第7話 疑似恋人の始まり?
《桐生 士郎 幼少期》
「士郎ー! そんな一生懸命に勉強してないで、私と遊び行こうよ」
「……いや。まだ勉強する。そうじゃないと凪ちゃんに吊り合うお
「えー? 関係ないよ。士郎は最初っから凄くて、カッコいいだからさ。ねえ? ヒーちゃん」
「う、うん。士郎君はいつも頑張って凄いよ……ナーちゃんの隣に居てあげる為に凄い頑張ってる。てっ思ってるよ」
「……いや。それじゃあ。足りないんだ。何でもできる天才の凪とずっと入るには、これだけの頑張りじゃあ全然足りないよ。ヒーちゃん」
▽
……ふと。昔の記憶を思い出した。
昔から何でも直ぐにできる様になって進んで行く凪に、追い付く為に必死に足掻いて努力していた時の記憶。
いや、努力は今も影ながらしているんだが。
凪の隣。ナーちゃんの隣に居た髪がボサボサの娘はいったい誰だったんだろうか?
あれは本当に俺達が小さかった時の記憶だ。そんな古い記憶に居た金髪の女の子の名前。
ナーちゃん? つい最近どっかで聞いた事がある呼び方じゃなかったか?
◇
「……好きだ。付き合ってくれ! 凪──」
「……いや。私、凪じゃなくて君の柊なんだけど」
「……は?! ここは?」
「───やっと起きた?」
俺が目覚めると同時に、
そんな
そんな綺麗な髪を抑えながら。その女の子の綺麗な蒼色の瞳のは、俺の瞳と重なり合う。
多分、今、俺はこの娘に膝枕されているのだろう。
愛らしく俺に微笑みかけて来る。小悪魔の様にどこか
「小鳥遊さんが俺を
「何でって……私は君の大切な彼女さん何だよ? 大切な彼氏君を心配しない彼女なんて入るわけないじゃん」
「いや、待ってくれ。さっき皆の前で話したろう。あの告白は俺の間違った告白から始まった……ング?」
「それでも。私はOKしました。だから別れる気なんてありませんからね。私の大切な彼氏君」
彼女は俺の唇を右手の薬指で優しく押さえ付けた。
その続きを聞きたく無いと言いたくないと。
その勘違いを否定されたくないと拒むように静かに俺の口を塞いだ。
まるでこの間違った恋愛関係を解消したくないと無言で訴えるている様だった。
◇
「しかし……おのれ。
「プフッ……高校生が
「私的には? どういう事だ?」
「ううん。こっちのだよ。
「影ながら?……いや。まあ、言われてみればそんな時もある様な。無い様な。」
「そう。
「小鳥遊さんの折檻とか……想像もしたくないな」
「うん。いつも言われるよ」
「言われんのかよ」
「嘘だよー、こんなにか弱くて可愛い私が人に折檻なんてできるわけないじゃん」
「……まあ、確かにな」
「フフフ。でしょう?」
他愛もないと男女の高校生が話す。冗談交じりの話し合い。
昨日、突然付き合う事になって朝の登校、昼休み、放課後デートを経験して、いつの間にかお互い自然体で話せる様になっている。
昔から美人は凪や夏で見慣れている為、小鳥遊さんを見ても正直、緊張感は余りない。
むしろこの屈託の無さが話しやすいまである。
「しかし、俺が落とされた後、俺達だけ置いて帰るとは……凪の奴ー!」
「うーん、とね。むしろナーちゃんは桐生君とずっと居るって騒いじゃって。アーちゃんと夏になんとか説得されて帰っちゃったんだけど」
▽
「やだーっ! 私、士郎の側に入るのぉー! 2人を残して帰りたくない!」
「アホッ! ここ私のバイト先だろう。それに桐生君と小鳥遊さんが付き合ってるのは、学園公認になって……アンタがここに一生に居る所を他の生徒に見られたら色々憶測が飛び交うでしょが」
「イヤー、士郎の家は私の家の隣何だよ? 何で一緒に帰っちゃいけないのおぉ」
「コイツ! 素の力はゴリラ並みか? びくともしないし。
「……了解。手刀をポンッと」
「だから私が士郎を
「……
「うむ。良くやった。褒美を取らす」
「いや。何、ヤってんですか? このアホの子達は……凪さんと言う荷物が1つ増えてしまったじゃないです」
「「あっ! しまった!」」
「……アーちゃん達って、いちをナーちゃんの知り合いなのよね? 扱い色々と酷くないかな?」
▽
「そんな感じで、ナーちゃんは荷物となってお店から追い出されたんだー」
「……アイツも俺と同じ扱い受けてんだな。初めて知ったわ」
「フフフ。でも桐生君もナーちゃんも皆と居る時は楽しそうだけどね」
「……まあな」
「あっ! 私のお
「いや。彼氏君って。あのなぁ、お互いの誤解も解けたんだし、これからは本当に自分が好きな人にさぁ」
「うん! 別れないよ。絶対にね。この間違った告白から始まった。関係は絶対に終わらせない。だから覚悟してね。偽造彼氏君」
「……なんだよ。その偽造彼氏って?」
「んー? 私が創った造語的なやつかな? フフフ」
「楽しそうだな。君」
「うん。楽しいよ。君と居られるとね……それと桐生君。最後までしちゃってたね」
「ん? 何を?」
「───マスドからここまでの帰り道。ずっと恋人繋ぎで私と帰ってた事……じゃあ。また明日。学校でね。バイバイ。桐生君」
「あっ! ちょっと! おいっ──てっ何で最後恥ずかし捨て台詞を言って帰るだよ。ヒーちゃん……あれ? 俺、今、ヒーちゃんって小鳥遊さんの事……あれ?」
俺はそそくさと小走りになりながら歩く、小鳥遊の後ろ姿を見た。遠目では余り分からなかったかったが、その表情は少し赤らんでいる様に俺からは見えた。
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