第3話 イメチェン
トリスのチートっぷりに少し頭痛がした気がするけどまあ良いや。
とりあえず、当面の目標は冒険者としての実力を上げる事と、学園に入学するための準備といった所だろう。などと考えていたところ、猫耳メイドが戻ってきたらしい。
「トリス様~起きてますか~」そんな言葉と同時に、僕の返事を待たず猫耳メイドは部屋に入ってきた。(なんか滅茶苦茶馴れ馴れしいな、コイツ。友達にだってこんな態度はとらないぞ、僕は。友達なんて全然いなかったが)
「ああ、起きている。もう体は万全だ」
「ん。そっすか、それは良かった。いや~もしそのまま死んでたらあーしのお仕事無くなるところだったんだから、ほんと頼みますよ。それじゃ失礼します」
「おい、ちょっと待て」
「なんスカ?もしやこの超絶美少女猫耳系メイドのナーロちゃんに手を出そうとしてるわけじゃないっすよね?いや無いな。というわけで、失礼します~」
ガチャと音を立ててドアが閉じた。
僕は動揺でベッドから動けもしなければ、言葉も出なかった。しかも去り際に「こんな容姿じゃ、ね....」なんて呟いて行きやがった、あのメイド。
ああ決まってしまった。今すぐにやらなければいけない事が出来てしまった。あの猫耳メイド、ナーロを分からせなくては。
分からせると言っても、暴力でという事では無い。そもそも使える相手が、病弱な上に、前髪が長いなんて結構厳しいものがあるよな。俺も主人がカッコ良かったり、可愛かったりするなら、病弱でも心から忠誠を捧げられるだろう。
なので、髪の毛を切ります。バッサリ切ります。最終的にはバッサリだけど、とても慎重に少しずつ切る。
◇
髪の毛切り終えた。もちろん鏡を見ながら切ったが、改めて凄いイケメンだと思う。これならナーロの態度もそれなりになるだろう。僕は勢いのままナーロを探し、その姿を庭で見つけた。
「おっ、ナーロここに居たのか、探したぞ」
「おや、その声は愛しのご主人タマじゃないですか、もしかして襲いにでも来ま....え?」
そう口にしかけナーロは固まった。それも当然、招魂するより前のトリスは面倒事をできる限り避けるために、顔を隠していた。そしてその対象は自分以外の全てで、顔を全て見せたのは、母親だけだった。
「あ、あれ?ご主人タマが居ないなぁ、声はしたのになぁ」そう言いながらナーロはキョロキョロと辺りを見回す。
そんなナーロに僕は近づいて頭を片手で鷲掴みにした。
「おいおい、キミの愛しのご主人タマはこっちだぞ」ギギギと音を立てる様に、ナーロの首をこちらに向けさせた。
途端にナーロは、顔を真っ赤にして早口で「い、いやあの前髪が無駄に長くて、病弱だったせいで話し方もいかにも気弱、全然活動的じゃなくて、で....やさ...おも...があって..んな態度でも....くれる人がこんなイケ..なんて....」後半は声が小さくて全てを聞き取ることが出来なかったが、顔を真っ赤にした時点で僕の勝ちみたいなものだろう。
だが何故かは知らないが、最後の最後で表情がすごく曇った気がした。
ナーロは深呼吸をし、
「それで愛しのご主人タマが超絶美少女猫耳系メイドに何の用ですか?」
「大事な話があってな。」
「まさか結婚ですか!私たちまだ付き合ってもいないのに結婚は早くないですか?」
「少し黙ろうか....」 魔力が冷気になって漏れ出した。
「ヒエッ....」
「これから言うことは冗談ではない。」
「....」
「今回数日寝込んだ前と後とで、僕はほぼ別人となった。つまり君ももう此処に縛られる必要は無くなったという事だ。」
「え..」
「そしてこれからは、自重す「ちょっと待ってください」」
「ちょっと待ってください。別人って言うのは何となく雰囲気から分かります。前のご主人なら絶対に髪は切らなかったと思います。ですが、此処に縛られる必要が無くなったって言うのはどういう事ですか!」
僕はナーロが何を言いたいのか良く分からず、少しの間黙ってしまった。
「私はクビってことですか?何が駄目だったんですか?そんなに気に入らなかったんですか?どういう事なんですか?ご主人様!!!」
「クビって事ではない。辞めても良いということだ。それに駄目だったことも、気に入らなかったことも特には無い。嫌ではないかと、つまらなくはないかと考えた結果の発言だ。だから、そう泣かないでおくれ」
「嫌なわけ無いじゃないですか、つまらないなんて絶対にありえません。ご主人のメイドを辞めることの方が、嫌だしご主人が居ない生活の方がつまらないに決まっています」そうボロボロと大粒の涙を流しながら言い放った。
「あ、ああそうか。メイドの仕事は給金も高いしな。そういう事なら今後もよろしく頼むよ、ナーロ」
「はぁ....それで先ほどは被せてしまってすみませんでした。何を言おうとしていたんですか?」
「これからは、自重するのを辞めようと思っていてね」
ナーロは首を傾げ頭の上に?を浮かべていた。
「王位継承の件が大体終わったからこれからは、自由に生きようと思ってね。ついてきてくれるかい?」
「三食昼寝三時のおやつもつけてください」
「欲張りめ。だがそれで構わん」そう言って僕はナーロの頭を撫でた。実は初めからケモミミが気になってしょうがなかったのだ。
するとナーロは顔を真っ赤にして、手を払いのけ「ご主人のエッチ!」と言い放って逃げて行った。
「なんで?」
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