第4話
雲がたくさん浮かんでいる青空の下。
真っ白な校舎は、太陽の日差しで照らされている。
放課後、いつものように生徒会室に集うメンバーたち。
昨日から正式に、生徒会役員は6人となった。
今日もまた、全員が集まってそれぞれが思い思いに過ごしている。
麗奈はひたすらくつろいでいるし、天音と咲希は課題に取り組んでいる。
羽月は陽葵が勉強するのを手伝っていて、柚は何か言いたげに口をもごもごさせている。
決意を決めたような様子の柚が、口を開いた。
「あ、あの……麗奈先輩と天音先輩ってどうしてそんなに仲良いんですか……?」
素朴な疑問。
確かに、ここまで言い合える先輩後輩の関係の人なんて、そうそういないだろう。
不思議に思うのも当然だ。
「べ、別に仲良くなんかないし……!」
「えぇ〜?仲良いじゃーん天音っ♡」
「どこがよ!?」
ツンデレ気質の天音。麗奈のこととなるといっつもツンケンしている。
でもそれが、麗奈にとっては可愛らしくて仕方がない。
「実はさ、私たち、昔からよく一緒にいた仲なんだ!小学生の頃に天音が私の家の近くに越してきて、それ以来よく遊んでたのっ!」
「そ、そうだったんですね……!」
「天音ってばほんっと昔っから世話の焼ける子でさぁ〜」
「はぁ!?余計なこと言わないでよ!世話焼けるのは麗奈の方でしょ!?」
ダルそうに、迷惑そうに言う麗奈に、天音は黙っていない。
「いやいやそれはないなぁ〜だって毎日どっかでコケてたし!ウケるでしょっ?」
あはははっと高い声で笑い飛ばす麗奈。
「あーー!それ言わないでぇー!!」
天音は顔を赤らめて必死に阻止しようとするが……。
「……確かにこの前廊下でコケてるの見かけました」
「私もグラウンドの何も無いところでコケてるの見たなぁ〜」
「体育祭のリレー練習の時に思いっきりコケてたよね〜」
追撃するように羽月も陽葵も咲希も言い始める。
「ちょっとみんなぁーー!!!」
さすがに恥ずかしい。
天音にとってはかなり痛いトラウマなのに。
……今は、笑えているからいいけれど。
「あとはねぇ〜」
「あーー!もうやめてぇーー!!!」
まだまだ話を深堀りしようとする麗奈に向かって、イライラし始める天音。
こんなに掘り返されては溜まったもんじゃない。
「んふふ……天音、恥ずかしいの〜?じゃあ、もっと質問しちゃおっかな♡」
「はぁ……?もういいってば……!」
ニヤニヤしながら言ってくる麗奈に、今度は何だと内心ビビる。
「じゃーんっ!嘘発見器もある!!」
麗奈のポケットから手のひらサイズの丸い装置。
中心がピカピカと赤く点灯している。
「はぁ!?なんで持ってきてんのよ!!」
「……しょ、しょうがないなぁ……少しだけなら……」
正直少し興味がある天音は、麗奈が変な質問してくるに違いないと思っていたのに、なぜか頷いてしまっていた。
「じゃーあー……」
「何カップ?♡」
「言えるわけあるかぁ!!!」
なんの質問かと息を飲んでいた天音だったが、まさかこんな質問とは。
「嫌よ!!このド変態ドスケベ女ぁ!!!」
「言わないと恥晒しちゃうよぉ〜?♡」
「それでもいいのかにゃ?天音♡」
「く……っ」
そんなこと言われたらもう動けない。
これまでずっと天音と一緒にいた麗奈だから、天音のことは大体知っているし、やらかしたこともよく知っている。
質問に答えなければ、何を言われるのか……怖すぎる。
「それでGカップー!とかって嘘ついたらビリビリバーン!ドーン!だぞ〜?」
「び、ビリビリバーン!ドーン!?何それ!?!?」
大袈裟な効果音を付けて脅してくる。
こんな小さな機会から、そんな大きな電流が流れるとは思わないが……。
「ほらほらぁ〜早く言わないとぉ〜♡」
「天音は小学3年生の時〜……」
「ぎゃぁぁぁー!!!!」
「Cカップ!!Cカップ!!!」
「いったぁ!!」
麗奈は急かすように天音の過去のことを掘り返そうとして、言いかける。
それにビビった天音は、反射的に答えを言ってしまった。
だけど、答えはNO。
ビリビリっと電流が天音の体に走る。
これが嘘をついた代償。
Cカップは嘘らしい。
「生徒会長の前で嘘つくとか何様だ!生徒会長の言うことは絶対だぞ!」
「いつまで生徒会長だからって威張ってるんですか」
生徒会長を誇りに思っている。
確かにすごいし立派なことではあるが、今日はまだ生徒会室に来てから何もしていない。
天音の恥を晒して嘘発見器を繰り出したくらいだ。
咲希は冷静にツッコむ。先輩にだって容赦しないのが彼女のスタンス。
「んーっと……天音はBカップ、と……」
「違ーーう!!ほんとにほんとにCあるもん!!Cカップだもん!!」
メモメモ……と言いながらちゃんとメモ帳にメモをとる麗奈。
そして、Bではないと全力否定する天音。
顔を真っ赤にしながら怒る。
なんせ、咲希や後輩たちが見てる前なのだ。
あまりにも嫌すぎる。
「でも嘘ついたじゃーん?正直私はB寄りのAだと思ってたけどぉ」
「ひどい!!そこまで無いことはないもん!!!Cカップだしぃ!!!」
「絶対B寄りのAだ!!Aだ!!」
「ワンランク下げて言うな!!!」
「Cだし!!!」
これがThe"れなあま"のやり取り。
麗奈も天音も勢いが止まることはなく、ひたすら言い合っている。
カップがCか、Bか……あるいはAか……。
服も着ているし、正確にはわからないだろうけど。
それでもAカップと主張する麗奈と、Cだから、と否定する天音。
一向に譲る気はない。
生徒会室でこんな会話……してはいけないのに。
「ちょっと2人とも落ち着いて……!!」
「何バストサイズで競ってるんですか……」
咲希も羽月も呆れ顔。
いつものことだから慣れてはいるが、止めないと天音がヒートアップしてヤバいことになる。
だから、必死で止めに入る。咲希の役目だ。
「えぇ〜でも羽月って結構あるよなぁ〜」
羽月の胸元に手を当てて軽く揉む陽葵。
「……っ!」
「やめろ!!」
「いでっ!」
すぐに羽月に殴られる。
このやり取りも二人にとっては当たり前のようなものだが、正直柚は引き気味。
生徒会室でこんなことをしていただなんて……。
「私も揉んであげようか〜?天音〜♡」
手を開いたり閉じたり……揉む動作をして近づいてくる。
天音「嫌だ!!気持ち悪い!!ド変態ドスケベ女!!!」
「このド変態ギャル女!!!」
「ギャルじゃないし!!」
顔を赤くしたまま拒否しまくる天音。
何事もドストレートにぶつける。
でも、麗奈はギャルと呼ばれることがとにかく気に食わない。
自分はギャルじゃない、と言い張るが、見た目的にさすがに無理ある。
「次は麗奈が答えてよ!!!」
「いった!!」
イライラしすぎた天音は、嘘発見器を思い切り投げて麗奈のおでこにぶつける。
ガンッと痛そうな音を立てて床に落ちる。
「ふふーん、何聞いても無駄だよぉ?なんせ私は嘘発見器付けてないんだからっ」
「ぐぬ……っ、付けろ!!付けて答えろ!!」
「やっだねぇ〜〜」
「って、あれ……」
と言った矢先……いつの間にか自分の手の甲に。
天音が素早く拾って付けたのだ。
こういうときは人一倍動く副会長。
「さぁーて……何聞いちゃおっかなぁ〜」
先程とはまるで違った表情。
ニヤニヤとしながら小悪魔じみた笑顔でこちらを見つめてくる。
とても楽しそうだ。
(やばっ……)
内心焦る麗奈。
こういう顔をしている時の天音は、何をしてくるかわからない。
長年一緒にいるため、天音のことはよく知っている。
いつもはからかわれたらすぐ赤面して可愛いくせに、一変して調子に乗り始めるとドS化して可愛くなくなる。
さっきまでの可愛さはどこへ行ったんだ。
「じゃーあ、好きな人、いる?」
「え"っ……」
思わぬ質問に言葉が詰まる麗奈。
「あ!それ私も気になりますー!!」
「天音ちゃんの反撃さすが過ぎる……」
「あれれれれ、答えられないのかなぁ〜?」
「……っ」
陽葵は興味津々。
天音の反撃に感心する咲希。
そして、さらに追い詰めて麗奈を恥ずかしがらせる作戦を立てる天音。
……何も答えられない。
でも、それは一瞬だけのこと。
「い、いるよ!!」
「……え?」
「……っ?」
"いる"……その答えにみんなが驚く。
そしてその人物は……。
「生徒会メンバーのみんな!!」
「!?」
『ピンポーン』
緑色のライトがピカッと光り、嘘発見器から高い音が鳴る。
「ふふっ、嘘ついてないぞ?」
「あー!!それずるいー!!」
「質問ミスってとこだねんっ、あまねっち♡」
「あーーもう最悪……」
最高すぎる答え。
でも、天音にとっては最悪だ。
"あまねっち"と呼ばれるのが嫌で、いつもツンツンしてしまう天音だが、今はそんな気力もない。
完全なる質問ミスをしてしまった。
ガン萎え。
「でも、ほんとのことだよ?」
「わかったってば……」
完全に落ち込んで悔しがる天音。
ズンと下を向いて目を伏せたまま。
麗奈がまだ言葉を続ける。
「だーかーらー……」
「天音のことも好きってことだよ」
「え……っ!」
その言葉に、天音の頬がぽおっと赤色に染まっていく。
嬉しいような、恥ずかしいような……そんな気持ち。
「咲希も羽月も陽葵も柚も!み〜んな大好きっ!!」
「……っ!!」
生徒会のみんなはもちろん、後輩も、この学校も。
全部を大切にしたいという麗奈の気持ちも本物だ。
ウソなんかじゃない。
本当に、心から大好きなのだ。
「んじゃ!早く仕事するよーっ!」
「切り替えの速さすごいですね」
「さっきまで嘘発見器で遊んでたのに……」
咲希も羽月もまた呆れている。
麗奈は気持ちの浮き沈みが激しいみたいだ。
今は仕事スイッチが入ったらしい。
「でもさー!天音がAカップってことがわかったしぃ〜よかったじゃんっ?」
「よくない!!ぜんっぜんよくないから!!てか私C!!!」
さっきまで顔を赤らめて麗奈のことをまともに見れなかった天音が、またもやテンションが戻ったようで、ツンツンし始めた。
そしてまたAカップを全力否定。
「えぇ〜?でもその大きさは……」
「見ないで!!!!」
ニヤつきながらジロジロ天音の胸元を見てくる麗奈。
天音はすぐさま両腕で抱きしめるようにして胸元を隠す。
「麗奈せんぱーい!私も今度嘘発見器使いたいでーすっ!」
「もちろんだよ陽葵っ!使お!!」
「またやるんですか……?」
「危ないしやめときなよ」
陽葵は嘘発見器に興味津々。
気に入ったみたいだ。
そして麗奈もそれにノリ気。
咲希と羽月は反対派。
危ないという意見はごもっとも。
嘘をつくと電流が流れる仕組みで、人が使うには危なすぎる。
「大丈夫ー!命には害しないからっ!」
「何らかには害するんじゃない!!」
「まぁまぁ!ほら!早くやろー!決めることいっぱいあるんだからっ」
「まずは体育祭!!」
「うげぇ……やだぁ……」
体育祭にいい思い出がない天音は、嫌がっている。
とにかく運動が大嫌い。
コケてばかりだし、足の速さにも自信がない。
「ゆっくりやってこ!天音ちゃん!」
「咲希ちゃんん……」
さすがは親友……今一番欲しい言葉をくれる……。
「じゃあ、まずは……種目決め、かな!」
そうして、また賑やかな放課後のひと時が始まる。
忙しない日々でも、みんなで遊んで、ちょっと彩りを添える。
それだけでとてもあたたかくなれる。
頑張ろうと思えるようになる。
かけがえのない日常。
大切な時間。
何気なくて、当たり前だと思えるこの日常を大切にしたい。
彼女たちは皆、そう思っているだろう。
生徒会として、これからも学校を支え続ける。
時々言い合うこともあるけれど、それも楽しみのうちの一つ。
窓の外では、風が爽やかに吹いていて、あたたかな日差しが生徒会室を照らしている。
彼女たちの活動を、応援するみたいに。
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