追撃の騎士団と“反射”の本質

「――ゼ、ゼオラル王子ィィィッ!!」


焦げた森の残骸の中で、近衛騎士たちの悲鳴が木霊した。

地面には、王子の剣の破片と、彼のかつての鎧の一部だけが残っていた。


完全消滅。

爆発ではない。

存在そのものが、反射によって“消去”された。


「ば、化け物だ……!」


「囲めッ!敵は“反射”持ち!接近戦は避けろ!弓兵、準備ッ!」


レイは、何も言わずにその場に立っていた。

逃げない。構えない。

ただ、静かに、目を伏せていた。


(また……殺した)


目の前の光景は、正当防衛とはいえ──

あまりにも、圧倒的だった。


「撃てッ!!!」


一斉に放たれる魔法の矢。

火、氷、風、雷──


空を裂く色とりどりの閃光が、レイの身体へと殺到した瞬間。


「《反射》」


ただの一言。

光が反転する。

無数の矢が空中で軌道を反転させ、射手たち自身へと突き刺さった。


「ぐあああああっ!!」


騎士たちが、次々と地に伏す。


「理解できていないようだな」


レイは、静かに口を開いた。


「“反射”は……単なるダメージの反転じゃない。干渉そのものの“力の構成”を解析し、逆ベクトルで相手に送り返すんだ」


「……何を言って……!」


「つまり、攻撃が強ければ強いほど……お前たちが“受ける”ダメージも増える」


その時、最後まで攻撃を控えていたひとりの魔法騎士が、怯えながらも問うた。


「な、なぜ……お前のような存在が追放された……?」


レイは、答えなかった。


だが、その代わりに、手を前に突き出す。


次の瞬間、彼に向けて構えた全ての騎士の武器が、崩壊した。


金属が音を立てて砕ける。

魔力の封印が破れ、結界が逆流する。


(やめてくれ……やめてくれ……!)


叫ぶような騎士たちの心の声が、レイの意識に重なってくる。


だが、その中で、彼自身の内側に眠る感覚が、告げていた。


――“反射”は、まだ完全に目覚めていない。


これはまだ、「初期状態」に過ぎない。


【辺境の深林:その夜】

焚き火の前、レイはひとり、破れたマントに身を包み、空を見上げていた。


(王子はもういない。だが、これは……始まりにすぎない)


その時、闇の中から一人の少女が現れた。


「あなた……反射の使い手なのね」


レイが振り返ると、そこに立っていたのは、黒髪に銀の瞳を持つ謎の少女。


「誰だ……?」


「私は“監視者”よ。あなたが、あの力を使う瞬間をずっと……見ていた」


そして少女は微笑む。


「貴族たちは、あなたを追放した。けれど、本当は“封印”したかったのよ。

――そのスキル、《反射》こそ、世界を終わらせる力だから」

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