追放された少年、最強の師匠たちと出会って魔王を倒す
katura
追放の日
「――カイ、お前は今日限りでパーティから抜けてもらう」
その言葉は、焚き火の火がぱちりと弾けた音とともに、あまりにもあっさりと告げられた。
「……え?」
意味が分からず、カイはただ立ち尽くした。
パーティリーダーのガルドは、気まずさの欠片もなく、冷たい視線をカイに向けている。
「悪いが、お前に戦力としての価値はない。訓練も努力もしてたのは分かるが……才能がなかったな」
「……そんな、俺は、まだ……」
「もう決まったことだ。今後の旅路は、お前抜きで進める」
言葉を挟もうとしたカイを制するように、ガルドは手を振った。隣にいた魔法使いのリリーも目を逸らし、弓使いのジークは気まずそうにカイから距離を取った。
誰一人、彼を庇わなかった。
「……わかったよ」
それだけ言って、カイは立ち上がる。重たい旅支度の袋を背負いながら、誰もいない夜の森へと歩き出した。
背中に、誰の声もかけられることはなかった。
◇
「寒っ……。なんで俺、こんなことに……」
吐く息は白く、雪がちらついている。焚き火もなく、食糧もほとんど持たず、カイはただ凍える山道を歩いていた。
パーティにいたときは、あんなに努力したのに。剣術も、魔法も、人の何倍も練習して……それでも“才能がない”と決めつけられて、捨てられた。
「くそっ……! なんなんだよ、才能って!」
怒鳴るように叫んだその瞬間、足元の雪が崩れた。
「うわっ……!?」
気づいたときには、身体は宙に浮いていた。崖だった。体が宙を舞い、そのまま木々の合間に転がり落ち――
――気を失った。
◇
「……ふむ。久々に面白そうなガキが落ちてきたな」
「この子、生きてるわよ。運だけは良いみたい」
「いや、それだけじゃない。……この子、持ってるよ。凄まじい“素質”を」
――彼の周囲には、三人の人影があった。
鋭い眼光の剣士。浮遊する魔力の衣をまとう美女。そして、巨大な黒竜の姿をした何か。
カイはまだ気づかない。
この瞬間から、彼の運命が――“世界を変える”ほどの転機を迎えていたことに。
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