第34話 弁も、いとかしこき博士にて

【訳文】

 右大弁も、とても優れた博識ある者で、相人と言いかわしたことは、大変興味深いものであった。漢詩などを作りかわして、今日明日にでも帰ろうとする時に、このように素晴らしい人に対面した喜びや、別れるのは悲しくなる心映えを、相人が面白く作詩したのに対し、光る君も、とてもしみじみと心を打つ詩句をお作りなさったので、相人は限りなく褒めて、素晴らしい贈り物を捧げる。日本の朝廷からも、多くの物をお与えになる。自然と噂が広がって、帝はお漏らしになさらないけれど、東宮の祖父大臣などは、いかなることなのかと、疑っているのであった。



「高麗の相人との別れです。贈り物を贈り合っています」

「ここでも光る君は漢詩の優れた才能を見せるで」

「このことは春宮の祖父大臣、つまりは弘徽殿側に疑われてしまうで」

「今回は源氏物語の二次創作について話します」

「まあネタバレになるんやけど、『源氏物語』の最終巻「夢浮橋」では薫と浮舟の恋の終盤を描くんや。物語は大団円を迎え、余韻もあるんやけど、え、これでしまいなん? って思う読者もいたんや」

「それで鎌倉時代に『山路の露』という書が何者かによって書かれました」

「そこには薫と浮舟の再会が描かれるんやけど、そこまで進展はしないんや」

「「思ひやれ山路の露にそぼち来て また分け帰る暁の袖」という薫の和歌がタイトルの元になっています」

「後は室町時代に書かれたとされる『雲隠六帖』とか」

「「雲隠」では、本編では曖昧になっていた光源氏の出家や死が描かれます」

「西山で仏道に専念する朱雀院のもとに赴き、朱雀院が亡くなると源氏も出家、最後は姿を消すんや」

「死が詳細に語られないところは本編と同じですね」

「「巣守」「桜人」「法の師」「雲雀子」「八橋」は「宇治十帖」の後日談やで」

「匂宮が天皇になっていたり、中の君は皇后になり、薫は内大臣になっています」

「出家した浮舟を還俗させ妻にしてるで」

「後は江戸時代の本居宣長の『手枕』があります」

「光源氏と六条御息所の馴れ初めが描かれているそうやで」

「物語の語られていない部分を自分で補完したり、昔から文学オタクはいたんですね」


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