孤独と共感のはざまで

「さあ、レイ」


ユリウスの声が響く。


「君が選ばなければ、君の物語は“無意味”になる。

“完全な自由”は孤独を生み、

“共感による物語”は制約を伴う。

――どちらを選ぶ?」


白紙世界フォーマット・ゼロの中心に、レイは立ち尽くしていた。


その背後に、エリスの姿があった。


「レイ……私の声が、届いているなら……」


レイの手に握られたペンが、震える。


“自分だけで書き続ける自由”。

“誰にも縛られない力”。

それこそが、これまでレイを支えてきたすべてだった。


だが、その力は今――“誰かと物語を共有すること”を、拒んでいた。


(俺は……自由を望んだ。だからこそ、書き手になった。

けど――)


思い出されるのは、マリーの笑顔。

自分の信じる力でスキルを得た、小さな奇跡。


そしてエリスの声。


「あなたの力を、私は見てきた。

その“否定の力”に、私は救われたの。

でも……本当にあなたが望むのは、

“すべてを否定して、ただひとりで立つこと”なの?」


「……違う」


レイが、ようやく言葉を発した。


「“自由”を望んだのは、誰かに命令されたくなかったからだ。

でも今は……“誰かと共に、選びたい”」


その言葉に呼応するように、彼の前に新たなページが開かれる。


【再構文開始:共創構造双筆定義(デュアルスクリプト)発動】


空間に、もう一本のペンが出現した。

それを、レイは迷わず――エリスに差し出す。


「一緒に書こう。お前が、ずっとそばにいてくれたから……

俺は、ここまで来れたんだ」


エリスの瞳が、大きく見開かれる。


「……レイ……!」


手を取り合った瞬間、世界が光に包まれた。


【システム通知:物語再構成中】

【新しい定義が生成されました】

【物語の核:共創による自由】

【“自由とは、選べる関係性を含む”】


ユリウスが、静かに目を閉じる。


「……そうか。“共創”という第三の選択……

やっぱり君は、ただの反逆者じゃなかったんだな」


彼の手から、銀の万年筆が崩れ落ちる。


「物語の秩序を維持するために呼ばれたけど……

きっと、最初から負けることが決まってたんだ。

“君が物語の意味を信じる限り”」


レイが、一歩踏み出す。


「……じゃあ、今度は一緒に書こう。

世界を、もっといい“物語”にするために」


ユリウスは静かに微笑んだ。


「……ああ。君の物語を読んでみたい。これからもずっと」


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