第31話
《現在ランク:5位/プロ帯:GRAND MASTER まで残り1階級》
VALHYRIA League の第3節――対戦相手は、廃墟と熔岩流が入り混じる極限環境マップ “Wasteland Labyrinth” を得意とする強豪チーム、Team Eclipse。
その主力戦術は「爆発トラップ」と「暗視演出」による錯乱戦法。視界の悪さ × 足元ギミックの連続で、相手を自滅に追い込む。
Team Vanish はこの遠征に向けて、VALHYRIA 本社の特設スタジオに集結した。
大スクリーンにはマップ全体図が投影され、3人は緊張感を持って作戦会議を開始する。
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1. 作戦会議 ― “影分身”戦術の練磨
ホワイトボードには、Wasteland Labyrinth の複雑な地形がペンで描き込まれている。
玲央が最初の説明を始める。
玲央
「Eclipse はマップ中央の『熔岩橋』を起点に、両サイドへトラップを敷き詰めるはずだ。
まずは、熔岩橋の誤魔化し移動で注目を集め、実際の進攻は『影分身ルート』――炭鉱坑道の暗闇通路を使って側面からの奇襲を狙う。」
未来が頷きながら質問する。
未来
「炭鉱坑道って、視界がほぼゼロですよね。そこに飛び込むのは怖いけど……どうやって仲間を誤認させるんですか?」
玲央は、手元のタブレットでルート再生を示しながら続ける。
玲央
「“光分裂グリッド”を使う。未来、君の新スキル『分光ポータル』で自分の幻影を東西2カ所に展開し、相手を攪乱する。
その間に陽斗が本体で坑道内を突破。俺は坑道出口で待機し、二人を迎撃ポイントへ一気に押し上げる構成だ。」
陽斗が得意気に眉を上げる。
陽斗
「いいっすね! 光の“デコイ”で敵を混乱させたら、オレの裏取りも決まりやすくなる。
その後は、『Overdrive Cross』で制圧率を一気に叩き出す流れっすね!」
揃って頷く3人。ホワイトボードには「影分身ルート」「分光ポータル配置」「坑道出口ポイント」「Overdrive Cross 発動条件」が赤ペンで記された。
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2. 特訓 ― 暗闇通路とトラップ回避
作戦の鍵を握るのは、陽斗の“炭鉱坑道突破力”と未来の“分光ポータル精度”。
VALHYRIA 特設スタジオ内の専用VRシミュレーターで、夜通し暗闇ルートの練習が行われる。
• 陽斗のトレーニング
• 暗視無しの坑道内を最速で駆け抜ける「フラッシュステップ」。
• 計測結果:平均速度 4.7 m/s、トラップ反応時間 120ms。
陽斗はタイムアタックモードで何度も走り抜け、50回目にようやく3分切りを果たすとガッツポーズを見せた。
• 未来のトレーニング
• 分光ポータルをマップ東西2点に同時展開し、敵AIを誘導する練習。
• 成功率:初回 60% → 30分後 92%まで向上。
未来は目を細め、狙った位置に的確なポータルを設置すると、小さく息を吐いた。
未来
「この位置なら、相手は坑道だと思い込むはず。あとは玲央くんと陽斗くんが合流してくれれば…!」
練習の最後に、3人はシミュレーターを止めて深呼吸を交わした。
高難度のルートをクリアできた手応えは、確かなものだった。
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3. 心理戦準備 ― メンタルギアの調律
翌日――試合前の“メンタルルーム”では、コーチ陣による最終調整が行われる。
特注のヒーリング音楽をバックに、以下のプログラムを敢行。
1. シンクロリズム呼吸
• 3人一緒にカウント呼吸(呼吸数を揃え心拍を同期)→チーム一体感を強化。
2. 臨界トリガー想起
• Fortune Citadel での勝利、Wasteland Labyrinth での連携成功をイメージし、脳内報酬系を活性化。
3. 動線ビジュアライゼーション
• それぞれ自分のルートを頭の中で“歩く”訓練。実際のゲーム動線よりも細かく時間をかけて反復。
コーチの佐藤が仕切る。
佐藤
「ここまでやるチームは少ない。君たちの“集中力”が、勝利のカギになる。
あとはリングサイドの声援を味方に、恐れずに進めばいい」
コーチの言葉に、3人は軽く頷いた。
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4. 前夜の結束 ― 小さな儀式
夜更け――特訓を終えた後、自室に3人が集まる。
陽斗が小さな木箱を取り出した。
陽斗
「これ、Storm Challenge の賞品でもらった『Re:Vanish ブレスレット』っす。
みんなで一つずつ、交換し合って身につけようぜ!」
箱の中には、チームロゴ刻印の金属製ブレスレットが3つ。
3人は互いの手首にそっと巻きつけ、固い握手で結束を確かめ合った。
未来
「これで、私たちは“いつでも”繋がってる。距離が離れても、心は一つだよね」
玲央
「ああ。俺たちの“盟約”は、このブレスレットと共にある。明日、どんな荒野でも、共に勝利を刻もう」
夜空の月が、静かに三人を見下ろしているようだった。
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