第22話 メイドカフェに行きたい!

「陵さん…?」

「影真くん好きなの!?メイドカフェ!?」

「も…?」


 クールでホットな陵さんの目の中には流星群並みの星々が映っている。


「え、もしかしてそれって『アンジュリボン』の割引券?」


 僕の手の中に入っているのは、先ほどの店の割引券、すなわち花豊先輩、ヒナミ、アイカが働いている店である。


「そ、そうだけど」

「え、じゃあさ一緒に行かない!?!?」

「一緒に…」


 僕の右肩には突然天使が現れた。天使は「ダメだよ。うちの高校はバイト禁止だから学級委員の陵さんに合わせるわけにはいかないよ」と。

 そして左肩には悪魔が現れ、「大丈夫だ。陵さんとデートなんかできるのは本来なら一生に一度もないんだぞ」と。


 僕は右肩の虫をつぶし、陵さんと「アンジュリボン」へと向かった。



 ◇



「おかえりなさいませ!ご主人、、、」


 僕たちを出迎えたのはメイド姿の花豊先輩だった。


「うわぁぁ!可愛いですね!影真くん!!」

「う、うん」


 そっか、陵さんは花豊先輩のことを知らないんだった。

 あの二人はまだ研修中だし、表にはいないのか。


「ちょ、カゲさん。なんでいるんですか!?

 追い出されたんじゃないんですか?」

「ていうか、なんで僕がメイドカフェで働けると思ったんだよ!」

「いや、なんかいけそうだなって」

「影真君ここの常連?メイドさんとめちゃ仲いいね!」

「あ、ううん」


 僕と陵さんはオムライスを頼んだ。

 陵さん曰く、ケチャップの味で店の良しあしが分かるらしい。


「ねえ、陵さん」

「なに?」

「校則を破る人ってどう思う?」

「うーん。種類にもよるかもだけど、故意的に破っているのであれば」

「あれば?」

「そんな人地球からいなくなっちゃえばいいんじゃないかな?」

「あははそうっすね」


 まずいまずい。ばれたらまずい。


「どうしたの影真くん。冷や汗すごいけど…」

「ああ、ちょっと暑くて」

「暑い?店員さんにエアコンの温度もっと下げるようにお願いしてこようか?」

「いやいやいや!!大丈夫大丈夫!!!」


 と、魔の悪いタイミングで食事が届く。


「おまたせしました…」


 この声、この太もも…顔を上げなくてもわかる。

 ヒナミだ。


「ゲ、なんであんたがいるのよ…」

「もしかして、ヒナちゃん?」

「━━」


 僕はそっと右肩を撫でた。

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