パート17:一人きりの鍛錬部屋(仮)にて

バタン、と扉が閉まり、ゼノン団長さんの大きな足音が遠ざかっていく。

……シーン。

再び、部屋に静寂が訪れた。いや、窓の外からは相変わらず訓練の声が聞こえてくるから、完全な静寂ではないんだけど。


(行っちゃった……)


さっきまでの圧迫感から解放されて、私は大きく息を吐き出した。

筋トレ指導からも逃れられたし、ひとまず安心……。


(いや、安心なんて全然できない!)


すぐに思い直す。

だって、あのゼノンさんが応対しに行った相手は、大神官アグナス様なんだよ?

私を「偽りの聖女」って呼んで、冷たい目で見てた、あの人が。

あの二人が顔を合わせたら、絶対に穏便に済むわけがない!


(きっと、私のことで揉めてるんだよね……)


ゼノンさんは私を守ろうとしてくれてるみたいだけど(物理的に)、アグナス様は私をどうしたいんだろう。

神殿から追い出したい? それとも、もっとちゃんと処分(?)したいとか?

怖い想像ばかりが頭をよぎって、体が震えてきた。


落ち着こうとして、私は改めて部屋の中を見回した。

がらん、とした空間。

ベッド、テーブル、椅子、棚。以上。

窓の外には、汗まみれの騎士さんたち。


(ここで……本当に暮らすんだ……しかも、鍛錬させられるかもしれないって……)


現実を突きつけられて、また深いため息が出る。

せめて、もう少し……普通の、女の子らしい部屋だったら……。

いや、望みすぎか。ここは騎士団の詰所なんだもんね。


(外、どうなってるのかな……)


気になって、そっと窓に近づいてみる。

訓練は……まだ続いているみたいだ。雄叫びも聞こえる。

アグナス様が来たからって、訓練が中止になるわけじゃないのかな。

それとも、まだアグナス様は詰所の入り口あたりにいるんだろうか。


今度は、扉の方に近づいて、耳を澄ませてみる。

廊下は……なんだか、さっきより少し静かになったような気もする。

でも、ざわざわとした人の気配は続いているみたいだ。

怒鳴り声とか、言い争うような声は……聞こえない、かな?


(大丈夫かな……団長さん、アグナス様に失礼なこと言ってないといいけど……)


いや、絶対言ってるな、あの人なら。

「石頭め!」とか平気で言いそう。

そうなったら、ますます私の立場が悪くなるんじゃ……。


(不安だ……)


部屋の中を行ったり来たり。

じっとしていられない。

一人きりだと、余計なことばかり考えてしまう。


(レオンさん……来てくれないかな……)


さっき別れたばかりの、あの胃が痛そうな若い騎士さんの顔が思い浮かぶ。

彼がいてくれたら、少しは心強いのに。

でも、きっと彼も、アグナス様の対応で忙しいんだろうな。


結局、誰も部屋には来てくれなかった。

私は、がらんとした部屋の中で、いつ来るか分からない嵐の気配に怯えながら、途方に暮れて待つしかなかった。

この先、私はどうなってしまうんだろう……。

不安だけが、どんどん募っていく。


→【第3章 パート18へ続く】

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