監視者エリスと禁忌のスキル

「監視者……?」


レイは思わず身構えた。

だが、目の前の少女は武器も持たず、敵意も感じられない。

ただその瞳──銀の瞳だけが、すべてを見透かすような光を湛えていた。


「私はエリス。〈監視者〉というのは、正式な称号よ。

あなたのような“規格外の存在”を監視・記録・場合によっては排除する役割を持っている」


「……つまり、俺を殺しに来たってことか?」


「違うわ。今の私は、“観測”しに来ただけ。まだ、排除の権限は下りていないから」


さらりと、冗談のように、だが恐ろしく現実味のある言葉だった。


「《反射》……その力は本来、神格者か、法則干渉者だけが触れていい領域。

あなたがそれを持って生まれた時点で、すでに“世界の外側”の因果が混ざっていた」


「意味がわからないな」


「無理もないわ。教えてあげる。

あなたのスキル《反射》は、“観測された干渉”すべてを基点に、

世界の演算結果そのものを逆転する能力」


「……は?」


「たとえば、剣を振る。それは“攻撃しようとした”という意志と行動の集合。

《反射》は、その一連の事象を、“攻撃した者自身に起きる”ように再構成する」


「因果律を……反転してるってことか」


「正確には、“因果の決定そのもの”を跳ね返している。

未来の確定を、逆流させる力。それがあなたのスキル」


レイは、炎の揺らぎの中で、自分の手を見た。

かつて“無能”と嘲られたこのスキルが、

そんなとんでもない力だったというのか。


「でも……それならどうして、そんな力を俺に?」


「それは、私にもわからない。

ただ一つだけ、確かなことがあるわ。

――あなたは“世界から排除されるべき存在”として、

近いうちに“再審”にかけられる」


「……審判されるってことかよ。俺が?」


「そう。けれど、それまでは自由。

力を振るってもいい。逃げても、戦っても」


そして、エリスは一歩、レイに近づいた。


「ただし――これ以上、無自覚に“反射”を使うのは危険よ。

あなた自身がその力に飲み込まれる日も、近いから」


レイは、目を逸らさず、彼女を見返した。


「だったら……教えてくれ。俺がこの力で、何ができるのかを。

俺はもう、逃げる気はない。追放された時点で、人生はもう……変わったんだ」


エリスは、微かに笑った。


「いい覚悟ね。なら――私が“教官”になる。

あなたに、力の使い方と……この世界の本当のルールを教えてあげるわ」


【同時刻・王都】

「……なに? ゼオラルが“消滅”した?」


謁見の間で、国王の声が震える。


「はい……ただの“反撃”ではありません。“反射”によって、存在ごと……」


「バカな……スキル《反射》など、せいぜい初心者向けの防御スキルではないか!」


「いえ、王よ。我々は見誤っていたのです。

……レイ・アルスター。あの少年は、**世界法則に干渉する“異常存在”**です」


「……抹殺しろ。国家総力をもってしてもいい。

放っておけば――我々の“ルール”が崩れる」

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