第5話 拉致
その後、約1週間も学校を休んだ。
それほどまでに、雪が受けた精神的ショックは大きかった。
食事もほとんど喉を通らず、布団にくるまったまま、一日中寝て過ごしていた。
母と妹の幸は、そんな雪を見て「学校をサボっているだけじゃないの」と、どこか責めるような口ぶりで言った。
その言葉が胸に突き刺さり、雪は布団の中で声を殺して泣いていた。
家にすら居場所がない…ただ、苦しかった。
1週間が過ぎた頃、雪はようやく学校へ行く決心をした。
憂鬱な気持ちが晴れたわけではない。
けれど、家にいることが、もう耐えられなかった。
いつもの道を歩き、学校へと向かう。
だが学校が近づくにつれて、足取りが段々と重くなる。
1週間前に起きた、西園寺姫花とのあの出来事が、鮮明に浮かんでくる…。
途端に胃の奥がキリキリと痛み始め、冷や汗が背中を伝う。
(もう、嫌だ……)
雪は思わず、通学路を外れて人気のない裏道へと足を向けた。
(少しだけ…どこかで休もう……)
そう思ったその時だった。
背後から、静かにワゴン車が近づいてくる。
雪は気づかなかった。胃の痛みに意識を奪われ、周囲を確認する余裕すらなかった。
その瞬間。
何者かが背後から忍び寄り、雪の鼻と口を布で強く押さえた。
(…!?)
雪の心拍数は跳ね上がり、大量の汗が身体から吹き出す。
(逃げなきゃ…!!)
同時に、背中に鋭い痛みと電流が走る。
おそらく、クロロホルムとスタンガンの両方を使われたのだろう。
抵抗する間もなく、雪の意識は、闇の中へと沈んでいった。
次に目を覚ました時は、見た事もない場所に居た。
おそらく廃工場の中だろう。
真冬のコンクリートの床の冷たさが身体に伝わってきて徐々に意識がハッキリしてくる…。
(ん…ここは何処?? えっ? 何これ!?)
目を覚まし動こうとした雪は鉄筋の柱に手錠で繋がれていたのだ。
雪は、全く状況が飲み込めず、青ざめた顔で周りを見渡しキョロキョロと視線を泳がせていた。
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