追放された少年、最強の師匠たちと出会って魔王を倒す

katura

追放の日

「――カイ、お前は今日限りでパーティから抜けてもらう」


その言葉は、焚き火の火がぱちりと弾けた音とともに、あまりにもあっさりと告げられた。


「……え?」


意味が分からず、カイはただ立ち尽くした。


パーティリーダーのガルドは、気まずさの欠片もなく、冷たい視線をカイに向けている。


「悪いが、お前に戦力としての価値はない。訓練も努力もしてたのは分かるが……才能がなかったな」


「……そんな、俺は、まだ……」


「もう決まったことだ。今後の旅路は、お前抜きで進める」


言葉を挟もうとしたカイを制するように、ガルドは手を振った。隣にいた魔法使いのリリーも目を逸らし、弓使いのジークは気まずそうにカイから距離を取った。


誰一人、彼を庇わなかった。


「……わかったよ」


それだけ言って、カイは立ち上がる。重たい旅支度の袋を背負いながら、誰もいない夜の森へと歩き出した。


背中に、誰の声もかけられることはなかった。



「寒っ……。なんで俺、こんなことに……」


吐く息は白く、雪がちらついている。焚き火もなく、食糧もほとんど持たず、カイはただ凍える山道を歩いていた。


パーティにいたときは、あんなに努力したのに。剣術も、魔法も、人の何倍も練習して……それでも“才能がない”と決めつけられて、捨てられた。


「くそっ……! なんなんだよ、才能って!」


怒鳴るように叫んだその瞬間、足元の雪が崩れた。


「うわっ……!?」


気づいたときには、身体は宙に浮いていた。崖だった。体が宙を舞い、そのまま木々の合間に転がり落ち――


――気を失った。



「……ふむ。久々に面白そうなガキが落ちてきたな」


「この子、生きてるわよ。運だけは良いみたい」


「いや、それだけじゃない。……この子、持ってるよ。凄まじい“素質”を」


――彼の周囲には、三人の人影があった。


鋭い眼光の剣士。浮遊する魔力の衣をまとう美女。そして、巨大な黒竜の姿をした何か。


カイはまだ気づかない。


この瞬間から、彼の運命が――“世界を変える”ほどの転機を迎えていたことに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る