にゃいほん

あまるん

猫が端末の上にいる

 ここ数日仕事の時間になっても猫が携帯端末に来なくなってしまった。

 元々うちの猫は茶トラで仕事熱心だ。こたつに座ると必ず膝に乗って携帯端末近くに来てくれる。

 こちらがコーヒーを飲んでるうちに、決済や業務連絡の返信などのルーティンワークを片付けて一通り環境を整えた後は膝で待機しててくれる。

 茶トラ猫はゴロゴロ音も高く、端末の内部環境を修繕してくれるし、体温が端末の電源の一部になる。

 仕事が溜まると自ら人間に教えてくれるので在宅ワークも快適だった。


 元々茶トラ猫は隣の家を縄張りにしてる珍しいサビ猫柄の母が四匹の子猫を隣の家に納入した子だ。ミルクを飲み終わった子猫の頃から人間の仕事を手伝っている。


 茶トラ猫は隣のおじさんと一緒に軽トラに乗って畑に行き、農業用ドローンを飛ばしたり、近くに来るハクビシンやたぬきなどの害獣を追い払ったりしていた。

 夜は猫としてたくさん子供を作ったりしていたようだ。ただ今は病気をしたため、在宅ワーク専門の僕の家に引き取られた。

 その時、僕の家には他の猫もいるので去勢してしまった。


 猫カフェのように猫が屋内用端末を操作してるところにいたわけではないので、在宅ワークは手伝わないだろうなと覚悟してたが、今では一番仕事をしている。

 その主力が仕事を辞めてしまったので成果が落ちるのは当然だ。


 端末と非接触でデータをいれる猫を飼うには人間も覚悟がいる。勿論環境も整えなければだし、猫が病気になったらお金もかかる。犬のように常に指示通り動くわけでもない。

 ただ猫は犬のように吠えなくてもゴロゴロ音でも端末操作ができるので屋内であれば猫の方が静かに仕事ができる。今では一般に屋外であれば犬、屋内は猫が主力で操作する端末というのが定番とよく言われるが、一応専門家としては、土木や林業分野は犬、ハウス栽培や工業分野、いわゆるホワイトカラーは猫、と言い換えたい。

 しかし茶トラ猫の不満を解消できないと、仕事が進まない。そこで僕がXを見ると猫からSNSにメッセージが来てた。

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※猫の新作です。お納めください。

 そういうことか、とやっと僕は納得した。

 どうもここ数日の僕の外出先での猫に対する発言が茶トラ猫の仕事に対する意欲を削いだらしい。

 確かにうちの猫は元々自分を人間だと思っている。仕事もしているし、遊びもする。人間と言葉も交わす。それなのに猫はずっと寝ている、脱毛がすごくて大変だ、などと安易な発言をしてしまった。

 元々僕と端末もリンクしてるし猫も同じだ。それに反応して、猫にデータとして僕の不用意な発言が伝わったようだ。

 僕は猫に謝罪を送り、快適な環境の約束やブラッシング頻度を上げることなどいくつかの約束をした。

 茶トラ猫はこたつから出てきて僕の膝に乗った。ひっくり返ってまたお腹を見せる。ゴロゴロ言ううちに仕事が進む。一通り仕事が終わると猫は今度は遊べとおもちゃの方に歩いて行った。

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