オトナキドリのカーテンコール

日剱命

カーテンコール

幕が上がり、一つ一つの音が殴り合い、

絡み合う。

ステージ上の緊迫感と、観客の織りなす音が

混ざり合い、一体化する瞬間は、心地よい居場所そのものだった。


決められた譜面通りに演奏をしつつも、

高揚し、麻痺した脳は新しいメロディを作り出す。

たった一度で、もう二度とその作品は作れないし、

その一度に全てを賭ける瞬間もまた麻薬のようでクセになる。


感情を爆発させる、とはよく言ったもので

本当に感極まって、心が強くなる時もあれば、

脆弱になってしまう瞬間もあり、

観客や仲間、自分自身の脳裏に刻まれたそのワンシーンはアンコールなど無くて、ただ唯一の“作品”と成り替わる。


声が枯れるまで歌い、力が無くなるまで演奏する。

ひたすら全力で、そのステージを走り抜ける。


風のように走る時もあれば、誰かの腕をそっと引くように歩く時もあり、それは聴き手に受け取り方は委ねてもいい。


曲は感情を赤裸々に映し出し、

時に別れを告げることもあれば、

恋人への贈り物になったり、

子どもを安心させたりと、

音符の並び方によって色んな情景や

込められた想いを投影し、

受け取る側に様々な印象を与え、

疑問を投げかける。


答えは1つではなくて、

別れを告げる暗い曲だと誰かが言っても、

別の誰かは幸せを見つけるための道のりだと表現したり、はたまた恋慕という感情故の別れだから哀しいだけではないと言うのかもしれない。

誰かに届けばいいと奏でるその音符の群れは

キャッチボールをする気など無くて、ただ

玉入れの玉のように、拾ってもらえたらいいなという

一方的な疑問の呈示なのかもしれないとボクは思う。




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