第10話
7層に着いた。この層自体が安全地帯になっており、魔物は沸かない。所詮数年の経験則だから実は沸いたりするのかもしれないけど。
結構な広さの広場になっていて、天井も高く圧迫感はない。
他の探索者らしきパーティが4組ほど散らばって休憩しているのが見える。途中で遭遇しなかったから皆2泊目かな?
丁度どこも晩飯の準備をしている。時間を見ると19時を少し過ぎたところか。
さて、俺もさっさと準備をして飯を食い、休むとしよう。
昼は携行食を齧っただけだし、休憩を挟んだとはいえそこそこ歩いたので腹が減っている。
まずはキャンプの設営だ。レンタルポーターの荷物から取り出したのは、普通の折り畳み式テント。
一人用の小さいやつだが、こういう場所で泊まるには十分だ。ペグを打ち込み、ポールを立ててサクッと組み立てる。
その中にエアクッションを敷く。レンタルポーターについている電動空気入れ(魔石が動力源だが、魔力を電気に変換して動かすので「電動」で間違いない)で膨らませる。
設置は非常に楽で助かる。空気入れのスイッチを入れ、ブーンという音と共にエアクッションが膨らんでいくのを見ながら、ブランケットも取り出して準備する。
設営が終わると、次は飯だ。魔動コンロ(こっちは魔力→熱の直接変換なので「魔動」)を取り出し、水を汲みに行ってセットする。
水は広場の隅には岩場から水が流れ落ちる小さな滝があって、そこで汲んできた。
この水はちゃんと検査されており、ほぼ水道水の基準を満たしているので飲料水として使えるのだ。「ほぼ」というのは塩素は含んでいないからだ。すぐ使う分にはむしろ嬉しい。
なお、滝の水は小さな水たまりを作った後、地面を流れて壁の穴に流れて行っている。
この穴も調査はされているが結果は「不明」。300メートルのファイバースコープを使っても延々と水路が続いていただけらしい。
それより飯だ。今夜のメニューはフリーズドライの野菜たっぷりリゾットと、真空パックのサラダチキンを2つ。それにパックのオレンジジュース。
これである程度のバランスは取れるはずだ。
リゾットにお湯を注ぎ、軽くかき混ぜて蓋をする。数分待てばできる手軽さがいい。その間にサラダチキンを貪る。鶏むね肉だがしっとりしていて美味い。
リゾットができあがる頃には、チキンは食べ終わっていた。熱々のリゾットをフーフーしながら胃に収める。
あー、疲れた体に染みる。食後のオレンジジュースで口の中をさっぱりさせる。ふぅ、満足満足。
食事の後片付けを終え、就寝準備に取り掛かる。
体を綺麗にするのは濡れタオル…ではなく「擬似クリーン魔法」だ。
「擬似」というのは魔法できれいにする定番のやつじゃなくて、全身の表面に付着した汚れや埃を、ダンジョンに収納するという技だからだ。
…これも魔法といえば魔法か?
「よし、慎重に…」
対象指定は本当に気を遣う。
以前、うっかり「体の表面全部のいらないものを収納する」みたいなざっくりした指定をしてしまったら、全身脱毛になってしまったことがあるのだ。あれは焦った。…まぁ因幡の白兎みたいにならなかっただけマシか…
今は慣れて、衣類など触れているものについた汚れも吸い取れるようになっているが、衣類は「自分の脱いだ服をクンカクンカしてる」みたいなイメージがあって、なんか嫌なのでやっていない。
別に臭いを感じるわけではないのだが、イメージとして抵抗があるのだ。なので、汗を吸った下着だけは普通に着替える。
着替えを終え、テントの中に潜り込む前に防犯対策だ。ドローンを警戒モードに設定し、テントの上に乗せておく。これで何か異常があれば通知が来るはずだ。これで全ての準備が整った。よし
「寝るぞ!」
完
いや、ごめん言ってみたかっただけだ。あの作品、完全版みてないから俺の中ではまだコレで止まったままなんだよなぁ…
年齢的になんで完全版から入ってないのかって?自分で買ってなくて家にあったのが通常版だったんだよ。
そんな馬鹿なことを考えながらテントの中に横になり、エアクッションの適度な弾力に体を預ける。ブランケットを肩まで引き上げると、眠気が一気に押し寄せてきた。
明日は8層以降。ここから一気に敵が強くなってくるんだよな…
そんなことをぼんやり考えながら、俺の意識は闇へと沈んでいった。
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