元の道#2 「疑念」
熱中症警戒アラートが出ていることもあり、15時までは宿で過ごすことになった。
賢は顧問に呼び出されていて部屋にはいなかった。
「和、ちょっときて」
宗介はそう言って和を連れ出した。
「和何味が良い」
二人が来たのは宿の一階にある売店だった。
「え買ってくれんの」
和はそう言いながらチョコ味の文字に指を差した。
「遠慮とかないの」
「買ってくれるんでしょ」
そう言って和はにこにこしながらソフトクリームを待った。
「はいおまちどおさま」
宗介はソフトクリームを受け取った。
二人は売店横の竹藪の景色が見えるロビーのソファに座った。
「和誕生日おめでとう」
宗介はそう言いながら和にソフトクリームを渡した。
和は目を丸くした。
「ありがとう」
和はにこやかに宗介にお礼をした。
「ちなみに結構遅れてるけど」
和はすかさず突っ込んだ。
「えっとそれは賢が、」
「賢が?」
「実は俺と賢と永仁で、サプライズみたいな感じで和の家行って誕生日を祝いに行こうとしたんだよね」
「え、家、というかおばあちゃん家にきたの」
少し溶けたソフトクリームが和の手に垂れた。
「行こうとしたけど、賢があそこは和の家じゃないって。でも理由聞いても勘とか言うから。だからさっきバスで和に聞いてみた」
和は宗介の顔をまじまじと見る。
「やっぱり和の家は隣町だって知ってその頃にはもうお盆だったからプレゼント渡しそびれた」
宗介は祝うのが遅れたことを弁明した。
「ちょアイス溶けてる」
「うわ」
和はすかさずアイスを口にする。
和はアイスを舐めながら、そして外の竹藪を見ながら、宗介にありがとうともう一度言った。
━━━勘かぁ。
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