第31『剣奇洞窟』
ヤシャガネが封印されている、ラタラ鉱窟。その入り口――世界有数の優れた鉱物が取れるその門戸は、今や悍ましい怪物が跋扈する地獄と化していた。
「クソッ。ありゃ酷いな……見えるだけで100、お前らからもらった地図を参考にして、奥にもまだまだうじゃうじゃいるってことを考えたら2000ってところだが、お前らどれぐらいイケるよ」
「はっはっはっ。これでも戦力目算は得意でな。国の兵だけなら50、有志の旅人を合わせても表に居る100体を捌くだけで限界でござるよ」
「笑ってる場合かよ……俺達がだめなら、国中があんなのに溢れちまうんじゃなかったのか?」
「自分で何ともならないことは、何ともならないと開き直る気質なもので……まあ、頼みましたぞ、ステイン殿。貴方なら、2000は無理でも1000を捌くのは容易でしょうからな。まして名工、ムラマサ様の遺作を装備しているのです」
「1000は無理だよ。せいぜい、半日かけて700だ――俺とリペルの二人だけで速攻攻略……リペル」
「準備万端っす! いつでも行けるっすよ!」
俺が背後を見る。俺の背中にグルグル巻きで縛られているリペルが笑ってそこに居た。
今回の作戦の肝は時間だ。さっさと終わらせないと延々ヤシャガネの使い魔が湧いてきて押し負けてしまう。
機動力を確保するためにこのような不格好な形になってしまって、リペルに申し訳なく思っていた……こいつはいつも笑ってお互い様だと言ってくれるが……いつか絶対恩返しをしよう。
こんな血生臭い療養旅行ではなく、もっとちゃんとした。
「じゃあ、行くぞ!」
「はいっす!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
鉱山の中は、薄暗く不気味だ。リペルの魔術でか細いとはいえ灯りはあるし、俺の魔力探知と地図のおかげで今のところ直行できているはずだが――地の利は明確に、あちら側にある。
「キンキンキンキンキンキン」
「キンキンキンキンキンキン」
「キンキンキンキンキンキン」
「
三体、四体、五体、六体、次々に現れる剣の化物を俺の刀が裂く。
狭く暗い洞窟だというのに、全ての急所が、全ての間合いが、全ての呼吸が完全に見える。そしてその膨大な情報全てを喰らい、選んだ情報に、俺の身体が付いてきてくれている。
まるで、体中をきつく締め、重くしていた拘束具をすべて取り払ったような――そんな爽快感があった。
「すげえ……この剣、すげえ!」
「そ、そんなにすごいんすか!?」
「ああ、俺が全力を出しても悲鳴をあげない剣なんて、生まれて初めてだ!」
イテムゲースですらここまでではなかった。俺が全力を出して剣を振るった時、それは十秒後に剣を壊すことが前提だった。だがこの剣は違う。
「クソッ。こんな時、不謹慎だけどさ……俺、やっぱ剣好きだ! こんなに楽しい剣が、世界にあったのか!」
「……好きっすよ。私も」
「え、そうなのか?」
「はい、剣を振るっているステインさん、格好良いっすから」
「そうか、ありがとう――じゃ、もっと格好いいところ見せてやるよ」
多少ハイになっていた俺は、柄にもないことを言いながら、さらに洞窟の奥へと進んでいく
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