8 荒涼とした詰んだ大地

 見渡す限りの砂の大地。

 確かに魔物は見当たらない。

 だが、人もいない。いや生き物がいるかもわからない。

 生物だけでなく、木も草もない、水もなさそうだ。

 こんなところに放り込まれて、人は、数日も生き延びられないだろう。


「いやー、これまた見事に積んだ世界だね。どうしようか」


 彼女は、横で呆然としている彼に笑いかけた。


「どうしようか、じゃないですよ。何でボクまで連れてきてるんですか!」

「神も一緒なら戻れないってことはないかなと」


 彼は首をひねる。


「いや、おかしいな。そもそも、どうしてボクがついてきているんです。こんな風に設定した覚えはないのに」


 彼は、腰に手をやろうとして、すぐにその手を引っ込めた。

 まるで、やってはいけないことのように。


「どうしたの?」

「いえ、何でもありません。」


 いつまでも腰から目を離さない彼女に、彼は大きくため息をついた。


「ここに3つのボタンがあるでしょう。これを押すことで、設定を変えられるんです」

「その横にあるダイヤルは?」

「これはアクセサリーですよ。いまどき、ダイヤルを回す電話もないでしょう」

「それもそうね」


 なるほど、と彼女は納得したようだ。


「では、こんな所にいつまでいても仕方ありません。次の世界に向かいましょう」

「次はこんなじゃないんでしょうね?」

「次の世界は、魔物もいますが平和ですから」


 そう言って、彼は腰に手をやり、彼女から見えないように操作をした。

 彼女が消えると同時に、彼はほくそ笑む。


「いってらっしゃい。世界は平和ですが、送る場所は平和とは限りませんけどね」

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