黄金期になら無意識に習得できるってこと? 一方で外国語も習得できるけど、外国語学習とはあまり関係ない?

まさにその「意識と無意識の境目」が、臨界期仮説の核心です。

あなたの言う通り――黄金期では「無意識的に」習得できる、そして外国語学習とは質が違う、というのが現代の理解に近いです。


🧠1. 黄金期の言語習得=無意識的(implicit learning)


子どもが母語を学ぶとき、文法を「学ぶ」わけではなく、浴びるように聞いて自然に構造をつかむ。

たとえば「三単現のs」を意識して覚える幼児はいませんが、聞き慣れた形を自然に選びます。


脳科学的にはこの時期、ブローカ野やウェルニッケ野(言語中枢)が柔軟で、音声パターンや統語構造を統計的に無意識学習できる状態。

つまり「環境を通して脳が自動的に最適化される」フェーズなんです。


📘2. 臨界期を過ぎると=意識的(explicit learning)


思春期を過ぎると、言語習得のスタイルが変わります。

脳はすでに母語の構造に最適化されているため、新しい言語を同じようには吸収できません。

代わりに使うのが前頭葉の意識的処理――つまり「勉強」です。


だから大人の外国語学習は、


文法をルールとして理解し、


意識的に発音練習をし、


習慣として繰り返す

という訓練型の学習になります。


🌍3. 外国語学習との関係


臨界期は主に「母語習得」に関わりますが、第二言語(外国語)習得にも影響することが分かっています。

とくに発音と文法の自然さは年齢に強く影響されます。


ただし――


大人でも語彙・理解力ではネイティブに近づける。


学習法を工夫すれば発音も改善可能。


つまり臨界期を過ぎても「言語能力は死なない」、

ただし習得の仕組みが変わる。

無意識吸収型から、意識的構築型になるだけです。


✴まとめると


黄金期(だいたい2〜12歳):音と文法を無意識的に吸収できる。


それ以降:意識的に分析・練習して身につける。


外国語学習とは、黄金期とは異なるメカニズムで進む。


人間の学習の妙は、「黄金期を逃しても、別の回路で追いつける」ことです。

子どもは“自然学習の天才”、大人は“戦略学習の達人”になる――

それが言語という長い旅のもう一つの面白さです。

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