第28話

《開幕前夜の静寂》


VALHYRIA League 第2節――宿命の再戦を控えた夜。

Team Vanish の3人は、それぞれの思いを胸に専用ルームに集まった。

大画面モニターには、次節マップ “Fortune Citadel” の準備映像が流れている。

• 迷宮のように入り組んだ石橋と塔群

• 上下左右に設置された攻防拠点

• 中央にそびえる高所の防衛ポイント


「――見れば見るほど、Sky_Blue は得意そうなマップだ」

玲央が低く呟く。対戦相手は、プロ最強候補 Sky_Zero 率いる Team Sky_Blue。かつて敗れ去った相手であり、最高の栄誉を取り戻すための最終関門でもある。


未来がそっと肩に手を置いた。

「大丈夫。私たちはここまで来た。私も、陽斗も――玲央くんと一緒に、必ず誰よりも強く戦うよ」

陽斗は金属製のコントローラーを握りしめながら笑った。

「楽しみっすね。世界ランク1位の Sky_Zero と、本気でぶつかれるなんて。最高の刺激だぜ!」


深夜――Team Vanish は、最後の練習セッションを開始した。



■戦術会議:Fortune Citadel 攻防構想


ホワイトボードに描かれたマップに、3人は戦略を書き込んでいく。

1. 開幕ダッシュ戦術

• 玲央:高所への最速アクセスルート(北塔1→階段→屋根渡り)

• 未来:支援ポータル設置による即時リスポーン支援

• 陽斗:側面の隠し通路から相手後衛への奇襲

2. 中盤拠点制圧ライン

• 北塔防衛/中央橋制圧/南砦確保の“三段防衛”

• 未来のAOE回復で維持、玲央と陽斗が連携で迅速制圧

3. 終盤決戦フレーム

• 相手の耐久ゲージを削りつつ、残り時間30秒で全力押し込み

• ラスト10秒に「Overdrive Cross」を使用し、一気に制圧率を75%へ誘導


「Sky_Blue はきっと、この屋根ルートを警戒してくる」

玲央が指さすのは、マップ北西角の屋根越えポイント。

「なら、そこを罠に使おう。お前が囮になって屋根で待機。僕は裏取りルートから入る」

未来と陽斗が頷く。



■特訓:高所ルート反復練習


実際のFortune Citadel は、細かな足場移動とジャンプキャンセル、壁蹴りの精度を問われる。


玲央は、夜が白み始めるまで3時間にわたって以下を繰り返した。

• 屋根→階段→城壁ジャンプ:最速経路で6.2秒

• 屋根待機後の壁蹴り回避:50ミリ秒の許容タイミング

• 落下キャンセル連携:□△○キャンセル→空中追撃□□


未来も同じく、支援ポータルの最適配置ポイントを磨いた。

陽斗はマップ南東の隠し通路に関するバグ抜け走法を探し出し、2つの奇襲ポイントを確立した。



■心技体 ― メンタルルーム


昼間――Team Vanish はコーチ陣によるメンタルルームでセッションを受けた。

• 深呼吸法:緊張時に3秒息を吸って5秒吐く

• イメージトレーニング:Sky_Zero との決着場面を30回反復想起

• ポジティブルーティン:試合前に3人で手を合わせ、「Re:Vanish」の掛け声


コーチの山田が言う。

「最高の準備をした上で、相手は相手。君たちは君たちのベストを出すだけだ。楽しんでこい」



■前日最後の会話


夜、部屋で最後に集まった3人。

窓の外にはVALHYRIA Arena のライトが遠くに瞬く。


未来が静かに口を開く。

「最初は、ただ追いつきたかった。次は、追い越したい」

陽斗が笑って言う。

「この3人で、Sky_Zero を超えたら――伝説になるっすね!」

玲央は小さく頷き、拳を握りしめた。


「――明日。俺たちは、“宿命”を乗り越える。 Re:Vanish は、ここから本当の頂点へ向かうんだ」


そして3人は、夜明けの前に静かに眠りに就く。

明日、すべてをかけた一戦が始まる。

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