第12章:揺れる心

展示は1週間続き、連日多くの来場者で賑わった。美月と悠真は会場に常駐し、来場者との対話やメディアの取材に対応した。


美月は人前に立つことに慣れていなかったが、悠真の自然な振る舞いに支えられ、徐々に自信をつけていった。


ある日、美術雑誌の記者がインタビューでこう尋ねた。


「佐倉さん、高瀬さんの写真とコラボしたことで、どんな変化がありましたか?」


美月は少し考えて答えた。


「悠真……高瀬さんの写真には、被写体の本質を捉える力があるんです。それに触発されて、私も自分の絵で『本当の自分』を表現しようと思えました」


記者が頷く中、悠真が微笑みながら付け加えた。


「美月のイラストは、俺の写真に感情をくれた。彼女の光と影が、俺の作品を完成させてるんだ」


その言葉に、会場から小さな拍手が起こった。


美月は顔を赤らめ、胸が熱くなった。


だが、展示3日目、遥が再び会場に現れた。


彼女はギャラリーのオーナーと話し込み、展示の方向性について提案を始めた。


「この展示、もっと現代アートの要素を強くしたら、海外でも注目されるわよ。佐倉さんのイラスト、素敵だけど、ちょっとポップすぎるんじゃない?」


遥の言葉は、まるで美月の存在を軽視するようだった。美月は黙って聞いていたが、内心では自己否定感が再燃していた。


やっぱり、わたし、悠真のレベルに合ってないのかな……?


その夜、悠真と美月は会場を片付けながら、静かに話した。


「美月、遥の言うこと、気にしてる?」


悠真の声に、美月は一瞬言葉に詰まった。


「うん、ちょっと……。彼女、悠真の過去のこと、たくさん知ってるよね。わたし、なんか、置いてかれてる気がする」


悠真は彼女の手を握り、真剣な目で言った。


「美月、遥は過去だ。君は、俺の今であり、未来だ。信じて」


その言葉に、美月の心は揺れた。悠真の瞳に映る自分は、愛されている人間に見えた。


だが、遥の存在と、母との再会の記憶が、彼女の心に影を落とし続けていた。

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