第5話 入部したい!!

「うッ」

「どうした陽七海、まさか弁当に白いものが?」

「…ちょっと、白いとか言わないでよ。

 聞くだけで吐きそうだわ」


 陽七海の弁当を見ると、茶色のものばかりでとても白いものなんか入ってなどいなかった。

 ちなみに僕は購買で買える、一日13食限定の揚げパンだ。

 今日はたまたま勝ち取れた。


「…まさか、花豊さんが料理得意じゃないとはな」

「まったく、この時代に料理が下手くそなんてキャラいないわよ

 食品に関しては、このご時世厳しいんだから。」


 寸胴に入った白い豚汁は、うちの大食い番長兼メインヒロインの朱屋敷がきれいに食べました。

 僕も二杯いただいた。


「花豊さん、今日も作るって張り切ってたけど…」

「なんとしてでも阻止しましょ…ウッ!…」


 吐いてません。



 ◇



「ここが部室…ね…」

「前にも来ただろ」

「あれ?開かないわね、(ガチャガチャ)」


 僕がカギ持ってるから空いてるはずないんだよなぁ。


 僕は鍵でドアを開け、扉を開く。


「鍵持ってるなら先に言いなさいよ。」

「…ごめん」


 部室内はやはり異質で妙な空間だ。

 なんというか、青春しきったあとの部屋というか。

 跡形もないわけではないが、何も残っていない。

 実際、本棚には大量の本が入っているし、数回しか使っていないような天体望遠鏡も、みんなでティータイムをしたのかもしれない5個のカップも。あるにはあるのだが、役目を終えた面をしている。気がする。


「まあ、少し年期は入っているけど、住めば都ね!」

「そうだな、」

「このソファふかふかでいいわね!」

「そうだな、」

「話ちゃんと聞いてる?」

「そうだな、それより花豊さんは?」

「ハナちゃんバイトなんだって」

「ああそう。」


 バイトしてたんだ。

 今日はあの白豚汁飲まなくていいんだ。

 ほっと一息する僕であった。


 一息すると、少し埃臭いので、喘息を持っているらしい陽七海のために喚起。


「ふぅ、来週からから中間テストね。」

「そうだな、補講もやりまくったし。

 数学はばっちりだろ…」

「補講ね…補講…あっ!補講忘れてたわ!!」


 あ、今日補講だったのか。

 まあいいか。行かなくても何かが増えるもんじゃない。


「もういいだろ。おとなしく怒られようぜ」

「だめよ!あの先生が本気で怒ったら木刀持ってきて切られるわ!」


 陽七海はバッグをもち、慌てて部室を出た。

 木刀で人間を切るって、どんな剣豪だよ。



 ◇



 その後僕は一人で部室を散策した。

 部屋まあまあでかく、かなりでかい本棚二つに大量のライトノベルがびっしり入っていたことに感動した。しかも年代順で文庫別。まさに神業だ。

 

 そして革製のソファや高級そうなデスクが一つ。

 おまけに最新式(おそらく)エアコンまでついている。

 これはありがたい。

 ガラクタばっかりだが捨てていいらしいので、ひと段落したら断捨離をしようと思う。


 そういえば、この段ボールの中は捨てないでと言っていた。


 段ボールの中にはクッキー缶が三つと、その他賞状とかだった。

 僕はおもむろにクッキー缶の中を開ける。と、そこには『部室説明書』と手書きされた冊子が一枚入っていた。


 本くらいの分厚さなどではなく、せいぜい運動会や遠足の時に配られたしおり程度だろう。


 そしてもう一枚の冊子。

 『天文部 日記』である。


 僕は一ページ目からじっくりと読む。



 =====



『今日の担当は俺、みんなで話し合った結果、部活のある日に当番制で日記を書くことにした。まあ、特に何もなかったな。』


『今日の担当は妃花ひめか

 今日は磯部くんと二人だったからずっとテレビゲーム!』



 ====


「(パンッ!)」


 ん、この部室テレビゲームあるのか。


 僕はこの日記を読むと、過去回想に入りそうな気がしたので、この日記を閉じてテレビゲームを探すことにした。



 ◇


「早く走りなさい!」

「遅れちゃいますよー」

「はぁはぁはぁはぁ…」


 中間テスト終了から一週間後。


 時刻は朝、登校時。

 こんな朝っぱらから走らされている。


 理由はヒナミが『これをやらなければ進級できないよ』と入学早々に出された宿題を出し忘れ、ラストチャンスで今日の朝8時30分まで受け取ると言わているからだ。

 しかもヒナミはママチャリで、花豊さんはその後ろ。

 僕は走りだ。

 しかも、三人分の荷物を持って。


「カゲのせいで留年が確定したら本当に呪うからね!」

「お、お前が計画的に…」


 息が上がり突っ込みすらも、ままならない。

 僕は花豊さんのスクールバッグの少しのチャックの隙間から良い匂いを嗅ぎつつ、学校に向かった。



 ◇



「二年一組朱屋敷でーす!

 池ちゃん先生いますかー!!」


 課題のワークを二冊持ちながら職員室へと入っていったヒナミ。

 僕と花豊さんは後ろで顔をひょっこりとのぞかせている。


「あの、カゲさん…」

「なんですか?」

「私のバッグ、臭いました?」

「え?いい匂…いや、わかりませんでしたけど?どうかしましたか?」

「さっきカゲさんが入念に私のバッグを嗅いでいましたので…」

「ギクッ!」


 本当にギクッと言ったのは初めてだ。

 人間マジで焦ると出るもんなんだな。


「あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁぁぁ」


 敵によって故郷が全破壊されたような声が職員室から聞こえてくる。


 見ると、ワークを落とし、膝から崩れ落ちたヒナミがいた。

 ヒナミが震えながら、ワナワナと帰ってくる。


「ど、どうしたんだよ」

「こうせ…」

「ん?なんだって?」

「うせいよ…」

「聞こえないよ、」


 ヒナミは僕の胸倉をつかみながら、職員室のまえでこう叫んだ。


「転校生よ!転校生!!!」



 仲間を集めたい!

 進捗度★★★☆☆☆☆☆☆☆





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