第4章 聖女様の(物理)訓練とプロテイン伝説・序 へ続く

## パート1:騎士団の朝と新しい服

次に目を覚ましたのは、部屋の窓から明るい光が差し込んでいる時間だった。

どうやら、ぐっすり眠ってしまっていたらしい。

昨日の疲労は、少しだけ回復したような気がする。


……でも、窓の外から聞こえてくる「オラァッ!」「ダァッ!」という雄叫びと、ガギンガギンという金属音は変わらない。


(朝から元気だなぁ、騎士団の人たち……)


ベッドから起き上がり、伸びをする。

ああ、そうだった。私、騎士団の詰所にいるんだった。

昨日の出来事が生々しく思い出されて、早速ため息が出た。


コンコン。


控えめなノックの音がして、レオンさんの声が聞こえた。


「アリア様、おはようございます。レオンです。入ってもよろしいでしょうか?」


「は、はい! おはようございます! どうぞ!」


扉が開いて、レオンさんが入ってきた。

昨日の夜見た時よりは、少しだけ顔色が良い……気がする。目の下のクマはまだちょっと残ってるけど。

彼の腕には、畳まれた衣服がいくつか抱えられていた。


「昨夜お約束した、お召し物をお持ちしました」


「わぁ! ありがとうございます!」


レオンさんが差し出してくれた服を受け取る。

一番上になっていたのは、生成り色のシンプルなチュニック。下は、動きやすそうな濃い茶色のズボン。それと、下着類もいくつか。

想像していたよりもずっと普通の、街の女の子が着ていそうな服だった。


(よかった……! フリフリの聖女服とかじゃなくて!)


あの白いワンピースも、見た目は綺麗だったけど、すごく動きにくかったのだ。

これなら、だいぶマシかもしれない。


「すぐに着替えてみますね!」


「はい。では、私は一旦失礼して、お着替えが終わる頃にまた、朝食のご案内にお伺いします」


レオンさんはそう言って、丁寧にお辞儀をして部屋を出て行った。


一人になって、私は早速服を着替えてみることにした。

下着の構造がちょっと元の世界と違っていて戸惑ったけど、なんとか装着。

チュニックとズボンは、麻みたいな少しゴワゴワした生地だけど、軽くてすごく動きやすい。


(うん、こっちの方が全然いい!)


部屋に鏡がないから、どんな風に見えるのかは分からないけど、気分的にはだいぶ楽になった。

少なくとも、「聖女様(物理)」みたいな格好ではないはずだ。


着替えが終わって、ベッドの上に座って待っていると、再びレオンさんがノックをして現れた。


「アリア様、準備はよろしいでしょうか? 食堂へご案内します」


「はい!」


レオンさんに連れられて、部屋を出る。

朝の詰所は、やっぱり活気があって騒がしい。

すれ違う騎士さんたちの視線は相変わらずだけど、もう昨日ほどは気にならない……いや、やっぱり気になるけど、少しだけ慣れたのかもしれない。


「あの、レオンさん。今日の予定って……何かあるんですか?」


食堂へ向かう途中、恐る恐る尋ねてみた。

鍛錬とか、言われたらどうしよう……。


レオンさんは、少しだけ考えるそぶりを見せてから答えた。


「いえ、本日は特にこれといった予定はございません。長旅と昨日の騒動でお疲れでしょうから、詰所内でご自由にお過ごしいただければと」


「ほ、本当ですか!?」


やった! 自由時間!

思わず声が弾む。


「……ただし」


レオンさんが、申し訳なさそうに付け加えた。


「団長が……その、いつアリア様にご挨拶(という名の何か)に来られるか、分かりませんので……その点だけ、ご留意いただければと……」


(やっぱりぃぃぃ!)


私の喜びは、一瞬でしぼんでしまった。

自由時間とは名ばかりで、いつあの脳筋団長さんが乱入してくるか分からない、恐怖のお留守番タイムということか……。


「……はい。気をつけます……」


力なく返事をする私を見て、レオンさんはまた、そっと胃を押さえていた。

私たちの苦労は、まだ始まったばかりのようだ。


→【第4章 パート2へ続く】

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