇ!」」

「ぐお! なんだ。柊、萌! 何で俺の邪魔をする……んぐ」


 柊と萌が俺に抱き付き羽交いにしてきた。


「くっ! 2人共! 俺の邪魔をするな! ここで決めて俺は」

「ボクが告白したのに。応えもせずに何、ゴールインしてるの!」

「士郎君は私の恋人でしょう。何、浮気しようとしているのかな?」


 さっきまで口喧嘩をしていた筈の2人が、俺の告白を止めに入ってきた。


「それは。萌、悪いけど俺は…」

「だ、駄目! 今はその先を言わないで! その先を言われたら、ボクの負けになっちゃうでしょう。勝負はこれからだよ。ねぇ? 柊」

「は、はぁー? ち・が・う・で・しょ・うー! 士郎君はわ・た・しの恋人なの! ねぇ? 士郎君……」

「なっ? 柊。いきなり何して……」


「「あー!」」


 柊は俺に抱き付くと、俺の唇にキスをした。柊の良い匂いが鼻腔に広がる。柊の唇の感触が伝わって来る。


「……これで分かった? 士郎君は私の恋人君なんだからね」

「……柊。俺は……つっ! 萌と柊が俺にキスした? つっ……なんでこんな状況に」


「し、士郎! アンタ。どんだけ女の子をたぶらかすきなのよー!」

「士郎君。ボクの告白の返事は、まだまだ先で良いからね。その間にボクは君を落としてあげるんだから」

「士郎君! 浮気は、めっ! なんだからね」


 今、俺は3人の美少女達に迫られている。


 俺が惚れている女の子。

 俺の恋人という女の子。

 俺に告白した女の子。


 凪、柊、萌の美少女達に心をかき乱す。


 俺はいったい今後どうなってしまうんだろうか? 

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