第11話 近づく距離、届かない思い
その日も、めぐみんとカズマは一緒に冒険から帰る途中だった。
「ふぅ、今日も疲れたな……」
「そうですね。もう少しで宿屋に着きますし、ゆっくり休みましょう」
でも、何かが違った。
いつものように並んで歩いているはずなのに、今日はどこか空気が重く感じる。
カズマはちらっとめぐみんの顔を見たが、彼女は少しうつむき加減で歩いている。その様子に、カズマはまた気になることがあった。
「めぐみん、どうした? 何かあったのか?」
めぐみんはすぐに顔を上げたが、その目はどこか遠くを見ているようだった。
「別に……何でもないんです。でも、カズマには言わないほうがいいかと思って」
「……お前、そんなの言わなくてもわかるよ。俺の顔を見れば、わかるだろ?」
めぐみんは驚いたようにカズマの顔を見た。
それから少しだけためらいながらも、口を開いた。
「……カズマ、実は……私、最近少し、怖いんです」
「怖い? 何が?」
めぐみんはカズマを見つめてから、ゆっくりと答えた。
「……私、カズマと一緒にいることが、幸せすぎて。でも、その幸せが、いつか消えてしまうんじゃないかって思うと、すごく怖いんです」
カズマはその言葉に驚き、そしてどこか胸が締めつけられるような感覚を覚えた。
「……そんなの、心配しなくていいよ」
「でも、もし私が――」
「お前が何かを失っても、俺がちゃんと守るから」
カズマのその言葉に、めぐみんは少し驚き、そしてふわりと笑顔を浮かべた。
「守るって……あのカズマが、ですか?」
「お前が不安なら、俺がその不安をなくしてやるよ」
めぐみんはその言葉に心を少しだけ軽くしたようだったが、すぐにまた少しだけ真面目な顔をして言った。
「……でも、カズマも怖くないですか? 私、いろいろと未熟だし、何かと迷惑をかけてしまうことが多いと思うんです」
「お前が未熟だとか、迷惑だとか、そんなの全然関係ないよ。俺だって、めぐみんと一緒にいることで学ぶことだって多いしな」
「……でも、私は――」
「お前は、ただそのままでいてくれればいい。迷惑だとか、そんなことを考えずに、俺と一緒にいてくれれば、それで十分だ」
めぐみんはその言葉にじっと耳を傾け、そしてふっと表情を和らげた。
「……カズマ」
「ん?」
「ありがとう、そう言ってくれて。少し、気持ちが楽になりました」
カズマは軽く肩をすくめて言った。
「まあ、俺が言いたいのは、何かあっても一人で抱え込むなよってことだ。俺がいるんだから、頼ってくれ」
めぐみんはその言葉に、目を細めて笑った。
「……わかりました。じゃあ、たまには頼らせてもらいますね」
その言葉に、カズマも少しだけ安心したような気がした。
ふたりの間に流れる空気は、どこか穏やかで、温かかった。
お互いの気持ちが、少しずつ、確かに交わり始めているように感じられた。
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