第9話

勝利から一夜明けて。


玲央の元には、いくつものフレンド申請とメッセージが届いていた。


「昨日の試合見ました!3人連携、すごかったです!」

「Vanishってチーム、要チェックだな」

「プロ帯の“神谷玲央”が戻ってくるかもしれないってマジ?」


玲央はひとつひとつに目を通しながら、ふっと笑みを漏らす。


「……少しずつ、戻ってきてるな」


けれど、彼の中に“慢心”の二文字はなかった。

RayZとの戦いで見えた“限界”も、“可能性”も、すべて次の糧になる。



その日の練習後、未来がぽつりと言った。


「ねえ、玲央くん。私、あの瞬間、本当に震えてたんだ」


「どの瞬間?」


「“いまだ”って言ったとき。玲央くんの声が、本当に頼もしくて……“あ、この人なら信じていい”って思った」


玲央は、少し照れたように目を逸らす。


「……言葉にすると、恥ずかしいな」


「ふふ。私もだけどね」


陽斗が肩をすくめる。


「なんかイチャついてます?オレ、空気っすか?」


「違う違う、お前は必要だって」


「マジすか!?じゃあ今度、みんなで飯でも行きます?」


玲央と未来が顔を見合わせ、同時に笑った。


「……悪くないな」



夜――


玲央はひとり、かつての試合の録画を見ていた。


Storm Cup決勝戦。

あの敗北の記憶は、今でも焼き付いて離れない。


「……次は、勝つ。あの日の自分に、胸を張れるように」


静かに、拳を握る。


そして画面を切り替え、次のランク戦を開始する。


現在ランク:アマチュアS3


“昇格戦”が、近づいていた。

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