第11話

《現在ランク:セミプロC3》


昇格戦から数日。

玲央たち「Vanish」の名は、徐々に注目を集め始めていた。


SNSや配信サイトでは、彼らのコンボ集や連携技が切り抜かれ、「今最も勢いのあるセミプロチーム」として話題に。

未来の正確無比なサポート、陽斗のトリッキーな立ち回り、そして玲央のリーダーシップと爆発力――


「次の大会、“Storm Challenge”にも出るらしいぞ」


「またあのチームが見れるのか……楽しみだな」


ネットではそんな声が飛び交い、彼らの“物語”は、誰かにとっての“希望”となり始めていた。



ある日の夜。玲央の自室――


コンソールの電源を入れると、1件のメッセージ通知が点滅していた。


【From:VALHYRIA公式】件名:スカウトのご提案】


「……スカウト?」


玲央がクリックすると、画面にはこう書かれていた。


『神谷玲央様

弊社プロチーム「VALHYRIA」では、貴殿の近年の試合データと成長曲線に注目し、正式にスカウトの意向をお伝えいたします。

つきましては、近日中に弊社チームとの面談機会を設けたく……』


玲央は目を見開いた。VALHYRIA――それは、かつて自分が所属していたプロチーム。

そして、敗北と共に“契約解除”となった過去の場所でもある。


「……今さら、俺を?」


メッセージの最後には、こう添えられていた。


『再起の炎、見させてもらったよ。次は、もう一度一緒に――』


震える手でコンソールを閉じた玲央は、深く、深く息を吐いた。



翌日、カフェに集まった3人。


「スカウト……それって、VALHYRIA?」


未来が目を丸くする。


「えっ、あの大手? 玲央くん、すごいじゃん!」


「いや……すごいというか、複雑でさ。前に“切られた”チームだから」


陽斗はストローをくわえたまま、不満げに言う。


「んで?どうすんすか?戻るんすか?」


玲央は黙っていた。

その沈黙に、未来が静かに言葉を乗せる。


「……玲央くん。私はね、チームとして玲央くんと一緒にいたいって思ってる。

でも、玲央くんがどうしたいのかが一番大事」


玲央はゆっくり顔を上げる。


「……ありがとう、未来。陽斗。俺、ちゃんと考えて、決めるよ」


その瞳に映るのは、過去ではなく“未来”だった。



その夜、玲央は再びコンソールを開き、「VALHYRIA」との面談にログインする。


画面の向こうには、見覚えのある男――VALHYRIAの現マネージャー、倉敷がいた。


「……久しぶりだな、玲央」


玲央は無言で頷いた。


「お前の“今”を見てたよ。強くなったな。だが、俺たちはもっと上を目指している。……戻ってこい、VALHYRIAに。条件は前回より遥かに上だ」


「……今の俺には、仲間がいる」


「そいつらごと引き抜く選択肢もある。“Vanish”としてプロ契約もできる。

ただし、プロの世界は甘くない。お前に、その覚悟があるか?」


玲央は一瞬、迷い――そして、口を開いた。


「……答えは、すぐには出せない。でも、あんたが言った通り、“覚悟”は、もう決まってる」

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