第33話 そのころ、高麗人の参れるなかに
【訳文】
その頃、高麗人が来日した中に、優れた人相見がいたのを帝がお聞きして、宮中に外国人をお召しになることは、宇多天皇の御戒めがあるので、たいそう人目を忍んで、光る君を鴻ろく館に遣わした。御後見役のようにしてお仕えする右大弁の子のように思わせてお連れ申し上げたところ、人相見は驚いて、何度も首を傾げて不思議がる。
「天皇となって、帝王の最高の地位に昇るべき相がおありの方だが、そういう方として占うと、国が乱れ、民が苦しむことがあるかもしれません。朝廷の柱石(大臣や摂政、関白)となって天下の政治を補佐する方として占うと、またその相が違うようです」という言う。
「高麗人に光る君を占ってもらっています」
「その高麗人は渤海の人だと言われているで」
「渤海は六九八年建国、九二八年滅亡、現在の中国、北朝鮮、ロシアに当たります」
「宇多天皇の御戒めは、宇多天皇が譲位するにあたり、新しい帝の醍醐天皇に与えた様々な心得のことやで」
「その中に外国人と直対すべからず、と書かれています」
「鴻ろく館は、来日した外国人を接待し宿泊させるための宿舎で、七条朱雀にあったで」
「右大弁は太政官右弁官局の長官です。兵部、刑部、大蔵、宮内を管轄します」
「ちなみに左大弁は中務、式部、治部、民部の四省やで」
「政治的手腕のある学者出身の者が任じられます」
「この高麗人の予言は聖徳太子の伝説を元にしている説があるで」
「百済の僧が来日し、聖徳太子が赴くと「那の童子は是れ神人なり」と言い、跪き合掌し、聖徳太子を称えたそうです」
「光る君は天皇になると国が乱れ、民が苦しむと占われるで」
「ネタバレになってしまうのですが、光源氏は准太上天皇になります」
「これは地位や称号ではなく、あくまでも待遇なんや」
「光天皇は実現しませんでした」
「光源氏は天皇になりたかったんやろか」
「実は源氏の息子である冷泉帝が即位した時「思ひのごとうれしとおぼす」と漏らすのです」
「自分は天皇になれないのだと天皇への即位を断念した気持ち、息子が天皇になって嬉しい気持ちが表れているなあ」
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