第21話 バイトをしたい!

「お金がない!!こんなんじゃ旅行に行けないわ!!!」


 ヒナミがそう嘆くのは想定の範囲内だった。

 働かざる者食うべからずというやつだ。




 ◇



「バイトよバイト!!」

「言われた通りに、わざわざ夏休みに部室まで来て、

 履歴書持ってきたけど、あてはあるんだろうな」

「あるわよ!ヒナちゃんのバイトを紹介してもらうの!」

「はい!店長に頭を下げたら、面接くらいなら良いと言っていました!」

「ハナちゃん、ばいとしてたんだ」

「よーし!バイトするわよ!!!!」

「「「おー!!!」」」



 ◇面接会場



「まあ、面接くらいならいいって言ってけどさ、」

「はい。」

「ここ、メイドカフェなんだよね」


 僕たちはやる気と履歴書を持って花豊先輩のバイト先であるメイドカフェに行ってきたのだ。


「他の皆は?」

「あ、もう着替えて研修中なんじゃない?」

「そうですか…まあ、帰ります。」

「あ、これあげるよ。なんかごめんね」


 僕が本当にこの店で働きたくて来て断られたみたいになってるな。

 店長はこの店のクーポンをくれた。

 行かねえよ。


「じゃあ、失礼しました。」


 僕は最小限に音を抑え、店を出た。


 水鏡市のとなりの少し栄えた街である。

 この通りはオタク文化が根強くあって空気は吸えたもんじゃない。


「(オタクばっかだなぁ)」


 オタク特有のオタク見下しをしていると、どうやら一人だけ場違いな風貌をしている人がいた。

 その人周辺の空気だけは異常なまでに洗練されている。


 目が合う。

 やべ、見惚れすぎた。


「え!?影真くん!?!?」


 マスクをしていて分からなかったが、近くで見ると一目瞭然だった。

 僕のみささぎしおりだった。



「どうしてここにいるんですか?」

「え、ええ、、ちょっとまあぁ」


 目が泳いでいる陵さん

 まあ、このオタク通りにいるってことは、そういう趣味なんだろう。

 いやまて、陵さんがメイドとして働いてる可能性も…?


「も、もしかして陵さんってメイドとかですか?」


 その言葉を聞いた瞬間。

 陵栞は目を輝かせ、僕のクーポンを握った手を抱擁した。


「そうなの!」

「あ、そうなんすか」

「もしかして影真くん好きなの!?メイド!!」

「も…?」



 ======

 陵シオリ

 ======


 趣味はメイドカフェに通うこと。

 身長は155センチくらい。


 探偵部の磯部君によると、Dカップらしい。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る